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金原ひとみ 『星へ落ちる』

星へ落ちる星へ落ちる
(2007/12)
金原 ひとみ

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いつか、私は彼に墜落した。
そして今も炎上している。
 (「星へ落ちる」より)

初めてかもしれない。買って読んで、すぐ読み返したのは。
生々しくむき出しの感情が絶えずあふれ出す、連作短編集。

本編を通して語られる、想われる「彼」。
多くは直接的に、あるいは間接的に、「彼」に関わる3人の人間の、それぞれの絶望の過程。

彼を捨て、新しい彼の恋人の存在に怯える私。(「星へ落ちる」)
彼が女と浮気しているのを非難すらできず、追い詰められ発狂していく僕。(「僕のスープ」)
彼と同じ場所で暮らすはずなのに、ふたりの未来が見えない私。(「サンドストーム」)
彼女が突然蒸発し、それだけしかつながらないケータイでのやりとりに固着する俺。(「左の夢」)
彼との暮らしが始まったのに、淡い日常の中、絶望を深めてゆくばかりの私。(「虫」)

想いの成就のためにひたすらに想い苦しみ、もがいて手に入れてきた場所。
途中で捨ててきた、愛していた誰かへの罪悪すら埋没していくような、今このときの幸福。
「彼」といたいという想いだけで、それぞれの中で培われてきたそれは、
けれどいともたやすく絶望へと姿を変える。
それは「彼」と関わるがゆえの、真綿のように穏やかな、
けれどじわじわとした、底なしの絶望。

彼と暮らし始めた途端、私は彼から遠く離れてしまったような気持ちになった。 (「虫」より)

本編最終章。読み終わってその題の意味に気づき(というか思いつき)、あげく最も冷たい思いをした、「虫」より引用。
ありきたりのこの感覚の中身とその行く末は、ここなんかで知ってしまうよりも、
読んでその身に体験するべき。(ここで書いてしまえないのがじれったくてしかたないけど)

それにしても本編中、唯一一度も一人称で登場しなかった「彼」が、
おそらくは知的でスマートで性格だって悪くないであろう「彼」が、
読み終わるころにはもう薄気味悪くてしかなかった。

そしてそれと同じくらい、そんな無意識の「彼」に翻弄されながらも、
関係を断ち切れず、それどころか自ら進んで埋もれていくような「私」や「僕」も、
もうもどかしくてしかたなかった。

けれどそう感じると同時に、落ちていくことには誰にも抵抗できないよな、とも実感する。

愛し合いなのか依存なのか、もしやその入り口にすら立てていないのか(なんて不気味な想像だろう・・・)。
どれとも知れない「彼」とのかかわりの中で、たしかな絶望だけに落ちていく姿のその先を、
これ以上書かれてもいないその先を、そうとわかってても、ずっと思わずにはいられなかった。

金原ひとみ 『星へ落ちる』 集英社(単行本)
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金原ひとみ 『AMEBIC』

AMEBIC (集英社文庫 か 44-3) (集英社文庫 か 44-3)AMEBIC (集英社文庫 か 44-3) (集英社文庫 か 44-3)
(2008/01/18)
金原 ひとみ

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一体どうしたらいい。一体どうしたら。何をしたらいい何をすればいい。ああ私は何を求めているのか。何を。何を。

『蛇にピアス』以来、久しぶりの金原ひとみさん作品。

おそらく摂食障害である女性作家の「わたし」。
錯乱したときにパソコンに書き残されている文章=錯文。
関係を持った編集者と、その婚約者。
現実と錯文が、やがて歪んで見えなくなる。

後で眺める錯文には大量の叫びが埋もれていて、「わたし」ですらも解析不可能。
けれどどこかで、「わたし」と錯文はシンクロしているのかもしれない。

「錯文」、「分裂」、「アミ-ビック」・・・。

こんちくしょう誰か助けてくれればいいのに誰かが私を多すれに来てくれるばいいのに誰かが。(「錯文」より抜粋)

「孤独と分裂の果てに待つもの」。

わかるようでわからない。わからないようでいて、わかりうる。
それともいっそ、わかりたいと思ってるの?

読後、だれ知らずそんな問いかけが浮かんできました。

自分でもどう感じたかはっきりとはわからないけれど、この本はけして嫌いではないです。

※AMEBIC[Acrobatic Me-ism Eating away the Brain、it causes Imagination Catastrophe.]「曲芸的自己中心主義が脳を浸食する事による想像力の崩壊」。(出版社 / 著者からの内容紹介より)

金原ひとみ 『AMEBIC』 集英社文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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