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加納朋子 『魔法飛行』

魔法飛行 (創元推理文庫)魔法飛行 (創元推理文庫)
(2000/02)
加納 朋子

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私の最初の作品は、幾つも名前を持っている女の子の物語です。(どうです、ちょっと興味を惹かれるでしょう?)

前作、『ななつのこ』の続編。
短大1年生の入江駒子が書き付けた、日常の不思議な出来事。
いくつも名前を持った女の子、交差点の幽霊、双子のテレパシー。
それを手紙でなく小説に書いて送ると、おなじみ瀬尾さんからの感想文と、
駒子の感じた「?」に対する答えが返ってきて・・・!

という物語の構成はそのまま。
けれど今回は、瀬尾さんの感想文に続き、何者からかの奇妙な手紙が挿入されている。
駒子の書く物語を知っていて、日常を失い、逃走の日々に追われている、謎の人物。
途中から徐々に浮かび上がり、明らかになる事実たちが、だんだんと不穏な空気をかもし出してくる。

日常の不思議を描いたミステリーの前作と、
日常のどこかに潜む、非日常のミステリー。
ぽかぽかとした日常と、非日常の薄気味悪さもかね揃えた、今回は前よりさらに先が気になる物語。

そして前作、ななつのこの主人公、駒子のこころ根は、だんだんと変わり始めてくる。
甘くゆるやかすぎるくらいの日常の中でそれでもどこかで不安と不穏にたたずんで、
それでも4つの(そして、それが実は1つの)物語を越えて、駒子のこころはゆるやかに変化する。

「人間はもともと、自分たちで考えているよりは、ずっと強いものさ。風邪くらいはひくかもしれないけどね」
そしてときに信じられないほど、弱くもなる。それが人間だ、という気がした。


どうしようもなく弱くなる瞬間。
物語の終盤で、駒子と瀬尾さんは、ある一つの命を救うために奔走する。
間に合うか間に合わないかの瀬戸際。
走りきった駒子が、その先に見つけたもの。

先に限らず、見えないものはなんだって不安になる。
やや甘い味の結末だけれど、こんな物語もあっていい。

というか、「魔法」を完全に否定する人間に、
未来なんかがあるような気がしない。
空を見上げない人間もまた、然り。

それにしても続編「スペース」が文庫になるのは、いったいいつのことなのやら。
かなり楽しみに待っているのだけれど。

加納朋子 『魔法飛行』 創元推理文庫
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加納朋子 『ささら さや』

ささらさや (幻冬舎文庫)ささらさや (幻冬舎文庫)
(2004/04)
加納 朋子

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「馬鹿っサヤ。おまえがそんなに馬鹿だから・・・・・・そんなに弱くて頼りなくて馬鹿だから、俺は成仏できないんだぞ」

突然の事故で夫を失ったサヤ。残されたのは、まだ首もすわらない赤ん坊のユウスケだけ。
ユウスケを養子にしてくれと迫る夫の親族から逃れ、サヤは名も知らない田舎町、「佐々良」へと移り住むことに。
けれど移り住んだ町、佐々良では不思議な事件が次々と起こる。
消えてしまったおあばさん、一泊した旅館での怪現象、宅配便で送られてきたのに、なぜか空っぽの箱、姿の見えない子ども、何かを待っている老年の女性。
困り果てるサヤを助けにきてくれたのは、つかのま他人の姿を借りて戻ってきた夫だった。
姿亡き夫や、佐々良の町で出会ったひとたちと過ごす時間で、少しずつサヤは立ち直ってゆく。
けれどある夜、高熱を出したユウスケが誘拐されてしまい・・・・・・。

もう何度も読んでるんだけど、読むたんびにぼろぼろとみっともないくらい泣けてしまう物語。
お涙頂戴の物語に見えるんだけど、素朴で極上で、素敵な気持ちのいっぱいつまった物語。

だれかをこころの底から愛して、ときに守りたいと強く想うこと。 

もし必要なら、敵を引き裂く爪を持て。その喉笛に食らいつく、牙を持て。

甘ったれな弱虫だと、自分でも自覚してたサヤがいつのまにかこんなに強くなっていた。
それを見届けた旦那さんの気持ち。
べタかもしんない。でも思い出すだけで泣けてくる。
この本につまってるのは、いつでもどこでもだれかを愛する気持ち。
あったかいんだ。なんでこんなにあったかいんだろ?

宝物。これはホントに、宝物の本。

加納朋子 『ささら さや』 幻冬舎文庫
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加納朋子 『ななつのこ』

ななつのこ (創元推理文庫)ななつのこ (創元推理文庫)
(1999/08)
加納 朋子

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いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?
いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになったのでしょうか?
いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。


短大生の入江駒子は偶然本屋で見つけた絵本、『ななつのこ』に一目惚れし、読後、著者の佐伯綾乃さんにファンレターを書こうと思いつく。
初めて書いたファンレター。駒子がそこに記したのは絵本についてのこころからの感想文と、最近駒子が体験した、なんてことないけれどちょっと不思議な出来事、『スイカジュース事件』。
そのときはまさか、返事がくるなんて思いもしなかった。けれど少し遅れてやってきた返事には、なんと綾乃さんが推理した、『スイカジュース事件の真相』までが記されていて―――!

それ以来、主人公駒子と、謎の絵本作家、佐伯綾乃さんとの手紙のやり取りが始まる。
駒子は身の回りで起こった「なんてこともない、けれどどうしても不思議な出来事」を手紙に記し、綾乃さんからの返信(推理編)で、小さな謎の真相に気づく!というもの。

ほんとーに、なんてことない。「事件」というより、単なる「出来事」としかいえないような、見落としてしまいそうな小さな謎。
冒頭の「スイカジュース事件」に始まり、どこかおかしな展覧会、気づけばアルバムからなくなっていた1枚の写真、花壇の裏側で歩きまわる上品な老婦人、etc・・・。
どれもこれも、何も駒子みたく物語の主人公じゃない私たちでも、その辺を歩いてれば遭遇しそうな小さな出来事ばかり。
だっていうのに、そんな小さな出来事のひとつひとつに、じつは思いもしない理由があって、綾乃さんからの返信で駒子といっしょになってびっくり仰天、あー謎解きって何もミステリー小説や血だらけの殺人現場だけじゃなくて、こんななんでもない日常にもたくさん転がってるんだなって、うれしくなります。(もちろん、「ななつのこ」もれっきとしたミステリー小説なのですが)

ところで「ななつのこ」はその名のとおり、全7話収録の短編集なのですが、1番好きな話は6話目の「白いタンポポ」。

心配する大人の気持ちも、まるっきりわからなくもないけれど。
それでも私も駒子と同じく、自分の定規でしか測らない彼らには、けして共感はできません。

「本当に、明日咲く花の色は、きっと誰にもわからない」。

私はこの言葉に会いたくて、「ななつのこ」を何度も読み返しているような気すらします。

そして何より、主人公の駒子の存在。佐伯綾乃さんは、返信の中でこんなことを言っています。

あなたは白いタンポポの花に似ていますね。ありふれているようで、本当は滅多に出会うことが出来ない、つまらない既成概念や価値観や常識をその存在だけで控えめに、けれどあっさりと否定してしまう。白い花の傷つきやすさと、そして何よりたんぽぽの逞しさとを持っている・・・・・・。

本当にそう。そして駒子の存在は、そのまま著者の加納朋子さんのまなざしを伝えてくれます。
ありふれた日常に転がる小さな謎、そして何より、なんてことない日常のいとおしさ。

出会いたければ、頁をめくればいいだけ。
だから私は、この先も何度もこの本を読み返すんだろうなって思います。

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加納朋子 『てるてるあした』

てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)てるてるあした (幻冬舎文庫 か 11-2)
(2008/02)
加納 朋子

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「てるてるあした」を読み終わりました。
単行本2回読んで、さらに文庫版読破なのでこれで3度目。
今日はいつもみたく長たらしい前置きなしに、早速感想を書き始めます。

それまで、私には特別なことなんて絶対に起こらないと思ってた。特別なことは、特別な人だけに起こるんだと思ってた。だけどやっぱり、それは起こったのだ(本文より)

主人公は雨宮照代、15歳。
裕福で、けれど浪費家で、自分のこと以外は常に二の次な両親を嫌いつつも、志望の高校に合格して満足感に浸りきっていた。
けれどその矢先、両親の浪費癖が災いし雨宮家は一転、多重債務状態に陥ってしまう。
もちろん、照代の高校進学なんてできない。
愕然とする照代をよそに両親は早々に夜逃げ決行を決めたけど、照代は両親とは別に遠い親戚の家に預けるという。
けっきょく照代はひとり、佐々良(ささら)という、およそ聞いた事もない田舎町の、会ったこともない鈴木さんというひとに会い、居候を頼むことに。

けれどこの鈴木久代っていう元教師のおばあちゃんがまた、「閻魔」だの「魔女」だの言われるくらいすんげー厳しいひとで。
わがままでひねくれ娘の照代とはいつも衝突してばかり。
それどころか、佐々良で出会ったひとたちともなかなか打ち解けることもできない。
そんな中、照代のもとに差出人不明のメールが届き始める。

てるてる あした。きょうはないても あしたはわらう。

不思議な思いを抱えながらも毎日ふくれていじけて、それでも時々は少し笑ってと忙しい照代のもとに、今度はなんと小さな女の子の幽霊までもが姿を見せて・・・!

はたしてメールの送り主はだれ?
照代の前にだけ姿を現す、女の子の幽霊の正体は?

長くなりましたが、こんなお話です。

メールの送り主。女の子の幽霊の正体。

もう何度も読み返して、あらすじはもちろんすべて知っているのですが。

照代がすべてを知ったとき。

照代を守る温かい真実と、過去に起きた、ひとつの凄惨な事実を知ったとき。

そしてもうひとつ、鬼のようにこわい、久代さんの本当の気持ちを知ったとき。

物語の中の照代と同じように、驚き、愕然として、泣きました。

「人が他人を助けることなんてできると思うなよ」っていうのは、ある人が月見にしてくれた話。

どんなに時間が経っても、けして癒えることのない傷。

ひとの温かさは、陰惨な過去を変えることなんてもちろんできないし、もしかしたらひとを助けてあげることもできないのかもしれません。

それでも。

それでも、だれかがいないと、生きてゆけなかったと思います。

第1話の「春の嵐」から、最終話の「実りと終わりの季節」まで。

その間で、照代をはじめ、いろんなひとの膨大な想いや過去、今、そして未来がつづられている。

マンガにしろ小説にしろ、本ってほんとにすごい。

加納朋子さん。

こんな素敵な物語を書いてくださって、本当にありがとうございます。
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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