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松尾由美 『ハートブレイク・レストラン』

ハートブレイク・レストラン (光文社文庫)ハートブレイク・レストラン (光文社文庫)
(2008/07/10)
松尾 由美

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「それがうまく説明できさえすれば、何ですか、
お嬢さんのお仕事がうまくお運びになるということですか」
「ええ、まあ、そんなところです」
「でしたらお力になれるかもしれません」
お婆ちゃんは心底うれしそうだ。
「年寄りの考えを聞いていただけますか」
 (「ケーキと指輪の問題」より、一部略)

フリーライターの寺坂真以が仕事場代わりに使う、街道沿いのファミリーレストラン。
別にふつうのチェーンのファミレスなのだけど、なぜか店長はじめ従業員の様子が薄暗いようで、
ランチ、夕食のラッシュ時以外、ことに禁煙ゾーンには、ほとんど客の入りはない。
ただひとり、常連客であろう、マンガにでも出てきそうな、可愛らしいお婆ちゃんを除いて・・・。

ある日、真以が仕事場で起こった奇妙な事件(というよりは出来事)に頭を悩ませていると、
「あの――」とかぼそい声。
声の主はもちろんそのお婆ちゃん、ハルさんで、なんと彼女はどんな不思議もたちどころに
解決してしまう、心優しき名探偵お婆ちゃんだったのだ!(第一話 「ケーキと指輪の問題」)

前回読んだ『雨恋』がよかったので、続けて購入。
読み終わったとき、松尾さん充てに「ぜひシリーズ化を!」と
ファンレターでも出そうかと思った。
まあ出さないけど(オイ)、けれどそのくらい気に入った一冊。
加納朋子さんの、佐々良シリーズにひけをとらない、素敵な物語。
ハートブレイクどころかめちゃくちゃハートウォーミングな、連作短編集。

物語の主人公、フリーライターの寺坂真以が立ち寄るレストラン。
そこに来るお客が抱えて、解決しかねてる「不思議な話」を、真以に次々と謎解きしてみせる
お婆ちゃん探偵、ハルさん。(じつはこのお婆ちゃんもすごい秘密を持っているのだけれど、
それは本編と、本編後編をお楽しみに)

まるで「ちびまるこちゃんのおばあさん」のようなひっつめた銀髪、上品な和服。
「フィギュアにでもすれば売れるんじゃないだろうか」と真以が思うような、ご愛嬌。
日常の中の「あれ?なんかおかしいな」と思う小さな出来事から、不思議な強盗傷害事件まで、
ハルお婆ちゃんの手にかかればお茶の子さいさい。一挙解決。
"お婆ちゃん”的なイメージどおりののんびり口調で語る、シンプルだけど思いもよらない真相。
毎回「あ、そういうことか!!」と、完全に驚かされた。

「この世のどこにこんなお婆ちゃんがいるんだよ!これなら高齢化社会も少しは安泰だよ!!」
ってツッコミたくなるくらい、毎度鮮やかな解決。
毎回度肝を抜かれたり感心しきりの真以だけど、ある事件をきっかけに
(というかあるひととの出会いをきっかけに)、そんな自分に歯がゆさを感じるようになる。
そんな真以の奮闘劇も見ものだったり、お婆ちゃん本人の謎も見ものだったり。
ちょっと長めの物語だけど、あっというまに読了。

中身も後味もすんごくいいので、長くてもけっこう気軽にさくさく読める本。

それにしても。
ハートブレイクって失恋かと思って、表紙を見た友人も「何これ?失恋レストラン?」って変な顔してたけど。
今思いついたけど、ハートブレイクのブレイクってもしや「休息」のことかも。
のんびりハートウォーミングしながら休めるレストラン!行ってみたい!

さりとて。

このへんであるのってジョ○フルだけだけど、あそこだと休息もなにもないし・・・。
・・・ほんとのファミリーレストランで読むには、もしかしたら不向きかも。

けどこれ、すんごくお勧めです。

松尾由美 『ハートウォーミング・レストラン』 光文社文庫
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松尾由美 『雨恋』

雨恋 (新潮文庫)雨恋 (新潮文庫)
(2007/08)
松尾 由美

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「最初にはっきりさせたほうがいいと思いますけど、わたしは幽霊です。
 そういうことになるんだと思います。三年前にこのマンションで死んで、そのままこうしているから」


沼野渉、30歳、会社員。
「長くつきあうと飽きがくる」と恋人にふられ、外は連日の雨。
おまけにその雨がもとのちょっとした隣人トラブルで今の住処にも住みづらくなってしまう。
そんなとき、たまたま海外支社へ赴任するという伯母の代わりに、伯母のマンションに住むことに。
伯母の飼っている2匹の猫の面倒を見るという条件つきではあるけれど、
そのときは人生で一番のラッキーが舞い込んできたと思っていた。

けれどある日、部屋から2匹の猫を可愛がる見えない女性の声がし、
さらに声の主は24歳の女の子で、何者かに「自殺をやめることをやめさせられた」
つまり殺されたというのだ。
犯人への恨みはないが、だれが自分を殺したかを知ることなしには
「死んだひとが行くところ」にはいけそうにないと言う。
たぶん根っからの“いいひと”の沼野は、以来彼女が死んだ雨の日にだけ現れることのできる
幽霊に、いっしょに犯人を捜す手伝いをすると約束したのだけれど・・・・・・。

「名手が描く、奇跡のラブストーリー」というのが売り文句だけれど、
アマゾンでレビュアーさんが何人も指摘してるとおり、恋愛小説としてだけでなく、
ミステリーとしてもかなりのおもしろさ!

連続薬物自殺事件として片付けられていた事件のひとつが、じつはそれは自殺でなく、
「自殺をやめることをやめさせられた」、殺人事件であると、被害者自身が訴えてくる。
ふつうなら「んなこと言われてもねえ・・・」と困り果てたり、あげくはたぶん引っ越すとこだろうけど、
ひとのいい沼野は協力を決意。
まずは幽霊、小田切千波の言う、一番の容疑者に接触を図るも、またたくまに疑惑は晴れてしまい、
少しづつ明らかになる千波の事情から炙り出した容疑者も、すぐに潔白、もしくはアリバイが成立してしまう・・・・・・。

逆転、逆転、また逆転!!という手に汗握る大迫力ミステリ!とはいかないけれど、
これだ!!と思った答えがするすると抜け落ちていく。そんな過程の繰り返し。
思うように進まない事態にいらだったり焦ったりしながら、自然とページをめくる手が止まらなくなる。

けれど姿を現したこの「殺人事件」の真相は想像もつかず、そしてあまりにも哀しいもの。

最後の雨の日。
真相にたどり着いた沼野は、その事実を千波に伝える、つまり千波との別れを前に、
それでも重い口を開く。

「マジですか・・・・・・」と思わずつぶやいてしまったほど、あまりに哀しい答え。
そして真実を知った千波と沼野に迫るリミット。
ミステリの仕掛けと恋の終焉が同時に訪れる、直球勝負のラストシーンはけっこう泣ける。

正直な話、ラストシーンは、たぶんある程度予想はつくものだとは思う。
けれどここまで素直に泣けるのは、ひとえに松尾さんの書く物語の力。
「ささらさや」「てるてるあした」にも似てるけれど、やっぱりそれとはまた少しちがう気がする。
つかの間の関わり、それも、雨の日だけの関わり。
それはたぶん、ほんの少しの時間でのかかわりが、いつか大きな意味を持つようになる、そしてそれすらも持ち続けられないという、切なさと儚さ、そして哀しさ。

ちょうど雨の降る日に読めたこともあったのだろうけど、
雨の降る音のように、水滴のように、じんわりと身体に、こころに染み込んでいく物語。

あと、最後の最後。
それも物語でなく、解説の終わり部分。
さりげなーく「うおおおお!!そういえば!!」となることがさらっと書かれていて、
物語とあわせて二度びっくりしてしまった。(途中でさっさと気づく人もいるかもだけれども)

というわけで、解説先読みは厳禁。
できれば雨の降る夜なんかに読めればもう言うことなし。
極上というにはちょっと素直すぎるかもしれないけれど、けっこうとっておきの物語。
ここで知ったからには、こりゃもう読まなきゃ損!ってもの。

松尾由美 『雨恋』 新潮文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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