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片川優子 『ジョナさん』

ジョナさんジョナさん
(2005/10)
片川 優子

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「なんだっていいじゃん仮の名前なんだから。じゃあもうジョナさんにしたら?ジョナが名前。さんは敬称」
「ジョナ・・・・・・」
「ファミレス思い浮かべるからいけないのよ。かもめのジョナサン思い浮かべればかっこいいじゃん」

(「命名、ジョナさん(仮)」より)

来年に受験なるものを控えた高校二年の女子、チャコ。
一番の友人のトキコは、チャコよりも頭がいいのに早々に受験戦争からの離脱を宣言し、
なんだか支えを失ったような気持ちでそれを受け入れるチャコ。
そんな中、半年前に亡くなった(そして家ではもう禁忌とされている)おじいちゃんの愛犬ギバちゃんを
これまたおじいちゃんの好きだったゲートボールを見に連れていってやる日曜日。

「そんなにつまんないなら帰っちゃえばいいのに」

後ろからきれいな声がして、それがジョナさん(仮。おそらくは大学生。後にトキコが命名)との出会い。
ジョナさんを想う気持ちが元気をくれるけど、毎日の出来事はそれだけで元気でいられるほど
簡単なものではぜんぜんなくて・・・・・・。

やってきました2009年、記念すべき(?)読了本一冊目!
あの「佐藤さん」の片川さんの、今度は高校在学中の作品だとか。
にしても、あいかわらずなんて素敵な物語を書くひとなんだこのひと・・・・・・!

大学入試だとか、将来だとかいうものが、そろそろ目の前をちらつきだして焦る主人公・チャコ。
その友人、性格はひどいけれど正義感が強く、頭もよくて顔はかわいいトキコ。
でこぼこコンビっぽいふたりの女子の、進んでいく日常を書いた物語。

チャコの本当の初恋の物語、だけあって、チャコのジョナさんへの想いが
傍から見ててくすぐったいくらい身にしみて、それをクールにいなすトキコとのやり取りも
読んでてすっごくおかしかった。(けれどあまりに的を射てるトキコのせりふに、チャコでなくてもグサリとくることもあったりする。私の、少ない体験からしても)

もうひとつ。
一見軽やかな恋愛話に見えて、じつはそちこちに深刻で重たいテーマが据えてあるのは、
前作、「佐藤さん」と変わらず。
母子家庭のトキコの事情とか取り巻く周囲の反応とか、チャコの家の、禁忌となってるおじいちゃんのこととか、トキコが機嫌が悪くなってる理由とか、自分の前にあるものに向き合うこととか。
(「ジョナさん」と名前のつく初恋の物語ではあるけれど、読んでると視線はどうしてもこちらに行ってしまいがちになる。もちろん、そこにもジョナさんはかかわってくるのだけれど)

1章目の「命名、ジョナさん(仮)」から始まり、最後の6章「幸せになりなさい」までつづくこの物語は、
そんないろんな感情とか関係性とか出来事とか想いとかを、まるごと抱えて向き合ってる、
読んでるとそんな気が、すごくした。

あきらめることは簡単で、でもそんなきれいごとを言ってしまうのもけっこう意外と簡単で。
けれど実際そんなふうに思ってても、お互いに全編通してかかわりあって、そんで成長してくチャコ(と、もしかしたらトキコも)の姿はやっぱりとってもまぶしいやって思う。

「あんた、すごい不器用だから。いろんなことをひとつひとつ片付けるのにすごい時間がかかって、はたで見てるこっちが歯がゆくなるくらい一生懸命だから。そんなふうに世渡り下手な人間が幸せになったら、たぶん救われる人がたくさんいると思うから」

親友という言葉は本編中には出てきてないけど、このふたり、
たぶん一生友達でいられるんじゃないだろうか。
相変わらず憎まれ口をたたきあいながら、けれど相手の幸せを、強く願いながら。

何気に憎まれ口をたたくのが好きな私はこんな関係がものすごく好きなのだけど、
けっこうオブラートとかなんとかにくるんだり見ないふりしたりで
チャコじゃないけど見落としたものもけっこうあるかもしんない。

見えないつもりから正面からかかわることへ舵を切ったチャコもトキコも、
読後の私にとってすんごく素敵でまぶしくて、まるで自分の仲間のように思える大切な存在。

片川さんの次回作は、大学生になった片川さんが書く、大学生主人公の物語。
今日はバイトの残業が長引いて、おかげで本屋が閉まってて注文できなかったけど、
明日早速行って注文予定。今からものすごく、もう楽しみでたまらない。

片川優子 『ジョナさん』 講談社(単行本)
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片川優子 『佐藤さん』

佐藤さん (講談社文庫 か 101-1)佐藤さん (講談社文庫 か 101-1)
(2007/06)
片川 優子

商品詳細を見る


「単刀直入に言うわ、佐伯君」
学校近くのマックで佐藤さんは言った。
「はい・・・・・・」
なぜだか佐藤さんから逆らえないような空気を感じて僕は思わずうなずいた。
「私に憑いてるモノ、見えるんでしょう?」


幽霊が見えてしまう気弱な高校生の「僕」と、幽霊に憑かれてしまいやすい同級生の「佐藤さん」。
当分関りたくない、できれば近づきたくもない。
そう思っていた「僕」だったけれど、思いもかけず佐藤さんのほうから声をかけられ、けっきょく佐藤さんの「除霊」を手伝うことに。
やさしく大人しいと思っていた佐藤さんが以外にしっかりしていて勝気な女の子だったことや、その佐藤さんとの距離が急に縮まったことに戸惑う「僕」。
さらにさらに、佐藤さんに憑依しているおしゃべり幽霊の安土良助さん、それに「僕」の友人の仕切り屋志村も加わって、幽霊中心の不思議でドタバタな毎日が始まる。

買ってからもう何回も読み返してる、すんごくお気に入りの物語。

幽霊を中心にして始まった、「僕」と佐藤さんの不思議な関係。
けれど中学生時代に傷ついた過去を持つ「僕」は、佐藤さんに対してもどこかで距離を置こうとしてしまう。

『佐伯といっしょにいると楽なんだよ。なんでもしてくれるから』
笑いながら言われたセリフ。曖昧に笑った自分。あんな思いをするぐらいなら。
自分の気持ちを素直に口に出して笑うこの少女を、傷つけるくらい、かまわない。


そのたんび、自己嫌悪に陥ってしまう「僕」。
中途半端に気弱で、中途半端にやさしいこころの持ち主なんだと思う。
自分を守ることでだれかを傷つけてしまうことがあると気付いた「僕」は、少しずつでも強くなろうと決意する。

もうひとつ。この物語は一見強くてしっかり者の佐藤さんと、気弱で自信のない「僕」の恋物語でもあるのだけれど。

とにかく「僕」の気弱さ加減に、あきれるのを通り越して笑ってしまう。
せっかく佐藤さんが「私が好きなのは佐伯くんだよ」って告げられても「佐藤さんが好きなのは僕自身じゃなくて、幽霊が見える僕なのではないか」とか何とか
「おい佐伯ぃ!!しっかりせーよ!!」って後ろから張り倒したくなるようにくよくよひとりで悩みこむ。
そのたび、安土さんやら志村やらにせっつかれて、「僕」は少しづつ佐藤さんへの気持ちに気付いていく。
そしてそんな気弱な「僕」は、佐藤さんの思いもかけない過去を知ることになる。

佐藤さんの思いもかけない過去を知って戸惑う「僕」。
戸惑いながらも何とか佐藤さんの力になりたいと思う「僕」に、おしゃべり幽霊の安土さんは言う。

《自分だってできてないのに、人になんか言えんのか?》

幽霊が見えるだけの、気弱な高校生でしかなかった「僕」が、佐藤さんのためにとった行動。
それはけして、だれにでもできることじゃない。

だれかを好きになり、そのだれかにこころから笑っていてほしいと願うこと。
ありきたりで単純で、けれどこれ以上にない素直で素敵な想いの強さを、思い知らされる。

スタバの前で転んで笑って、その側には大切なひとたちがいる。
だとしたら、それって最高のシアワセだなって心底思う。

ちなみに、この物語を書いたとき著者の片川優子さんは中学三年生だったとか。
そんな片川さんの2作目は、17歳のときに書かれた17歳の主人公の物語。

文庫化希望。そっちも今からすんごく楽しみです。

片川優子 『佐藤さん』 講談社文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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