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月見

Author:月見
マンガと小説と、天野月子さまとCoccoさまの楽曲を何より好む大学生。その日の気分に合わせた本を紹介してます。拍手、コメント、リンク大歓迎。飛びあがって喜びます。

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川上弘美 『古道具中野商店』
古道具中野商店 (新潮文庫 か 35-7)古道具中野商店 (新潮文庫 か 35-7)
(2008/02)
川上 弘美

商品詳細を見る


こうやって死ぬまでの一生、不安になったり茫然としたりして過ごしてゆくのかと思うと、今すぐ地面に寝そべってぐうぐう眠ってしまいたいくらい、気が重くなった。でもそれでもタケオが好きだった。好きをつきつめるとからっぽな世界に行ってしまうんだな。わたしはぼんやり思った。

今までのところ、私の中の「川上さんベスト作品!」はセンセイの鞄だったのです。
けども、こちらもすんごくよかった。骨董品じゃなくて古道具、なところが川上さんっぽい。
とにかくものすごく好きだな、こんな話。

東京の西の近郊のどこかの町にある古道具屋「中野商店」。
「だからさあ」を連発する中年店主の中野さん、その姉貴でゲージュツカ(どうやら人形作家さんのよう)のマサヨさん、無味(←解説より。すんげー良い表現なので引用)なバイト店員、タケオ。そして同じくバイト店員の「わたし」。

基本このメンバーが主要で、メインはたぶん無味で人間不信なタケオと「わたし」の冷戦じみた不穏を含めたたゆたうよーな気持ちのやりとりなんだけど、そのうち中野さんの「銀行」(←なぜかここでは「愛人」の意)サキ子さんがところどころ加わったり、よくわからないお客の田所とかマサヨさんの恋人丸山がちょこちょこ出てきて、ときどき一悶着あったりもする。

中身を出さないタケオとそんなタケオにいらつく「わたし」とか、中野さんとサキ子さんの不穏だとか、ときどきどきっとするよーな緊張を孕んだりしながらも、基本はけっこうだらだらした物語。
売る、買う(引き取る)、市に行く、食べる、ひとが来る。
ものすごく端折ってしまうと、この一文で説明できるくらいだらだらと単調。
でもこの単調ていうかだらだら感がくせになる。ずっと浸っていたいって心底思ってしまう。
夏場なんかにだらだらしながら読んだりするといいかもしれない。

あと、終わりのほうの展開っていうか構成っていうか。とにかく終わりのほうが好き。
あははわかったから、どーかどーか不滅でいてくれよって思う。

そーいえば解説でちらりと触れられてましたけど、川上さんの弟さんは骨董品屋さんだそうです。

ついでに「たゆたう」って言葉はたぶん川上さんの本のどれかを読んでて見知った言葉なんですが、これってそのまま川上さんの本の代名詞にだってなれるけっこー地味だけど素敵な言葉だと思う。

いろんなところで、私はどんどん川上さんの本を好きになってゆく気がする。

川上弘美 『古道具中野商店』 新潮文庫

川上弘美 | 09:20:21 | Trackback(0) | Comments(0)
川上弘美 『おめでとう』
おめでとう (文春文庫 か 21-5)おめでとう (文春文庫 か 21-5)
(2007/12/06)
川上 弘美

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「朝に生まれた子供はしあわせになるっていう言い伝えを聞いたことがあるよ」竹雄は言った。
「竹雄は、朝に生まれたの」
「いや、夜遅く、らしい」
「それなら夜の子供もしあわせになると思うよ」
「そうだといいね」
 (「夜の子供」より)

束の間の逢瀬だとか、「うらめしい」ととりついた気弱な幽霊だとか、どこまでもゆっくりと流れてゆく川だとか、桜の樹のうろに住んでる恋人とか、「西暦三千年一月一日のわたしたちへ」だとか。
川上さんの書く、「いつか別れる私たちのこの一瞬をいとおしむ短篇集」(裏表紙より)。

12篇収録。今回は、中でもとくに好きだなーと思った5編をご紹介。

いまだ覚めず・・・
十年ぶりに、「あたし」はタマオさんに会いに三島へ行く。
いつしか接吻することをためらうようになり、タマヨさんからもうあなたと二人で会わないと言われた。
タマヨさんの家の庭には、大小の鳩の入った大きな籠があった。

どうにもこうにも・・・
去年の七月から、気弱な幽霊、モモイさんに憑りつかれている「私」。
モモイさんは「いのうえ うらめしい」といいながら出てきて、ちょうど井上と縁があった私に憑りついたのだった。
あるときモモイさんの「幽霊的能力の行使」(=強要)により、私とモモイさんは井上に(けっこーささやかな)復讐をすることになったのだけれど・・・。

ぽたん・・・
日曜日ごとに飼っているメンドリを公園に散歩させにくるミカミさんを、日曜日の夕刻、約束したわけでもないわたしは待っている。
週に一度、雨天中止。そういう逢瀬、ともいえなくもなく。

・・・
一郎がわたしの部屋に行くことなんてほとんどない。
くさむらで食料を広げていると、「酒忘れた、しまったなあ」といいながらさっさと一郎はコンビニに行ってしまう。わたしを残して。鴫が何羽か、浅瀬を歩いている。

ばか・・・
男が「このおまま死んでしまいたい」と、せつなげに言う。何故なのかはわからない。
藍生は久しぶりに、線路の上を歩くことにした。

いつもどおり、ぼわぼわとして、つかみようのない物語たちが集まってる。

物語だけでなく、登場する人間やそれ以外だってぼわぼわしててつかめない。
庭で籠に入った大小の鳩を好きでもないのに飼っているタマヨさんとか、わざわざ化けて出てきて「復讐する」と言いながらも、ちまちました嫌がらせしか思いつけない幽霊のモモイさんとか。
(そんな中で「天上大風」の「私」はとっても論理的で、あまつさえその論理的思考を実際に実生活に完璧に敷衍できている。けれどもやっぱりつかめない)

ぼわぼわぼわぼわしたまま、読み終えてみると不思議なまでにぼわぼわした、なんともいえないようないとおしみがあふれ出してくるような気がする。

なんか「ぼわぼわ」言ってるだけでちっともまともな感想にならない。
書こうとしても、この感覚を私の知ってる少ない言葉でどうあらわせばいいのか、見当もつかない。
とっても「ぼわぼわ」してて、私はこの本とっても好きなのだけれど。

どなたか上手い感想文があれば、教えてください。(白旗)

ちなみに12番目、最後の物語「おめでとう」は、とてもせつなく、物悲しくなる話。

(ところで文春文庫版の解説は栗田有起さんでした。なんて豪華。)

川上弘美 『おめでとう』 文春文庫 新潮文庫

川上弘美 | 10:44:41 | Trackback(0) | Comments(0)
川上弘美 『センセイの鞄』
センセイの鞄 (文春文庫)センセイの鞄 (文春文庫)
(2004/09/03)
川上 弘美

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正式には松本春綱先生であるが、センセイ、とわたしは呼ぶ。
「先生」でも「せんせい」でもなく、カタカナで「センセイ」だ。


ツキコさんはある日居酒屋で高校の恩師である「センセイ」と再会し、以来おたがいに憎まれ口をたたき合いながらも酒を飲み、肴をつつく日々。
ときにはセンセイとふたりで汽車土瓶でお茶を飲んだり、市へ行ってお弁当を食べたり、ときにケンカしたり、キノコ狩や花見に参加したり、島に出かけたりもする。
そんなセンセイとツキコさんの、たがいに切ない思いを抱きながらも、ゆったりと流れる日々。

何度読み返したか、ふと思いついたときにたぶん5、6回くらい読み返してる本。
川上弘美さんの本の中で、一番好きな本。

じつはツキコさんというひとが、ものすごく好きです。たとえば、

恋愛というものがそんなじゃらじゃらしたものなら、あまりしたくないとも思っていた。

ウンメイノゴトキコイ。自分にやがてウンメイノゴトキコイがおとずれる可能性は、万にひとつもないだろうと、スピーチを聞きながら、雛壇に座る恋人と友人を眺めながら思った。


とか。よーするに、勝手に感情移入してるだけなんですが。
(「恋愛しない」と「できない」はちがうんだよって、しごくまっとうなお声が聞こえてきそうですが)

あと、センセイとツキコさんの「切ない思いをおたがいにかかえながら」の、距離。
とにかくもどかしい。飄々としてるセンセイも、憎まれ口を叩くツキコさんも。
「もー何やってんだよ」っておせっかいを言いたくなるけど、そのすぐ後で「ま、いいか」って必ず思わせるような、不思議な距離。

それともうひとつ、時間。
30歳近い年の差を抱えるふたり。

「ツキコさん、ワタクシはいったいあと、どれくらい生きられるでしょう」

センセイの言葉が突き刺さるような気がするのは、けして気のせいではないです。

そして、物語の終焉。

結ばれたふたりと、終わってしまった時間の中で、「センセイの鞄」ばかりが、ただある。
こんなふうにはかなくて、いつまでもこころに染みるお話を、私は他に知らないです。
ツキコさんじゃないけど、「ウンメイノゴトキコイ」がおとずれとするなら、私の理想はこの物語です。

最後に、本編中で一番好きな文章を引用。

センセイとは、さほど頻繁に会わない。恋人ではないのだから、それが道理だ。合わないときも、センセイは遠くならない。センセイはいつだってセンセイだ。この夜のどこかに、必ずいる。

川上弘美 『センセイの鞄』 文春文庫 新潮文庫

川上弘美 | 10:53:27 | Trackback(0) | Comments(0)
川上弘美 『椰子・椰子』
椰子・椰子 (新潮文庫)椰子・椰子 (新潮文庫)
(2001/04)
山口 マオ、川上 弘美 他

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一月一日 曇
もぐらと一緒に写真をとる。もぐらの全身を見るのは初めてである。あんがい大きい。写真をとるために直立してもらう。小学校六年生くらいの背丈で、顔もどことなく人間じみている。


妊娠中のもぐらと写真を撮ったり、雨乞いをしたり、近所の縄文人街を散歩したり、子どもをたたんで押入れにしまったり、冬眠用品を買いにいったり。
ヘンテコな日常を送るとある女性の日記。春夏秋冬。

川上弘美さんらしい、なんともいえずとぼけまくった内容がぎっしり満載な本。
冷静に考えればありとあらゆるところにつっこみどころ満載なのだけど、そのうち気づかなくなる。
気づかないうちに、椰子・椰子の世界に完全にとりこまれてしまってる。
好きな人は、ぜったいにはまります。そして抜け出せなくなります。おかしくて不気味で、やっぱり可笑しい椰子・椰子ワンダーランドから。

「中くらいの災難」にみまわれて、両耳と舌と両足親指と乳房が二倍になる話も好きだけど、1番はまってしまったのは、二月七日の「たくわん売り」の話。(「よくお顔におうつりですよ」と上手におだてられて、はなだ色と藍色のたくわんを買ってしまう話)

川上さんの日常ってほんとにこんな感じじゃないんですか、って聞いてみたくなりました。

かと思ったらさすがにそんなことはなくて、半分は夢日記なんだとか。(←巻末。山口マオさんとの対談より)

あー夢日記。なるほどね。
って、それでも十分すごすぎるんですけど・・・。

川上弘美 『椰子・椰子』 新潮文庫

川上弘美 | 15:23:33 | Trackback(0) | Comments(0)
川上弘美 『ゆっくりさよならをとなえる』
ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)
(2004/11)
川上 弘美

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友人に『いいネックレスじゃん、それいくらしたん?』って聞かれて『んー、180円』と返したら『安ッ、安すぎだよあんた!!』と叫ばれました。

・・・安いのは、オレか?

というわけでこんにちは、月見です。

最近なんかちょっとずつあったかくなってきて、なんか月見のまわりのみなさまは活動的なのですが。

月見は基本のんびり屋、というかぐうたら屋なので、なんつーか『あれもこれもやりたい!』って空気はものすごく苦手です。(けして嫌いではないですけど)

そ−いえばこの前バイトしてて、店長と東京の話をしてたら、『お前には東京は合わんだろうな、絶対』って言われました。
そのとおりです、さすがは店長。
ま、そんなこたーどーでもいいんですが。

今回は、オレは天気いい日は日向でごろごろしながら本読みたいのよー、って気持ちのわかるのんびり屋なひとに特にオススメの本をご紹介。

川上弘美 『ゆっくりさよならをとなえる』 新潮文庫

のんびりゆるやか系のエッセイです。

書かれてるのはどこにでもあるようなちまちましたことばかり。

けど川上さんの目を通してみると、なんでこんなに退屈しないのかなーと不思議です。
なんか読んでると、そのままふらーっと散歩にでも行きたくなります。
いろんな小さなものたちを探しにいくんです、みたいな。

きっと川上さんは、なんでもない小さなことのひとつひとつをとってもあいしてるんだなって思います。
それが文章からふわふわぼんやり伝わってきて、なんかすんごく幸せな気持ちになる。
そういうのって、とても憧れます。

あとね、食べ物についての文章がすんげー好き。
しょうがパンとか、そらまめとか。なんか食べたくなってきます。

後半では川上さんの読んだ本の紹介もされていて、ものすごく満ち足りた感じがします。
(町田庚さんの『耳そぎ饅頭』(←大好きな本!)も紹介されてました。ちょっと意外?)

川上さんファンなら必読。川上さんを知らないひとでも、オススメ。

月見のよなのんびり屋兼ぐうたら屋さんにも、もちろんオススメです。

あー外はいい天気です。
月見はこれから犬と散歩に行ってきますよう。

枯れ葉を踏む音って、なにげにすんごく癒される気がするのは月見だけでしょうか?

終わり。

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川上弘美 | 11:34:09 | Trackback(0) | Comments(0)