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松井雪子 『チル☆』

チル☆ (講談社文庫 ま 58-1)チル☆ (講談社文庫 ま 58-1)
(2008/03/14)
松井 雪子

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頭のてっぺんを何かがノックした。

「くねり」だ。
くねりを初めて見たときの記憶はない。いつのまにか私の側にいた。青白い顔お黒い尾だけを持っていて、得体が知れない。その名を知ったのがいつだったのか、いったいどうやって話をするようになったのかも思い出せない。
(「ハッピーバースデイ」より)

衝動買いして読んでみて、「失敗したかな」と思ったらけっこう気に入って、けっきょく一気読み。

だいたい11年間生きている少女「チル」と、皮肉屋でいじわるで、けれどチルにしか見えない不思議な生き物「くねり」の物語。
日常の中の小さな異界の中でチルが学ぶのは「生きること」「死ぬこと」、「失くすこと」「始めること」。

連作短編。4話収録。

ハッピーバースデイ・・・
今からだいたい11年前の、チルの始まりの話。
「だいたい11年」の意味はここでわかる。
たった8ページだけど、導入部分にしてしんみり余韻の残る話。

生きてく約束・・・
ママヨの母、ババに飼われてる病気の老犬「セミマル」。
そのセミマルが死ぬ予感がして、チルはセミマルをどんな病気でも寿命が延びるという「あさっての滝」まで連れていこうとするのだけれど・・・・・・。

私的には「チル☆」の中で一番好きな話。
願いが苦しみを与えてしまうことになるのなら、わがままな私はどうしてたんだろう。

ともだちの雲・・・
「チルちゃんへ。夏休みのプレゼントだよ」
ママヨの親しい男友達のニーニから送られてきたのは、シタの町のはずれの遊園地のチケットだった。
学校には3日しかいけず、友達のいないチルは仕方なくくねりと行くことに。
けれどいじわるなくねりはチルのチケットまでくわえて遊園地に飛んでいってしまう。
おまけにその遊園地には遊園地が嫌いな受付のお姉さんや、「生きている雲」をつかまえにきたという不思議少女マシュマロの、たったふたりしかいなくて・・・・・・。

マシュマロがチルに見せてくれたノート。
おとうさんから聞いた「生きている雲」についてのノート。
本編中にそのまままるごと収録されていて、まるで自分がマシュマロのノートをのぞきこんでるみたいな気がしてたのしくなる。

・・・・・・この話も一番好きかもしんない。(どっちだよ!)

虹のむこう・・・
くなりがいなくなって一週間。
戻ってきたくねりのそばには、生まれてくるはずだったチルの弟、6歳になったギンがいた。

ギンの姿はチルには見えて、けれどママヨには見えない。
かつて一度そのことでギンはとても傷ついて、チルの前からも姿を消してしまった。
けれどじっさいには、くねりが古井戸の底でギンを育てていたのだった。
今度こそギンを傷つけてはいけない。
そう誓ったチルに、ギンは言う。

「お姉さん、ぼく、もう十分遊んだよ。明日から学校に行きたい。学校mに通える年になったからこっちへ来たんだもの。ね、いいでしょう」

ギンは大事な弟だけれど、もう人間ではない。
学校に連れて行くのをむずかしいといったチルに、ギンは訊く。

「お姉さんまで、ぼくをなかったことにするの?」

迷った末にチルはギンを学校へ連れて行くのだけれど、そこで大変な事件が起きてしまう。
そしてチルは大切な弟ギンを、むこうの世界に帰すことを決意するのだけれど・・・。

終盤。
欠片も想像してなかった意外な事実がわかって、チルと同じくらいとまどってしまった。
けっきょく物語は収まってゆく。けっきょくひとつの魂が、物語といっしょに昇っていく。
そしてけっきょくくねりとも、ここでお別れになるのだけれど。

ふんわりやさしい童話のような物語かと思えば、ひとつひとつの物語が中にいつだって抱えているのは「生きること」「死ぬこと」、「失くすこと」、そして「始まること」。
物語が終わって遠くへ走ってゆくチルは、けれどその瞬間に始まっていく。
やさしいだけじゃなくむしろ厳しいくらいけれど、なんとも素敵な物語。

ちなみに表紙の絵は、『不思議な森にチルが迷い込んでいる絵』なんだって。

松井雪子 『チル☆』 講談社文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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