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さとうさくら 『スイッチ』

スイッチ (宝島社文庫 607)スイッチ (宝島社文庫 607)
(2008/04/11)
さとう さくら

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普通にしているようにすることはできても、普通にしていることはできなかった。
わかってほしいことは何一つ理解されないのに、やってしまったことは、安易に本質として見られてしまう。
言い訳をするほど嘘臭くなるが、黙っていれば誤解される。
自分の言動にいちいち説明や言い訳を要する、人の遠さが疎ましかった。


ずいぶん前に買って何度か途中まで読んでやめて最初から読む、を繰り返し、
昨日の夜中にまた最初から読み出して、今度は一気読みしました。
たくさん染みました。こーいうの、カタルシスというのでしょうか。

26歳、フリーター、彼氏なし、処女。友人なし、仕事ありときどきなしの苫子。
交通量調査のバイトをしながら、ひとの首の後ろのありもしないスイッチを押し、消していくと空想する。
何者とも普通に関わるということができない苫子が、掃除婦→熟女ホステス志願のおばちゃん、オヤジ専門のギャル、嫁よりも家具、という家具オタク、あげく家具のせいで離婚したサル男。そしてかつての、同級生以上の意味あいのない知り合いたち。
衝動と自己嫌悪、制御できない浮き沈み。「学習も成長もしない自分」に飽き始めていた苫子の人生は、翻弄されながら変わり、変え始めていく・・・・・・。

前に読んだ『my sweet aunt』も良かったです。けれどその比ではなく、後ろ向きながら終始魅力的な物語でした。

人に関わることで生じる軋轢、不条理、その他もろもろ。
たいていのひとが半目くらいで見てやり過ごすものを苫子は直視し、黒ーい太陽でも見て目が潰れたみたいに、じくじくとしている。
バイト先の店長やら社長やら、こういう地位はあるけど中身腐ってる、けれどのうのうと生きているやつ。
バイト先の同僚とか、同級生とか、相手の立場をかんがみない、そもそもその発想すらないやつとか。
そう見えるだけなのかもしれないけれど、見える部分でしかたいてい判断できないのだから、関われないと自負する苫子の思いは他人事でもなく。(というか自分もね。「学習も成長もない」のは、まぎれなく、こちらの問題)

根拠の無いプラス思考はときに良い方向に作用するけれど、その逆は負のスパイラルを生み出すばかり。
その中でもがき、ときにもがくことも投げ出したような苫子を、けれどこころから疎んだり、軽蔑することなんてだれができるんでしょうか。(できるひとも多からず少なからずいるでしょうけど。私にはわかりません)

その中で圧巻なのは、やっぱりサル男との出会い、そして苫子がよせた恋心の顛末でしょうか。
苫子の重めの内面話はちゃかさずに聞く事ができるくせに、家具にしか興味の無いサル男。
そんなサル男に恋しちまった苫子も苫子っといえばそうですけど、自分が苫子ならわかる、気がします。じつはサル男も、けっこうダメ人間ですが。

「世間のそれとは別のところに、君の本当があるんだよ、きっと」

これはbyサル男。安心した?と聞かれた気がした。けれど、その「本当すらもない」という苫子。置いてけぼりになりそうな気がした。けれどそんな苫子に安心しました。

「大丈夫。悩んでいれば、そのうちわかる」

これは某お偉い方。わかるんだろーか。そんなこと、いつになったらわかるんだろーね。
「本一冊読んだくらいで人生変わることなんてありえない」とか、だれかが言っていた気がします。
自分については、じつのところ同感なんです。けれどけして無視できない言葉がそこかしこに落ちている、そんな道を一周してきたような、そんな不確かなくせに、なんだか確かなような不思議な読後感。

ぐだぐだですが、かっこうよかったです、苫子。
今まで読んだ本の中で、私的にベストスリー以内は確実です。

さとうさくら 『スイッチ』 宝島社文庫
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さとうさくら 『sweet aunt』

sweet auntsweet aunt
(2008/10/08)
さとうさくら

商品詳細を見る


「楽しいからとか、何かのためじゃなくて、生きることが先でしょう?」
「え?」
「生きてるだけで幸せなのよ」


高校は卒業間近。目指すのは服飾の専門学校。
家にはカメラマンのパパと、オーダーメイドの服をつくるママ。裕福で、今どきのカレシ。
そんな自慢のおしゃれな両親は、けれど突然の事故で他界し、しかも本当は二人そろってフリーターだったということが判明。
ぼーぜんとする私はぼんやりする間もなく、ママの妹、「無表情」で「いつも同じ服を着て醜く食べて」、「女を捨てたような」、大嫌いなおばさんの元に(お世話になるのでなく)居候することになる。
カレシの大地の紹介で、やる気のない古着屋に勤め始め、帰ってきたら能面のようなおばさんと二人きり。おまけに大地にしても、美人でもない私のことなどどこまで本気でみているかもわからない。
ひとはいるのに、頼れない。そんな中から、「落ちてゆく」私が手をつけたのは・・・・・・。

前に記事を書いた、『てるてるあした』に少し似た感じの物語。
けどこちらでは、あんな暖かな関係だとか、やさしい人だとか、頼れる相手がどうもいない。

住処はあるけど、ひとりきり。人はいるけど、孤軍気味。
ほんとーに普通の、どこにでもいる私が、うっかり死んでしまった両親のしょーもなさや、
鉄面皮のようなおばさんとの相容れなさや、ちっとも中身の通じあえないカレシや、
偽者の笑顔をふりまくあきらめだけの古着屋店長の中で、底辺からの孤軍奮闘。

ベタな話だけど、かと思えば、じつはひとりでもなかったりする。
にんにくとか黒酢とか、洒落っ気からは程遠いどころか正反対のおばさん手ずからの食卓だけど、
きっちり用意してはくれている。

「大人になるなんて、つまんないね」
振り向いたおばさんに、私は口をとがらせて言った。
「複雑だし、疲れるし。なんか大変で」
「子どもが何言ってるの」


けど、やさしい言葉など後にも先にもけして出ない。
ため息をつけば「ため息つかないで」とピシャリ。
ぐちのひとつでもこぼそうものなら、続く前にその場ですぐさま一刀両断に切り落とす。

食卓を囲みながらのこの無愛想なやり取りの繰り返しが、けれど必殺の仕事人。
どっしりとした鉄面皮が、いつの間にやら手を貸さない心強い心になって、
私の背中をしかめ面して見守ってくれている・・・・・・。

主人公の成長が描かれてても、「てるてる」とは似てもちがった読後感。
でも表面的にはちがっても、根っこにあるだれかの想いはじんと伝わってくる。
ありふれた私が、けれどたしかにその手でできることがあるということが、格別の元気付け。

とはいいつつ、冒頭の一文は読み終わってもじつはまだまだ飲み込めない。
「先か?いやたしかに生きるのは先にあるんだろーけどさ、先にある生を後で意味づけすることを含めて生きるってことなんじゃないん、できるかどうかは完全に別問題やけど・・・」とか、
「つーかそこまで達観できねーって!」なんて正直思うわけです。青二才で?それもいいけど。

ところで最後に、表紙についてちょっとだけ。

アマゾンなんかで「これはちがうだろー・・・」みたいなレビューを見かけて、読んでる最中はたしかに・・・、って思ってた。
けど読後は、これでいいんじゃん?なんて個人的にゃ思う。好みの問題っていやそれまでだけど、
物語の根っこ、というか、おばさんの心根がいい感じに出てるって、思うから。

好みといいつつそれはきっと、かなり大事なことだ。

さとうさくら 『sweet aunt』 宝島社
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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