投稿日:2008-05-26 Mon
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「今から約一時間後の午後五時四十五分に、地震が起きます。三宅島で震度四、東京では震度一です。確認してください。もう一度言います。今から一時間後、五時四十五分です。ジシンがあります」 (一章より)
大学生の毛利圭介のもとへかかってきた電話。
風間と名乗る正体不明の男が電話口で地震を予言してみせ、自分は未来から来たという。
これではあまりにも馬鹿げた、荒唐無稽な話なのだけれど、風間の話はそれだけではない。
「リピート」
過去の自分に戻る。過去のある時点における自分自身の肉体の中への、意識のみの転移。
つまりそれは、未来の記憶を持ったまま、自分の人生をやりなおせる、時間旅行。
半信半疑のままに集まった、毛利を含む十人の男女は、けれどたしかに「リピート」した。
しかし転移した世界でひとり、またひとりと、次々と「リピーター」たちが不審な死を遂げていき・・・・・・。
あの「イニシエーション・ラブ」を超える驚きが待ち受ける、仰天の傑作。
とは書かれてるけれど、私的には「イニシエーション・ラブ」のほうが好きです。
だけどこっちもおもしろかった。全部で500項もある長めの話だけど、ほとんど一気読み。
「過去をやりなおせる」
戻れる過去はあらかじめ定められていて、戻れることにしても一時の限定的な期間しか与えられていないというのに、十人の男女はすすんでリピーターになることを選んだ。
そして待ち受けるのは、仲間たちの相次ぐ怪死。
もうひとつ、未来を知っているリピーター特有の、地獄のジレンマ。
なるべく今回と同じ生活をしなさい。極端な話、身近な人が事故に遭うことが事前にわかっていたとしても―――いや、それが身近な人であればこそ―――敢えてその人を助けない。見殺しにする。そういう選択肢もあるのだということを知っておいてもらいたい。 (六章より)
「カオス理論」という言葉がある。
どう見ても同じ状態からはじめても、完全に同じということはありえない。
予想もしないところからほんのわずかな誤差が生まれて、けれどその誤差があっというまに増幅していき、全体の破綻をきたすことになる。「カオス」とは、そういう<閉じた系>のことを指す。
未来を知るリピーターがどんな些細なことにでも、少しでも能力を発揮すれば、それはもう完全な繰り返しの環からの、完全な逸脱行為になる。そこから導かれる結末は、完全な未知で、これはリピーターでも予測はできない。
つまりリピーターの最大のメリットは、そのまま最大のデメリットでもあるということ。
そしてこの言葉が本当に意味をもつのは、むしろ終盤から。
カオスに潜んだ悪魔がその正体を現した瞬間から、この言葉は最大の「呪い」となってゆく。
そうと気づいたときには、もうとりかえしがつかないのだけれど。
それにしても。
「イニシエーション・ラブ」のときもそうだったけれど、乾さんの書く物語のラストには、毎回唖然とさせられる。
予想もできないというのがもちろん第一なのだけれど、そのあまりにもさりげない、そのくせあまりにもひどい、その結末に唖然とさせられる。
「リピート」にも、それはもちろん健在。
さりげなく地味で、けれど究極のラストシーン。
知りたければ、ぜひ一度読んでみてください。
乾くるみ 『リピート』 文春文庫
投稿日:2008-04-22 Tue
![]() | イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1) (2007/04) 乾 くるみ 商品詳細を見る |
望月がその晩、四人目として誰を呼ぶ予定だったのか知らないが、僕はそいつに一生分の感謝を捧げなければならないだろう。
そいつがドタキャンしてくれたおかげで、僕は彼女と出会えたのだから。
見ず知らずのだれかがドタキャンしてくれた合コンの席で、「僕」は彼女に出会った。
男の子みたいなショートカットに、いつもニコニコとしているような顔立ちは、ファニーフェイスとでも言うのか。美人ではないけれどとにかく愛嬌のある彼女、「成岡繭子」に、「僕」は初めて、一目惚れしてしまったのだ。
ところがおそろしく奥手の「僕」は、そんな彼女になかなか近づくことが出来ない。けれど待ち望んだ瞬間は、ある日唐突にやってきて・・・・・・。
ありふれた青春(恋愛)小説かと思えば、最後の2行でまったくちがう物語に変貌する、「必ず二回読みたくなる」極上のミステリー小説。
前後編にわかれているのだけれど、どちらも「僕」と「マユ」の恋物語。
知らないひと同士が知り合って好き合って、やがて幸せの絶頂を迎えたり、ときに不穏な気配をただよわせたり、決定的な出来事が起こったり。
それはたしかに「甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説」(裏表紙より)。
なんだけれど、ずっと読んでるとはっきり言って退屈だった。
本人たちにしてみれば大事なんだろーけれど、所詮は他人事。とりたてて見せ場となるような展開もなければ、特に何かを考えさせられる、というような場面もない。
恋人同士のふたりが、ときどき崩れそうになりながらも仲良く過ごすっていう、ありふれていて単調な物語が終盤まで延々と続く。(じっさいには終盤で、ふたりの間にある決定的な出来事が起こるのだけれど、それだって「型どおりの展開」の範囲内だと思う。)
ラスト2行ラスト2行って、今さら何を変貌させるっていうのさ?
あんまり単調なので、ついついそんな愚痴も言いたくなってくるけれど、それでも「普通の恋愛小説」とわりきって読んでしまえばそこそこおもしろいので、ちびちびと読み進める。
そんな中、ついに「ラストから2行」に到達。
一瞬、何がなんだかわかならかった。
混乱する頭でようやく気づいて、あまりの急展開(というか変貌)に「はあああ?!」とか何とか、夜中に叫んでしまった(気がする)。
あわてて始めからからパラパラ読み返してみれば、いたるところに(ときにはかなりあからさまなまでの)伏線が張り巡らされてたと気が付くんだけれど。
私は一度読み終わるまでぜんぜん気づかず、だから最後の2行でほとんどショック状態になっちまったというわけ。やばい、ちょっと悔しい・・・・・・。
でもわからなかったから、そのぶんよけいにこの物語を最後の最後に楽しめたと思う(負け惜しみかもしれないけど)。
絶対なんて言葉はないんだよ・・・・・・。
この言葉は本編中からの抜粋。
結末に直接関わるような言葉ではないのだけれど、でもあまりにも暗示的だと思って、読後読み返してちょっとぞっとした。
ただ、私は繭子のことをそんなに嫌いな女とは思えない。
本編中の繭子がすべて「僕」の視点から語られているせいなのかもしれないけれど、私が「僕」だったら、たぶんこの女を好きになったんだろうなと思う。
この本を「ミステリー小説」と読めるかはどうかは、ド素人の私にはてんでわからないけれど、これってかなりすごい小説だな、っていうのは読み終えたとき心底思った。
いろんなひとに読んでもらって、感想を聞いて回りたくなる本。
というわけで未読の方、ぜひご一読を。そしてついでに感想など聞かせてもらえれば、なんて思います。
乾くるみ 『イニシエーション・ラブ』 文春文庫
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