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風野潮 『森へようこそ』

森へようこそ (ピュアフル文庫)森へようこそ (ピュアフル文庫)
(2006/11)
風野 潮

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黙って聞いてるうちに、開いた口がふさがらなくなってきた。
うそ、植物に話しかけろってマジで言ってんの、この子?


何の相談もなしに半ば突然海外勤務を選んだ母と別れ、両親の離婚後、一度もあっていなかった樹木医の父と、双子の弟・瑞穂と暮らすことになった美森。
大阪郊外の「紅葉谷」と呼ばれる森の洋館での暮らしに都会育ちの美森はなじめず、おまけに色白でひ弱という自分と正反対、まるで女の子のような弟、瑞穂がどうにも気に入らない。
おまけに瑞穂は、「植物の声が聞こえる」という不思議な少年で、学校での「いじめ」を機に不登校になり、今は家で数多くの植物の声を聴き、弱った植物の世話をしている。
そんな瑞穂に美森は「バッカじゃないの」くってかかるものの、植物をまっすぐに愛し、植物の痛みをときに自らも味わうなど、植物と否応なく全身で生きる宿命をもった瑞穂の姿をそばでみるうちに・・・・・・。

涼やかな表紙に魅かれてブックオフで買い。
草木のみどりをじっと眺めてるとなんとなく目がすっきりするんですが、まさにそんな爽やかなすっきりさをもたらしてくれた、児童文学!ピュアフル!いいなあとあらためて思いました。
さて本編。

「植物の声が聞こえる」
そんな弟や、樹木医という父親、自分の意見も聞かず自分を置いて海外へ飛んだ母。そんなすべてを同一に並べ、どうしても頑なになる美森。
けれどその美森、転校先の学校で登校初日、瑞穂を「めちゃくちゃいじめて泣かした」こわもて男子・葉山を思わず一発KOしてしまったり、どんなに気に入らなくても弟を想う気持ちを持った女の子。
しかもその葉山も、ただ瑞穂をおもしろがっていじめたわけでもない。

「小川が悪いんとちゃう、おれが悪かったんや。おれが芦原のこといじめたって言うたから、こいつ、カッとしてつい手ぇ出してしもたんや。女にブッ飛ばされたのは悔しいけど、殴られても仕方ないと思う。おれかて、妹をいじめた奴が目の前におったら、速攻ブッ飛ばすと思うから」

これがきっかけとなりちょっとした友情?(というより戦友意識)が生まれる美森と葉山。
いっぽうの瑞穂も、学校には行けないものの、家で毎日たくさんの植物を、父親にも劣らない植物への真摯な思いをもって治療し、学校の傷ついた植物に対する治療法も提案する仕事ぶり。

最近では、まるでひとりごと言ってひとり笑いしてるような瑞穂と木の会話にも、気持ち悪がらずにつきあえるようになった、瑞穂が木から聞いたとおりに手当てして、たちまち具合が良くなるところを何度も見たからだろう。

よかったじゃんか、とこちらが思うも束の間。
けれどその一方、瑞穂の力には、それがために瑞穂本人を苦しめる性質ももつ。
美森も読み手もその苦しさ、瑞穂が抱えるもうひとつの苦しさを、まだ知らなかった。

そんな中、ある事件が起き、瑞穂は「声を聴く」力のために、苦しみまわることに。さらに、その事件を機に葉山の学校での立場が暗転し、学校にいる美森には、瑞穂をほんとうに追い込んだ「みんな」、そして物事を丸く収めることばかりに心を砕く「やさしい先生」の姿が見えてくる。

「あんたって、ほんとサイテー!」

激怒する美森。その一方で。

「でも、今サイテーなんやったら、これ以上サイテーになられへんから、ええんちゃうかなぁ」

と瑞穂。自分を守ってくれる姉、認めてくれる友達、そして将来父のような樹木医になるために、乗り越えた試練。ひ弱におどおどしていた瑞穂が、いつのまにか「どんだけポジティブ押し付けのこんこんちきでも言わないぞ!?」とつっこみたくなるような、おとぼけフォロー(でもおどおどした瑞穂にはけしてできないおとぼけフォロー)ができるようになってたり。

ラストは、すべて円満というわけでもなく、でもそこかしこで成長した、あるいは成長途中の、そしてけっきょく何も変わらないままの子どもたち、大人たち、そして美森、瑞穂を、森が丸ごとつつむような、深くやさしい余韻を残して終わる一冊。

すべての木を助けてやれることもできないし、すべてのひとが良くも悪くもならないけれど、
美森、瑞穂でいえば森の中、自分を見守ってくれるなにかの存在を感じながらなら、
そんななかでも少しくらい歩けることもあるよねきっとと、そんな想いで本を閉じました。

風野潮 『森へようこそ』 ピュアフル文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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