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Author:月見
マンガと小説と、天野月子さまとCoccoさまの楽曲を何より好む大学生。その日の気分に合わせた本を紹介してます。拍手、コメント、リンク大歓迎。飛びあがって喜びます。

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森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』
アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
(2005/06/25)
森 絵都

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「やさしい本」だなーと、読み終えるたんび、思う本。
森絵都さん作品の初読本は「永遠の出口」で、次にこの本を読んで完全に森さん作品のファンになりました。

シューマン、バッハ、サティ。素敵なピアノ曲にあわせて贈る、3話収録の短編集。

子供は眠る  ロベルト・シューマン〈子供の情景〉より ・・・
「ぼく」こと恭、智明、ナス、じゃがまる、章くん、いとこ同士の少年5人の夏が始まった。
そんな中ぼく、智明、ナスの3人はある思いを胸に秘めていた。宿泊するのは章くんの別荘 → 章くんの機嫌を損ねたら、もう別荘には来られない。「我慢」を誓う3人だったが、章くんの度重なる横暴な態度、そして何より、毎夜半ば強制的に参加させられる、クラシック鑑賞・・・。しだいに章くんへの反感が高まる中、ついに事件は起こった。

読み出してすぐ、こりゃたまんねーよ!って恭たちに同情。
章くんの機嫌を損ねないため(来年も別荘に来るため)に少年3人の、いじらしいほどの気苦労の数々。
それに加えて、遊び疲れではてしなく眠たいのに、毎夜強制的に聞かされるクラシック音楽(しかも毎晩同じ曲!)。
当然いつもみんな途中で眠ってしまうのだけど、そうすると章くんの機嫌を損ねることになる。
なんてストレスフルな夏休み!私ならそれきり別荘なんて行きません(>_<)

けれど読了後、章くんがなぜクラシックを聞かせたがるのか、という根源的な理由がわかったとき。
あいかわらず横暴な章くんですが、ちょっといいやつじゃんこいつ、なんてなことを思いました。

彼女のアリア J.S.バッハ〈ゴルドベルグ変奏曲〉より ・・・
不眠症の「ぼく」が旧校舎の音楽室で出会ったのは、同じく不眠症だと言う謎の女の子、藤谷。
週に一度、木曜日、ぼくと藤谷、「不眠症同士でいろいろ話す」時間。
ぼくは藤谷の話す「まるで昼ドラや火曜サスのような、波乱万丈、てんやわんやの藤谷家」の様相に驚きながらも、同じ不眠症に苦しむ仲間を見つけたと喜び、毎週木曜日を楽しみにしていた。
けれどいつしかぼくの不眠症は治まり、やがて藤谷の重大な秘密も明らかになって―――。

こういってしまってはなんなのですが、表題作よりも大好きな話。
お互いに小さな秘密やウソを抱え込んで、それに気づいてお互いを責めて、それで仲たがいなんて悲しい結末にはならなくて、とっても素敵な恋物語になる。
「肯定することは否定することより難しい」。
ほんとにそうなのだけれど、こんな素敵な肯定の力が欲しいです。

アーモンド入りチョコレートのワルツ  エリック・サティ〈童話音楽の献立表〉より ・・・
「わたし」こと奈緒と君絵と絹子先生のピアノレッスンに突如乱入してきた謎のフランス人、「サティのおじさん」。(ちなみに、本名はステファン)
他の生徒や保護者には煙たがられながらも、やがて奈緒と君絵、絹子先生とサティのおじさんの、レッスン後の「ふしぎな大人たちとのワルツ・タイム」が始まる。

世界はあの広間のように、きれいにふわふわと揺らめいているべきなのに。
至るところからワルツが流れ、だれもが優雅にステップを踏んでいるべきなのに―――。


でもそんなふうにどんなに素晴らしい日々だって、ずっと続くわけじゃない。
次第に険悪になる絹子先生とサティのおじさん。中学生なのにサティのおじさんに結婚を申し込む君絵。なす術のない奈緒。
そんななか、一度は修復できたように見えた関係も、ある日再び崩れてしまう。
いなくなるサティおじさんと、刻々と近づいてくる発表会。
発表会で奈緒と君絵が選んだ曲は、「金の粉」と「アーモンド入りチョコレートのワルツ」だった―――。

とてもまっすぐな物語。読後、まずそんな印象を受けました。

それはたとえば、発表会での君絵のこんなセリフ。

「あたしはピアノは弾きません」
いつものようにどうどうと胸を張って言った。
「なぜならば、人間には向き不向きというものがあって、似合わないことをむりにやると、災いが起きるからです。だからあたしは、うたいます」


すげーなって、心底思いました。こんなまっすぐな、これは強さとでもいうのか。

そしてラストシーン。奈緒が思った、たったの一言が物語の終わりをまっすぐやさしく告げてくれます。

白状すると、私はバッハもシューマンも、それどころかワルツも全然知らないんです。
唯一聞き覚えがあるのが、「トムとジェリー」の中でトムがピアノを弾き、ジェリーがワルツを踊るという話の中で流れていた曲で、だから私がこの本を読みながら聞こえていたのは、テレビでトムの弾いていた名前も知らないピアノの音楽でした。

邪道だ!って気持ちになるかもしれませんが、それでも十分この物語たちは素敵でした。

たぶんバッハやシューマンやワルツや、トムとジェリーの音楽を知らないひとでも、ひとつひとつの物語がそのつどその人の中で1番心地よく聞ける音を引き出して、聞かせてくれると思います。

森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 角川文庫

森絵都 | 14:24:46 | Trackback(0) | Comments(0)