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武田百合子 『ことばの食卓』

ことばの食卓 (ちくま文庫)ことばの食卓 (ちくま文庫)
(1991/08)
武田 百合子野中 ユリ

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向かい合って食べていた人は、見ることもなく聴くことも触ることも出来ない「物」となって消え失せ、
私だけ残って食べ続けているのですが――納得がいかず、ふと、あたりを見回してしまう。
ひょっとしたらあのとき、枇杷を食べていたのだけれど、あの人の指と手も食べてしまったのかな。
――そんな気がしてきます。
 (「枇杷」より)

枇杷、牛乳、キャラメル、お弁当。
あるいは怖いこと、上野の桜、夢、覚書き。
食べ物に関する昔の記憶、そして関った人との思い出の数々。
素朴に、とつとつと綴る、感性豊かなエッセイ集。

ネットでたまたま見つけて、なんだか気になって仕方なく、
給料日直後だったのでほぼ即決購入。
武田百合子さん、じつは初めて知ったひとだけど、なんて素敵な文章!

冒頭に置いたのは、中でも一番気に入った文章。
今はいない、「物」となって消えうせた存在との、枇杷の記憶。
簡素な文章なんだけど、どうしてこんなにしんみり響くか。

枇杷の香りも手触りも、手首を流れる汁も。
吐き出した牛乳も、キャラメルの空き缶で作った模型も。
見知らぬ老婆の語るお鮨屋さんも、大好物のうなぎも。
初めてのバイトで通った飲食店、飼われてた犬の蒲焼の匂いも。

食べ物の記憶も人との思い出もこんこんと湧き出て、それをこんこん味わう。
(そういえば「キャラメル」にある兵隊さんとの会話は、読後しばらくその後を読めなかった)
読んでると川上弘美さんのエッセイや筒井ともみさんの「舌の記憶」なんかも思い出すけど、
でももっとずっと簡素。

時代の色。記憶の味。戦前、そして戦後の暮らしの風景。
才能、なんて言葉が読み終えてふと浮かんだ。
五感。感じること、綴ることの才能。

今ではもう出会うこともないひとも物も、感覚も感情も。
今ではもうだれも書けないだろう文章でとくとく綴る。
武田百合子さんの目線であれば、今の世界ってどんな風に見えたのか。
もっと読んで感じて、触れていたい気がしたけど、それはもちろん、もうできないんだけど。

武田百合子 『ことばの食卓』 ちくま文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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