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小山宙哉 「ジジジイ GGG (1)」(~続刊)

ジジジイ-GGG 1 (1) (モーニングKC)ジジジイ-GGG 1 (1) (モーニングKC)
(2007/06/22)
小山 宙哉

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「でも俺はそんなのはいらねんだ」
「人が悲しむ物は盗らねえよ」


歯ブラシ、うまい棒、えんどもあ。
なぜだか安い物しか盗まず、たとえだれかが追いかけても人間離れしたスーパー脚力でさっさと逃げ去ってしまう謎のヘンテコ怪盗、通称「ハープ」。
その正体は暁利一、御年70歳。

ありえねーよ!ってツッコミはこのさいなしとして。

「これは素晴らしい! これこそこの疲弊した高齢化社会における一縷の希望の光となり得る傑作だ!」ってでたらめな解説文書くのもなしにして。

変な話、怪盗ハープが盗みを通して伝えるものが、じつはすごく大切なものだったりする。
やってることはまぎれもなく「窃盗」だけど、ハープならいいやって気になる。

この本のタイトルが、たとえば「快足怪盗 ハープ!」とかじゃなくて「ジジジイ」なのも納得。というかそれ以外はありえない。

優秀刑事・春日さんと快足ヘンテコ怪盗ハープの対決(漫才?)も見物。

年取るんなら、こーいう年寄りになりたいですね。マジ。
「今が青春だし俺!」なんて言ってみたりして。

次の巻早くでないかなーと、首をながーくして待つ数少ない漫画の1冊。

小山宙哉 「ジジジイ GGG (1)」 モーニングKC
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福岡伸一 『生物と無生物の間』

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)
(2007/05/18)
福岡 伸一

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トリバネアゲハを追った博物学者が求めたのは、とりもなおさず世界の構造を明らかにすることに他ならなかった。(中略)私たち分子生物学者もまた世界の構造を知りたかったのだ。

おもしろい本ってホント意外なところから顔を出す。
理系アレルギーの私ですら、ほとんどかじりつくように読んでしまったという逸品。

しかしまあ、すらすら簡単に読める読み物じゃーない。わたしみたく「アミノ酸?タンパク質?あわわわわ何それちょっと待って!」みたくなるよなひと(いないのか?)には、ちょっとというかだいぶ頭使わないと読めない。

けれどまあ、心配ご無用と言いますか。

著者の福岡さん、教授さんだけあって難しいことをかみ砕いて説明するのがすんごく上手い。(教授だろーが先生だろーが下手な人もたくさんいるけど)

ただちょっと気になるのは、帯に見ての通り「生命とは何か?」ってでかでかと書かれてるけど、読んだ感じそれがそのまま主題、というわけではないような気がする。
失礼を承知でもっと言えば、「生物と無生物の間」ってタイトルも、たしかにそういったことにも触れられてるけどこの本全体をくくるタイトルにするのは、ちょっとちがうと思う。

自分の意見が曖昧なままで人様の著作をつつく真似をしてしまうけれど、わたしはこの本、

「生物学者たちの知られざる苦境」みたいな人間ドラマ的なものと、
「(本編でなくわたしの表現なのでめっちゃ月並みですが)生命の神秘と何とかしてそれに触れようとした福岡さんたち生物学者の試行錯誤の日々」、よーするに研究譚みたいな内容がメインで、
「生命とは何か?」っていう問いかけと、それに対する考察ってのはじつはメインでなくてサブの内容なんじゃないの?と思ったけど。完全素人目からみた感想なのですが。

でも誤解のないように(というかわたしの下手な説明のせいで変な誤解をされたらはてしなく困るので)追記。

本編ではもちろん「生命とは何か?」という問いかけは置き去りにはされておらず、ページ数は少ないけれどけっこう鋭い考察がなされてます。
終章の最後の一文なんか、それだけで「生命とは何か?」って問いに対する答えとなり得るくらいの、静かで劇的なラスト。(と思うんですが、どうでしょう?既読の方)

まとまりのない説明しかできなくてホントにすみませんが、福岡さんの文章は新書の、難解で堅いイメージのそれというより、小説、物語でも読んでるかのようにすらすら入り込める。

内容をすらすらきちんと理解できるかはもちろん別問題だけど、そんなに肩肘張って読まなくてもいいよ、まーちょっと聞いてくれるかい?って、なんか気さくな読み物。

ぐだぐだ説明したけどよーするに「これはおもしろい本なのでオススメですよ!」って、伝えたいのはただそれだけなんですが。

福岡伸一 『生物と無生物の間』 講談社現代新書
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豊島ミホ 『日傘のお兄さん』

日傘のお兄さん (新潮文庫 と 17-2)日傘のお兄さん (新潮文庫 と 17-2)
(2007/10)
豊島 ミホ

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可愛いだけじゃない。
女の子のむきだしの想いが胸をしめつける、まぶしく切ない四つの物語。
(裏表紙より) 

単行本、『日傘のお兄さん』の文庫化に伴い、大幅な加筆修正を加えた新版。
単行本を読んだのはずいぶんまえで、なんともなしに気に入っていたけどこれは文庫にはならんだろーなって思ってたらおもいもかけず文庫化されてて飛びあがって喜んだのです、私。
あーおかえり、なんかまた会えたんだねって感じ。
全4話収録。

あわになる・・・
事故に巻き込まれるという運の悪い死に方で死んでしまった私が、かつて好きだった同級生、タマオちゃんが結婚したことを知り、ふたりの家を訪れるお話。
大人になったタマオちゃん、隣にいるお嫁さん、タマオちゃんをモデルに描いた絵、色鉛筆、もう何にも触れられない手、もうタマオちゃんの目に映らない私。
丁寧語で静かに、淡々と語る私の気持ちが染み込んできて、どうしようもない気持ち(あえて言えば切ない)になる。ラストシーンは静かに泣ける。

日傘のお兄さん・・・
日傘をさしたロリコンお兄さんと私の、逃避行?(←すみません、上手い言葉が見つからないです)
幼稚園児の頃遊んでくれたお兄さんがある日突然迎えに来て、そんでふたりで電車に乗って・・・。
ってありえん!!ってホントにそうなんだけど、これはすんごく好きな話だったりする。
しかしこのお兄さん、単なるロリコンなのかやさしいお兄さんなのか、両方って気がするけどやっぱり私にはよくわからない。けど不思議と好きなんだよなー、この話。
単行本版より良い意味でソフトになった感じ。文庫版のお兄さんのほうが好きです。(どちらにしろダメお兄さんなのは間違いないけど)

すこやかだから・・・
単行本版『すこやかなのぞみ』改題。
すこやかに育つ小学6年のあたしと、折りたたみナイフを持った1個下の転校生、ナツの物語。
マジメな話、これはホントにすこやかな話だなって思う。だからって単純なんて言葉はほど遠いけど。

ハローラジオスター
単行本版『バイバイラジオスター』改題。
都内の大学にすべて落ちて北国の私立大に入学した知世は、魔法の声を持つ影のある先輩、ノブオに出会う。けっきょく最後までノブオを手に入れることができないまま、就活に忙殺される知世が遭遇したのは・・・、というお話。
個人的には『バイバイラジオスター』の方が物語としては好きなのだけど、こちらは今の豊島さんワールド全開って感じで、やっぱり好きな話。
単行本版と文庫版の間に『檸檬のころ』があることを、読んでるとなんとなく意識する。

あとがきによれば、『日傘のお兄さん』は豊島ミホさん最後の作品になるかもしれなかったお話なのだそうです。
ご本人曰く「当然のように売れず、さしたる注目をいただくこともなく終わった」この本にまた会えたのは、ほんとによくわからない、不思議なこと。

ま、うれしかったからそれでいいんですけど。

豊島ミホ 『日傘のお兄さん』 新潮文庫

追記。

>『日傘のお兄さん』の記事に拍手をくださった方

本当に励みになりましたし、喜びのあまりイスから転げ落ちました。(実話)
こんな場所ですが、ふと思い出した時にでも、また立ち寄っていただけるとうれしいです。(^^)v
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小田ゆうあ 『斉藤さん(1)』(~(4)、続刊)

斉藤さん (オフィスユーコミックス)斉藤さん (オフィスユーコミックス)
(2006/11/17)
小田 ゆうあ

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怖いわよ
でもそのままおいとくほうがずっと怖いよ
悪いことを悪いと思えない人をほっとく方が怖い
そんな人たちばっかの社会が自分の子供の未来だなんて怖い


思ったこと、感じたこと、それがわるいことでも口に出来ない真野。
わるいと思ったこと、考えたことはすべてハッキリ言う、斉藤さん。
そんな斉藤さんは周囲から孤立しているけど、なぜだか真野は斉藤さんが気になって・・・。

ドラマ「斉藤さん」にはまってしまい、ついに原作コミック既刊一気買い!なんてー無茶をしてしまいました。

アマゾンでは批判的なレビューが目立ってたのですが、読んでみるとまるっきり的外れな批判でもないなーとは思います。

けどこの本、やっぱり良い。
たしかにちょっと過激なとこもあるけど、それを含めていろいろ考えさせてくれる。
「斉藤さんに共感できるかできないか」というより、斉藤さんの姿勢を通して物語の外から自分が考えたこと、それ自体のほうが大切な気がします。

気になる方は、一度読んでみてください。当たり前だけど、その方が確実。

小田ゆうあ 『斉藤さん (1)』  オフィスユーコミックス
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奥田英朗 『イン・ザ・プール』

イン・ザ・プール (文春文庫)イン・ザ・プール (文春文庫)
(2006/03/10)
奥田 英朗

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「いらっしゃーい」
ドアをノックすると、やけに明るく甲高い声が響いた。
医師らしき、太った中年男が一人掛けソファにもたれかかっていた。


プール依存症、陰茎強直症、妄想癖・・・・・・訪れる人々も変だが、治療する医者のほうがもっと変。こいつは利口か、馬鹿か?名医か、ヤブ医者か?(裏表紙より)

超ヘンテコ精神科医、「伊良部先生シリーズ」第一弾。初めて読んだけど、これは大ヒットの予感。
なにしろホント、おもしろすぎる。

「イン・ザ・プール」(プール依存症)、「勃ちっ放し」(陰茎強直症)、「コンパニオン」(妄想癖)、「フレンズ」(ケータイ依存症)、「いてもたっても」(強迫神経症)の5話収録。

さまざまな悩みややっかいなヘンテコ病を抱えた人たちが訪れたのは、伊良部総合病院の、なぜか地下一階にある神経科。
ドアをノックすれば「いらっしゃーい」と甲高い声がし、超ヘンテコ精神科医、伊良部一郎と、無表情で妙に色っぽい謎の看護婦、マユミに遭遇することになる。

色白で肥満体。45くらいに見えるけど、じつは35歳(後に26歳青年医師と偽って、出会い系サイトでモテモテ状態になる)、患者の話もろくに聞かずに勝手に診断をくだし、何かと言えばやたらとマユミに注射を打たせる。おまけに極度のマザコン。

伊良部先生みてると、診察室に来てる患者さんがすんごいマトモな人に見える。よーするにこの世のどこを探しても滅多に見つからないような超ヘンテコな精神科医。

カウンセリングや療法なんてするだけムダと言い放ち、ひたすら自分の好きな話をするかとんでもない荒治療の提案をするか。
たとえば繁華街でヤクザを闇討ちしろ、そーすれば追われてるくらいだからつまらない悩み事なんか確実にふっとぶ、とか。患者さんが呆れると「たとえばの話だよーん」と大口開けて笑う。
呆れてものも言えないとはこのこと。

でもなんだろ。

けっきょく伊良部先生のところにきた患者さんって、なぜだかみんな治ったり、解決したりしてしまう。
多くは伊良部先生のあまりにヘンテコで破天荒な姿勢をショック療法にしたり反面教師にしてるわけなんだけど、伊良部先生のふざけてるとしか思えない言葉には、それでもところどころ的を射てたりもする。

伊良部一郎は、たぶん馬鹿で変人。だけどある意味、ヤブ医者ではない。(かといって名医?って聞かれても、けしてうなずけないのだけど)
私も心療内科って何度か受診したことがあるんですが、ろくにこちらの顔も見ず、話も聞かずにクスリだけ出して診察終了ってこともけっこーあったし。(もちろん、中には良い先生もいましたけど)

伊良部先生が実在のひとなら、必要になったら私はこの先生のところに行くんだろーなと思う。
たしかにめちゃくちゃなひとだけど、患者さんをちゃんとひとりの人間として見てる。それだけは絶対。

1番好きな話はケータイ依存症の男子高校生の登場する「フレンズ」という話。
最後はふっきれるんだけど、実際こういう子ってけっこういるんじゃないかなー。
それまで「謎の無表情看護婦」だったマユミさんですが、この話読んでからはちがってきました。

あーやばい、くせになりそう。
続編、「空中ブランコ」も購入決定。
文句なしにオススメです。

奥田英朗 『イン・ザ・プール』 文春文庫
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加納朋子 『ななつのこ』

ななつのこ (創元推理文庫)ななつのこ (創元推理文庫)
(1999/08)
加納 朋子

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いったい、いつから疑問に思うことをやめてしまったのでしょうか?
いつから、与えられたものに納得し、状況に納得し、色々なことすべてに納得してしまうようになったのでしょうか?
いつだって、どこでだって、謎はすぐ近くにあったのです。


短大生の入江駒子は偶然本屋で見つけた絵本、『ななつのこ』に一目惚れし、読後、著者の佐伯綾乃さんにファンレターを書こうと思いつく。
初めて書いたファンレター。駒子がそこに記したのは絵本についてのこころからの感想文と、最近駒子が体験した、なんてことないけれどちょっと不思議な出来事、『スイカジュース事件』。
そのときはまさか、返事がくるなんて思いもしなかった。けれど少し遅れてやってきた返事には、なんと綾乃さんが推理した、『スイカジュース事件の真相』までが記されていて―――!

それ以来、主人公駒子と、謎の絵本作家、佐伯綾乃さんとの手紙のやり取りが始まる。
駒子は身の回りで起こった「なんてこともない、けれどどうしても不思議な出来事」を手紙に記し、綾乃さんからの返信(推理編)で、小さな謎の真相に気づく!というもの。

ほんとーに、なんてことない。「事件」というより、単なる「出来事」としかいえないような、見落としてしまいそうな小さな謎。
冒頭の「スイカジュース事件」に始まり、どこかおかしな展覧会、気づけばアルバムからなくなっていた1枚の写真、花壇の裏側で歩きまわる上品な老婦人、etc・・・。
どれもこれも、何も駒子みたく物語の主人公じゃない私たちでも、その辺を歩いてれば遭遇しそうな小さな出来事ばかり。
だっていうのに、そんな小さな出来事のひとつひとつに、じつは思いもしない理由があって、綾乃さんからの返信で駒子といっしょになってびっくり仰天、あー謎解きって何もミステリー小説や血だらけの殺人現場だけじゃなくて、こんななんでもない日常にもたくさん転がってるんだなって、うれしくなります。(もちろん、「ななつのこ」もれっきとしたミステリー小説なのですが)

ところで「ななつのこ」はその名のとおり、全7話収録の短編集なのですが、1番好きな話は6話目の「白いタンポポ」。

心配する大人の気持ちも、まるっきりわからなくもないけれど。
それでも私も駒子と同じく、自分の定規でしか測らない彼らには、けして共感はできません。

「本当に、明日咲く花の色は、きっと誰にもわからない」。

私はこの言葉に会いたくて、「ななつのこ」を何度も読み返しているような気すらします。

そして何より、主人公の駒子の存在。佐伯綾乃さんは、返信の中でこんなことを言っています。

あなたは白いタンポポの花に似ていますね。ありふれているようで、本当は滅多に出会うことが出来ない、つまらない既成概念や価値観や常識をその存在だけで控えめに、けれどあっさりと否定してしまう。白い花の傷つきやすさと、そして何よりたんぽぽの逞しさとを持っている・・・・・・。

本当にそう。そして駒子の存在は、そのまま著者の加納朋子さんのまなざしを伝えてくれます。
ありふれた日常に転がる小さな謎、そして何より、なんてことない日常のいとおしさ。

出会いたければ、頁をめくればいいだけ。
だから私は、この先も何度もこの本を読み返すんだろうなって思います。

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森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)アーモンド入りチョコレートのワルツ (角川文庫)
(2005/06/25)
森 絵都

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「やさしい本」だなーと、読み終えるたんび、思う本。
森絵都さん作品の初読本は「永遠の出口」で、次にこの本を読んで完全に森さん作品のファンになりました。

シューマン、バッハ、サティ。素敵なピアノ曲にあわせて贈る、3話収録の短編集。

子供は眠る  ロベルト・シューマン〈子供の情景〉より ・・・
「ぼく」こと恭、智明、ナス、じゃがまる、章くん、いとこ同士の少年5人の夏が始まった。
そんな中ぼく、智明、ナスの3人はある思いを胸に秘めていた。宿泊するのは章くんの別荘 → 章くんの機嫌を損ねたら、もう別荘には来られない。「我慢」を誓う3人だったが、章くんの度重なる横暴な態度、そして何より、毎夜半ば強制的に参加させられる、クラシック鑑賞・・・。しだいに章くんへの反感が高まる中、ついに事件は起こった。

読み出してすぐ、こりゃたまんねーよ!って恭たちに同情。
章くんの機嫌を損ねないため(来年も別荘に来るため)に少年3人の、いじらしいほどの気苦労の数々。
それに加えて、遊び疲れではてしなく眠たいのに、毎夜強制的に聞かされるクラシック音楽(しかも毎晩同じ曲!)。
当然いつもみんな途中で眠ってしまうのだけど、そうすると章くんの機嫌を損ねることになる。
なんてストレスフルな夏休み!私ならそれきり別荘なんて行きません(>_<)

けれど読了後、章くんがなぜクラシックを聞かせたがるのか、という根源的な理由がわかったとき。
あいかわらず横暴な章くんですが、ちょっといいやつじゃんこいつ、なんてなことを思いました。

彼女のアリア J.S.バッハ〈ゴルドベルグ変奏曲〉より ・・・
不眠症の「ぼく」が旧校舎の音楽室で出会ったのは、同じく不眠症だと言う謎の女の子、藤谷。
週に一度、木曜日、ぼくと藤谷、「不眠症同士でいろいろ話す」時間。
ぼくは藤谷の話す「まるで昼ドラや火曜サスのような、波乱万丈、てんやわんやの藤谷家」の様相に驚きながらも、同じ不眠症に苦しむ仲間を見つけたと喜び、毎週木曜日を楽しみにしていた。
けれどいつしかぼくの不眠症は治まり、やがて藤谷の重大な秘密も明らかになって―――。
こういってしまってはなんなのですが、表題作よりも大好きな話。
お互いに小さな秘密やウソを抱え込んで、それに気づいてお互いを責めて、それで仲たがいなんて悲しい結末にはならなくて、とっても素敵な恋物語になる。
「肯定することは否定することより難しい」。
ほんとにそうなのだけれど、こんな素敵な肯定の力が欲しいです。

アーモンド入りチョコレートのワルツ  エリック・サティ〈童話音楽の献立表〉より ・・・
「わたし」こと奈緒と君絵と絹子先生のピアノレッスンに突如乱入してきた謎のフランス人、「サティのおじさん」。(ちなみに、本名はステファン)
他の生徒や保護者には煙たがられながらも、やがて奈緒と君絵、絹子先生とサティのおじさんの、レッスン後の「ふしぎな大人たちとのワルツ・タイム」が始まる。

世界はあの広間のように、きれいにふわふわと揺らめいているべきなのに。
至るところからワルツが流れ、だれもが優雅にステップを踏んでいるべきなのに―――。


でもそんなふうにどんなに素晴らしい日々だって、ずっと続くわけじゃない。
次第に険悪になる絹子先生とサティのおじさん。中学生なのにサティのおじさんに結婚を申し込む君絵。なす術のない奈緒。
そんななか、一度は修復できたように見えた関係も、ある日再び崩れてしまう。
いなくなるサティおじさんと、刻々と近づいてくる発表会。
発表会で奈緒と君絵が選んだ曲は、「金の粉」と「アーモンド入りチョコレートのワルツ」だった―――。

とてもまっすぐな物語。読後、まずそんな印象を受けました。

それはたとえば、発表会での君絵のこんなセリフ。

「あたしはピアノは弾きません」
いつものようにどうどうと胸を張って言った。
「なぜならば、人間には向き不向きというものがあって、似合わないことをむりにやると、災いが起きるからです。だからあたしは、うたいます」


すげーなって、心底思いました。こんなまっすぐな、これは強さとでもいうのか。

そしてラストシーン。奈緒が思った、たったの一言が物語の終わりをまっすぐやさしく告げてくれます。

白状すると、私はバッハもシューマンも、それどころかワルツも全然知らないんです。
唯一聞き覚えがあるのが、「トムとジェリー」の中でトムがピアノを弾き、ジェリーがワルツを踊るという話の中で流れていた曲で、だから私がこの本を読みながら聞こえていたのは、テレビでトムの弾いていた名前も知らないピアノの音楽でした。

邪道だ!って気持ちになるかもしれませんが、それでも十分この物語たちは素敵でした。

たぶんバッハやシューマンやワルツや、トムとジェリーの音楽を知らないひとでも、ひとつひとつの物語がそのつどその人の中で1番心地よく聞ける音を引き出して、聞かせてくれると思います。

森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 角川文庫
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山崎マキコ 『さよなら、スナフキン』

さよなら、スナフキン (新潮文庫)さよなら、スナフキン (新潮文庫)
(2006/04)
山崎 マキコ

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わたしはたぶん、この世のどこかでスナフキンに出会いたいのだ。
冷たくしているのはそぶりだけで、心のなかではとてもわたしを愛している――そんな存在と出会いたいのだ。


美人でもなく、これといった特技も資格もなく、大学もふたつめで、年齢でいえばもう3浪同然、いつも一生懸命だけれども、あまりにドジで不器用な女。その名も、大瀬崎亜紀。
そんな大瀬崎、ひょんなことから編集プロダクションでバイトを始めることになり、そのうえバイト先のシャチョーから「大瀬崎、君に本を書いて欲しい」とまで依頼され!
だれかに必要とされたい。こんなわたしでもシャチョーの力になれるのなら。
その一心だけで身を削るように働き続ける大瀬崎。でも、それは本当なんだろうか。

もしかしたら、私の今まで読んだ本の中で1番大切な本、かもしれません。

それにしてもまあ、この大瀬崎亜紀って女、只者じゃない!

初めての面接の真っ最中、慌てるあまりくしゃくしゃの履歴書をポケットから取り出してその場で封筒につめ、編集のバイトなのに「キュウリを1分間で50枚輪切りにできるともらえる」という食物検定4級の有資格者であることをアピールした後、切り貼りしていない自分でもこわい顔と思う証明写真4枚を「ぜんぶどうぞ!」と差し出したり。
「地図を書いて来い」と言われれば道中の住宅街の表札を「近藤さんち」「松田さんち」と一件一件しらみつぶしにメモあげく、「円い家」「犬の吠えている家」を目印にした、ある意味すんごい地図を差し出す始末。

あんまりおもしろくて、一瞬、これはギャグ小説(?)ですか?って本気で聞きたくなりました。

でもこんなに抜群におもしろくておかしいのに、こんなにしんみりいたくてやさしい物語は、たぶん他にないです。
だって途中まで読んだら気づいてしまう。
「だれかに必要とされたい」ってもがく大瀬崎の姿は、けして他人事でなく。
もしかしたら、自分の姿かもしれないってことに。

物語中盤、大瀬崎は倒れそうになりながらも「自分の居場所」を見つけ、幸せな日々を手に入れます。

けれどそのまま安易にハッピーエンドの結末や、そのまま大瀬崎の成長物語にしないところが山崎マキコさんらしいところ。(3冊しか読んでない私が言うことじゃないですが)

ちなみに、帯に書いてある「あなたを守ってあげたい」って言葉。

私は最初見たとき、「(あまりに不器用な大瀬崎を)守ってあげたくなる」という意味かと思ってたんですが。
ぜんぜんちがってた。
いや、まるっきりマチガイ!ってわけじゃないんだろうけど、それだけではけしてない。
これはこんなに想いの詰まった意味だったんだなって、読後なんだかすんごくしんみりしてしまいました。
やっぱり山崎マキコさん作品、大好きです。

最後に、角田光代さんの解説文から一部抜粋。
終盤のある箇所で、私は深い解放を味わった。自分の中でひそやかに育つ矛盾の種、ふだんは目をそらしているその部分に、甘くやわらかい水をたっぷりと注がれたような、不思議な開放感だった。(中略)

なんて誠実な主人公だろうと思わずにはいられない。続けて、なんて誠実な書き手だろうかと作者を思う。私が終盤で深い解放を感じることができたのは、この二人の鋭いナイフのような、妥協のない誠実さのおかげなのだろう。

山崎マキコ 『さよなら、スナフキン』 新潮文庫
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豊島ミホ 『檸檬のころ』

檸檬のころ (幻冬舎文庫 と 8-2)檸檬のころ (幻冬舎文庫 と 8-2)
(2007/02)
豊島 ミホ

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私の高校生活は暗くて無様なものでした。卒業式のとき、もうここに通わなくて済むんだという事実に安心してボロボロ泣いたくらいです。(あとがきより)

そんな豊島ミホさんが、「地味な人なりの青春」をいつか書きたいとおもって書いた1冊。
とある田舎の高校を舞台にした、8つの物語。

タンポポのわたげみたいだね・・・「今日も私はお姫さまを起こせない。けれどもそれは、いつものことだ」。いつからか保健室登校になった友人サトと、「私」こと橘。サトの不在中に、橘の前に現れた、藤山君。――ごめんなさい、私は楽になりたいです。
こんな友達を持てたら、ふたりともしあわせだろうなって思った。

金子商店の夏・・・「けれど。やっぱり何かが違っていたのだ。スムーズに進んでいく奴らと、俺とでは。それを思い知る頃、俺はもう司法試験に三回落ちていた。」たしかに「痛い」話。それでもって、まるきし他人事、というわけじゃない。いつか!って思っても、どうにもならないこと。けれどそれでもって、この話を読んで思えた。

ルパンとレモン・・・「どこでどう間違えたんだろう、と思う」。いつのまにか開いた距離と、もう戻らないという確信。ありきたりかもしれないけれど、こんな気持ちをこんなに丁寧に掬ってくれる話って、そうそうない。

ジュリエット・スター・・・「絶対魔物だよ、あいつ」。恋愛禁止の下宿内で、「間違い」を防ごうと孤軍奮闘する「私」と魔物・珠紀、無愛想・林君。他人事だからいえるけど、こーいう魔物なら私は案外嫌いじゃないです。(好きでもないけど)

ラブソング・・・「ああ、どうしたんだ私」。音楽バカの女の子の恋。ひっちゃかめっちゃかでおかしくて、だけどけっこー切ない話。たくさん切なくなった後で、今度は思いっきり笑えばいい。

担任稼業・・・「教師なんて、本当にむくわれない。これだけやった結果が「ハゲ」「ムカツク」だなんて、うんざりだ」。・・・すみません、私もそんなこと思ってました。全国のむくわれない先生方、本当お疲れ様です。m(__)m

雪の降る町、春に散る花・・・「何でか、ふといろんなことにあきらめがついた」。「私」は離れ離れになる。18年間過ごしたこの家からも、佐々木君からも。卒業式の豊島さんじゃないけど、ボロボロ泣けそうになる。語り尽くされたようなストーリーでも、こんなに切なくするなんてすごい。

「豊島ミホは、ふつうをかがやかす達人である」という解説文に何度もうなづく私。
こんな素敵な作家さんって、そうはいないです。

(エッセイ、「底辺女子高生」を併せて読むことをオススメ。
「檸檬のころ」の原型みたいな、地味で素敵な思い出が、豊島さんのクールな文章で語られています。)

豊島ミホ 『檸檬のころ』  『底辺女子高生』 ともに幻冬舎文庫 
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北村薫 おーなり由子 『月の砂漠をさばさばと』

月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)月の砂漠をさばさばと (新潮文庫)
(2002/06)
北村 薫おーなり 由子

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さきちゃんは思います。ケーキ屋さんの子供は、おうちのケーキが食べられるのかな。お花屋さんの子供は、おうちのお花をかざれるのかな。―――それは、わからないけれど、わたしはできたてのお話を聞けるよ。

お話好きなさきちゃんと、お話をつくることを仕事にしているお母さんの、とても素敵な物語。
さきちゃんのためにお母さんが話してくれるお話は、どれもとってもおかしくてやさしい。

たとえば、習字をしたくてやっと上手くなったのに、自分の名前を「ダオベロマン」と書いて減点されて、しょんぼりしてるドーベルマンのお話。

けれどどんなに素敵な日常だって、いつでもやさしいままじゃない。

たとえば、暴れん坊のくまさんが新井さんの家でアライグマさんになったというお話を聞いて、さきちゃんはお母さんに聞きます。
「ねえ、あのくまさん、だまされたのかな?」

鈍い私は解説を読むまでさきちゃんの真意に気づきませんでしたが(鈍すぎだろ)、お母さんはちゃんとさきちゃんに答えてあげます。素敵なお話にのせて。

さらにさらに。
おーなり由子さんの挿絵がもう素敵すぎる。
そういう意味では、ホントに可愛らしい奇跡のような本。

あー、なんか。
いつでもできたてのお話を聞けるさきちゃんが、とってもうらやましいです。(>_<))
それにしても「月の砂漠をさばさばと」。なんてかわいらしい言葉。
続く言葉を思い返すと、なんともいえない温かな気持ちになります。(^^))

最後に、梨木香歩さん(!)の解説より一文抜粋。

日常は意識して守護されなければならない。例えばこういう物語で、幸福の在処を再確認する。そういう時代に、私たちは生きている。

北村薫 おーなり由子 『月の砂漠をさばさばと』 新潮文庫
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集英社文庫編集部編 『怪談集 花月夜綺譚』

怪談集 花月夜綺譚怪談集 花月夜綺譚
(2004/08)
岩井 志麻子花衣 沙久羅

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(実際に読んだのは集英社文庫版ですが、使用できる画像が無かったのでこちらを使用しています)

耽美なものからユーモラスなものまで、どれも日本の女性作家ならではの、“怪談”になっている。
こうした和風の恐怖を心底楽しめるのは、日本人ならではの特権であろう。
(解説より。一部中略)

白状すると、最初はあんまり期待せず、「内容はともかく何でも良いからこわい話が読みたくいな」くらいの、軽い気持ちで購入したのですが・・・。(収録作家さんも、ほとんどが知らない作家さんでしたし)

すみません、感服いたしました。
だいたい、一番手が岩井志麻子さん、さらに続く2番手が恩田陸さんという時点で、「ただの怖い(または怪しい)話」なんかではけしてありえない、って気づくべきでした。
全10話の“怪談”アンソロジー。
長くなりますが、1話ずつ簡単なあらすじと感想を。(収録順です)

岩井志麻子 『溺死者の薔薇園』・・・薔薇園と異母姉妹。そこで起きた悲劇。岩井志麻子さんと聞くと『ぼっけえ、きょうてえ』や『黒焦げ美人』の、とにかくどろどろしてるってイメージが強かったのですが。
薔薇と少女の似合う、ある1つの悲劇。

恩田陸 『一千一秒殺人事件』・・・この本編中では変り種なお話。超自然現象の起こるバケモノ屋敷に泊まり込んだふたりの男のお話。怖いけれど、おもしろかったです。

花衣沙久羅 『一節切』・・・それはとうの昔の、お嬢さんの人形と、女中の少女であった「わたくし」のお話。「お人形は“鬼業”に通じると、いったいどなたが申されたのでしたでしょうか」。

加門七海 『左右衛門の夜』・・・殺しをはじめ、あらゆる悪事に手を染めた左右衛門を襲う怪異。襲い来る恐怖に続くラストシーンは、まさに「耽美」の一言。

島村洋子 『紅差し太夫』・・・『彼はたったひとつの作品で名を現在にとどめている。その作品、「紅差し太夫」を見た者はこの世にひとりしかいなかったのに』。恋情の虜となってしまった、若き天才職人たちの顛末。最後まで笑ってばかりはいられないのです。

霧島ケイ 『婆娑羅』・・・夢枕獏さんの『陰陽師シリーズ』を思い出しました。「呪」にかけられた村と、そこに迷い込んだふたりのひと。この村が襲われた、本当の目的とは?

藤水名子 『ついてくる』・・・非常な辻斬り男の顛末。ラストはちょっとにやりとしてしまいます。「左右衛門の夜」に少し似ていますが、こちらは極上のブラックユーモア。

藤木稟 『水神』・・・「昭和17年。ぼくはまだ少年だった」。恩田陸さんとは違った意味で、こちらも変り種なお話。水神さまの住む川と、少年たちのみたもの。背筋が寒くなります。

森奈美子 『長屋の幽霊』・・・毎夜幸志郎のもとに現れる爺の幽霊。爺の呟く「返せ」とは、一体どういう意味なのか?寒気続きのお話群の後で、一休さんみたくとんちがきいてておもしろかったです。

山崎洋子 『長虫』・・・明治20年に焼失したお屋敷で起きた、あるひとつの、あまりに凄惨な悲劇。お屋敷は無くなれど、悲劇は今もまだ・・・。トリをつとめるお話だけあって、本編中1番こわかったです。ラストにあなたを待ちうける、悪夢。

あーつかれた。(>_<))
長々と書き連ねましたが、ちょっとおもしろそうではないですか?
気になったら即行動。
きっと読んでみて損はしませんよ。


集英社文庫編集部編 『怪談集 花月夜綺譚』 集英社文庫
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木地雅映子 『氷の海のガレオン/オルタ』

氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)氷の海のガレオン/オルタ (ピュアフル文庫)
(2006/11)
木地 雅映子

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もう何度読んだかわからないくらいです。

ヤングアダルト文学において、今もなお『伝説』とまで評される1冊。
半信半疑でしたが、一度読めば頷けます。

自らを天才と信じて疑わないひとりのむすめがおりました。斉木杉子。十一歳。―わたしのことです。(『氷の海のガレオン』 表題作)

想像してください。あなたは今、小学校一年生。六歳の女の子です。(『オルタ』 書き下ろし)
2作品収録。

どちらの作品においても、『学校』が大きなテーマ。

『ガレオン』では自分を天才と信じる(信じなければならなかった)斉木杉子、そしてその家族。
『オルタ』では、おそらく自閉症である娘さん、オルタちゃんと、「わたし」と夫。
それぞれの視点から『学校』というものが語られています。

ひとまずひとつずつ。まずは『ガレオン』。

『子どものメイン社会=学校』において自らをつらぬくことで、異端者として見なされる杉子。兄、周防。弟、スズキ。
時折杉子が呼びかけるのは、自宅の庭に生えた一本のナツメの大木「ハロウ」。

「おかしいのは、あたしたちなの、それとも日本中がおかしいの」。また三人でパパをじっと見つめた。
「さあね。」とパパは言った。「たぶん俺たちだろ。少数派だもん。」


言葉というものに対して誠実で、だから曖昧にすることができず、あげく孤立し、講談社現代新書や、シャガールの画集を持って学校に向う。
そんな杉子がハロウのもとで流した涙の意味を、思い知らされます。

もうひとつの収録作品、『オルタ』。

著者の木地雅映子さんが、『オルタちゃんのお母さん』として書いた、実際のお話。
おそらくは自閉症の娘と、いつまでも執拗に娘をいじめる男の子。
おそらく、客観的に、そして同時にこれ以上にないほどにその当時の心境を綴ったお話。
たとえば、こんな文章。

オルタには、もうわかっています。自分は学校では、決して守られることとはなく、先生は本当は、傷つけられている自分より、傷つける貴大くんの方を、ずっと心配しているのだと。
大人には、その理由がわかります。今、優先的に手を差し伸べなければならないのは、確かに、貴大くんの方なのです。


そして、オルタちゃんを通じてみた、『学校』というもの。そして、いなくなってしまった子どもたち。

(あなたを、この国の形代になんか、させやしない)

この一言が、どう響くでしょうか。

私の拙い説明ではこのふたつの物語を十分に伝えることはできません。
だからできましたら、みなさんの目で一度確かめてほしいのです。

『氷の海のガレオン/オルタ』は誇張でも何でもなく、この時代に暮らす私たちに、きっと必要な本です。

木地雅映子 『氷の海のガレオン/オルタ』 ピュアフル文庫
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小川洋子 『凍りついた香り』

凍りついた香り (幻冬舎文庫)凍りついた香り (幻冬舎文庫)
(2001/08)
小川 洋子

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「じゃあ一体、私に何ができるんでしょう」
「記憶するだけです。あなたを形作っているものは、記憶なのです」


ライターである「私」の恋人は、「私」に自作の香水をプレゼントしたあくる日、調香室で無水エタノールを飲んで自殺した。
彼の弟と「私」は、やがて彼が残していた3つの文章を発見する。
「締め切った書庫。埃を含んだ光」、「凍ったばかりの明け方の湖」、「古びて色の抜けた、けれどまだ十分に柔らかいビロード」、そして「記憶の泉」。
恋人の死の理由を求めて、「私」はひとり、プラハへと発つ。

小川洋子さん作品ではあまり見かけない、まるでミステリー小説のような物語でした。

調香師、「記憶の泉」、弟、ルーキー、偽りの履歴書、スケート、数学コンテスト、無数のトロフィー、空白の数学コンテスト大会、孔雀の羽・・・。

いくつかのキーワードを頼りに、やがて「私」は恋人・弘之の死の理由を知ることになる。
それはあまりに切なく、そしてもう取り返しのつかない事実。

時折物語の舞台が現実と夢の境を行ったり来たりするけれど、そんな不思議なことすらも、まとめて物語の中に丹精に紡がれていて。
本編中に出てくる数式のように、静謐で、うつくしい文章に、最後まで頁をめくる手を止めることができませんでした。

ところで本編中に、こんな文章があります。

生まれて初めて味わう種類の沈黙だった。決してよそよそしくはなかった。無理に言葉を探す必要などなく、しんとしているはずなのに、鼓膜の底を空気がせせらぎのように流れてゆく、居心地のいい沈黙だった。

「私」と弘之の時間についての描写なのですが、これはそのまま小川洋子さん作品を語る言葉でもあると、そんな気がしています。

薬指の標本」と並んで、小川洋子さん作品の中でも特にお気に入りの1冊です。

小川洋子 『凍りついた香り』 幻冬社文庫
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川上弘美 『センセイの鞄』

センセイの鞄 (文春文庫)センセイの鞄 (文春文庫)
(2004/09/03)
川上 弘美

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正式には松本春綱先生であるが、センセイ、とわたしは呼ぶ。
「先生」でも「せんせい」でもなく、カタカナで「センセイ」だ。


ツキコさんはある日居酒屋で高校の恩師である「センセイ」と再会し、以来おたがいに憎まれ口をたたき合いながらも酒を飲み、肴をつつく日々。
ときにはセンセイとふたりで汽車土瓶でお茶を飲んだり、市へ行ってお弁当を食べたり、ときにケンカしたり、キノコ狩や花見に参加したり、島に出かけたりもする。
そんなセンセイとツキコさんの、たがいに切ない思いを抱きながらも、ゆったりと流れる日々。

何度読み返したか、ふと思いついたときにたぶん5、6回くらい読み返してる本。
川上弘美さんの本の中で、一番好きな本。

じつはツキコさんというひとが、ものすごく好きです。たとえば、

恋愛というものがそんなじゃらじゃらしたものなら、あまりしたくないとも思っていた。

ウンメイノゴトキコイ。自分にやがてウンメイノゴトキコイがおとずれる可能性は、万にひとつもないだろうと、スピーチを聞きながら、雛壇に座る恋人と友人を眺めながら思った。


とか。よーするに、勝手に感情移入してるだけなんですが。
(「恋愛しない」と「できない」はちがうんだよって、しごくまっとうなお声が聞こえてきそうですが)

あと、センセイとツキコさんの「切ない思いをおたがいにかかえながら」の、距離。
とにかくもどかしい。飄々としてるセンセイも、憎まれ口を叩くツキコさんも。
「もー何やってんだよ」っておせっかいを言いたくなるけど、そのすぐ後で「ま、いいか」って必ず思わせるような、不思議な距離。

それともうひとつ、時間。
30歳近い年の差を抱えるふたり。

「ツキコさん、ワタクシはいったいあと、どれくらい生きられるでしょう」

センセイの言葉が突き刺さるような気がするのは、けして気のせいではないです。

そして、物語の終焉。

結ばれたふたりと、終わってしまった時間の中で、「センセイの鞄」ばかりが、ただある。
こんなふうにはかなくて、いつまでもこころに染みるお話を、私は他に知らないです。
ツキコさんじゃないけど、「ウンメイノゴトキコイ」がおとずれとするなら、私の理想はこの物語です。

最後に、本編中で一番好きな文章を引用。

センセイとは、さほど頻繁に会わない。恋人ではないのだから、それが道理だ。合わないときも、センセイは遠くならない。センセイはいつだってセンセイだ。この夜のどこかに、必ずいる。

川上弘美 『センセイの鞄』 文春文庫 新潮文庫
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瀬尾まいこ 『天国はまだ遠く』

天国はまだ遠く (新潮文庫)天国はまだ遠く (新潮文庫)
(2006/10)
瀬尾 まいこ

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身体も心もすっきりしない。いつもどんより重い。そんな毎日が延々と続いた。早く解放されたいって、心身共に訴えていた。

23歳のOL、千尋はどこか遠くの場所を見つけて死ぬつもりだった。
ところがいざ辿り着いた山奥の民宿で、自殺に失敗。
民宿の大雑把な田村さんや大自然、村の人々との交流で、
千尋のこころはしだいに癒されてゆく千尋。
けれどゆったりと流れる日々の中、千尋はやがて気づいてしまう。
ここにはわたしの居場所はない、と。

素朴。素朴でしんわり良い話。食べ物で言えば丸ボーロ、といったところでしょうか。(なんだそれ)

大雑把なやさしさと、しっかりした食べ物と。
なんてことないけれど、そんなものでけっこうこころに染みわたる。
(千尋だけでなく田村さんがいるおかげで)おおげさすぎないところも、好きです。

あんまり本筋とは関係ないんですが、お米とか魚とか鶏肉とか、とにかくしっかりした食べ物が、これまたしっかりと描かれているのも好きです。その食べ物にまつわる気持ちとか、読んでるとなんか安心する。
たとえば、

食事をすると、自分が生きていることがわかる。
生きているのが良いのか悪いのかは別にして、魚や米や味噌、そういう確かなものを食べていると、ここでこうやって存在しているんだなあって感じる。


この気持ち。
なんかわかるような気がしてしまう。

たしかな生活に癒されて、それでも旅立ちのときはやってくる。
田村さんと千尋の根本的なちがいに、千尋が気づくとき。
だってわたしの場所はここじゃないって気づくとき。

温かな場所を飛び出しても、千尋さんはまだやっていけるって思う。

丸ボーロって空腹は満たされないけど、やさしい甘味があって好きです。
やっぱりこの本、丸ボーロみたいです。

(ところでこの本、映画化されたとか。なんか見たいような見たくないような・・・。複雑です)

瀬尾まいこ 『天国はまだ遠く』 新潮文庫
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石井睦美 『卵と小麦粉それからマドレーヌ』

卵と小麦粉それからマドレーヌ (ピュアフル文庫)卵と小麦粉それからマドレーヌ (ピュアフル文庫)
(2006/03/02)
石井 睦美

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「ねえ、じぶんがもう子どもじゃないって思ったときって、いつだった?」

中学に入って二日目の朝、菜穂は前の席にいた亜矢にこんなことを聞かれた。
やなやつだと思ってた亜矢と菜穂は、けれどいつしか友達になり、
ふたりで図書館に通ったり、誕生日プレゼントをもらったりと、素敵な学校生活を過ごしてた。
けれど13歳の誕生日、ママの衝撃の一言で事態は一変する・・・。

と書くと、なんかものすごいヘビーなお話に見えそうですけど、そんなことないです。
表紙のとおり、すんごく温かい話。
それでいて、きっちりまっすぐと芯のとおった話。
じつは何気に、月見さんの2007年読了本ベスト10の中の1冊です。

中学生と思って侮ることなかれ。

20歳にもなった私ですが、物語中の菜穂さんや亜矢さんに教えられたことがいっぱいあります。(単に私が幼いだけなのかもしれませんが)

たくさんあるその中の1つ。とくにお気に入りは、
「両手がある」ということ、でしょうか。

本当に、宝物のように大切な言葉と時間がつまってます。
ぜひ一度、読んでみてください。

石井睦美 『卵と小麦粉それからマドレーヌ』 ピュアフル文庫
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杉浦日向子 『一日江戸人』

一日江戸人 (新潮文庫)一日江戸人 (新潮文庫)
(2005/03)
杉浦 日向子

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時代劇や落語でお馴染みのベランメエ集団「江戸ッ子」ですが、その実態は、意外と知られていません。

江戸人は生涯アルバイター?、江戸の奇人変人の数々、将軍さまの意外に「こんな暮らしはごめんだよ」的な日常、天下の悪法「生類憐れみの令」の意外なご利益、江戸人の蒸し暑い夏の過ごしかた、ちょっと可笑しな怪談話から、お手軽絶品江戸料理、etc・・・。
読んでびっくり、江戸ってこんなにおもしろかったの?!(いや、マジで)

とあるサイトさんでものすごくオススメされていたので気になって、そのくせ「江戸時代ってどーせ侍ばっかでしょーが、ホントにそんなのおもしろいの?」って思いっきり斜めに構えながらも、試しに読んでみたらとっても面白かったです。
文章だけでなく(説明文という感じではぜんぜんなくて、そこらで立ち話してるような軽くて気楽で、可笑しい文章)小洒落たイラストつきなので、パラパラ見ているだけでもおもしろいです。

つかれたらちょっと1日、この本1冊だけ持って江戸で遊んでくるのいいかもしれませんね。

ところで、「江戸の三男」(娘たちだけでなく男も惚れる男)とは、火消しの頭、力士、与力のことだったそうです。

火消しの頭、あーこれはまあわかる。
力士、うん、これもなんとなくわかる。
与力。って、あれ、与力さんってお役人じゃなかったけ?
お役人でありながら江戸人に愛される、そのわけは?

読んだらわかります。
「あーそれならそうだろね」って、きっちり納得できます。

とにもかくにも、月見さんみたく斜に構えず、一度手にとってみることをオススメします。
なんかね、江戸人さんたちの元気に触れて、つかれがほんのちょっと、軽くなる気がします。

杉浦日向子 『一日江戸人』 新潮文庫(小学館文庫版もあり) 
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島本理生 『リトル・バイ・リトル』

リトル・バイ・リトルリトル・バイ・リトル
(2003/01/28)
島本 理生

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「毎回怖いって思うたびに、そういえばいいじゃないですか」
「そうかな」
「そうですよ」


高校生だったふみの家族は、母、父親違いの妹、モルモット。
家の外には、習字の先生の柳さん、ボーイフレンドの周、2番目の父親。
自分の周りにいるひとたちとの時間、空間。
ゆっくりゆっくり、綴られていく毎日。

これといって見せ場なんてない、単調な物語。
けれど何度も繰り返して読んでしまう。

どれもこれもなんてことないんだ。だけど、なんだかいとおしいんだ。
そんな気になる。

こんなひとたちと、ずっといっしょにいたいんだって。
そう思わせつつ、いつかは別れがあることを、ちゃんと島本さんは教えてくれる。
なんだかだれか、ずっと前から知ってるひとに会った気分になる。

ところで冒頭の引用文。
こんな言葉、聞きたいって思ってしまうんです。なんかとんだ甘ったれですね、私。はは。

それにしても「リトル・バイ・リトル」。
ほんと、素敵なタイトルです。(ちなみに同じ名前の2人組歌手さんがいて、じつはそちらも好きです)

島本理生 『リトル・バイ・リトル』 講談社文庫

追記・・・
この本(文庫版)収録の、原田宗典さんの解説もよかったです。
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志村貴子 『放浪息子(1)』(~9、続刊)

放浪息子 (1) (BEAM COMIX)放浪息子 (1) (BEAM COMIX)
(2003/07)
志村 貴子

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お姉ちゃんの夢はアイドル高校で麻衣子ちゃんとクラスメートになることだって
バカだと思う
ぼくの夢は・・・・・・


いつのまにか読み出して、いつのまにかはまりにはまってしまっているマンガ。
ブックオフでの2~7巻纏め買い、あれは古本とはいえ、あれは痛かった(財布が)。

二鳥修一 ・・・女子になりたい、女子みたいな男子
高槻よしの ・・・男子になりたい、男子みたいな女子

その他、暴力姉貴、デンジャラスビューティーの千葉さんなど、個性満点ないろんなクラスメートや家族との、可笑しくて、ときに切なく、けれどやっぱりどたばたな毎日を描いた物語。
なんか小学生も大変ですね。(途中から中学編ですけど)

男子が女子の服装、女子が男子の服装。
べつにいーじゃん?(似合うよう最大限努力すればの話。やっぱどうやっても、見合うようにするっていうのは重要でしょうよ)って思うんですが、なかなかどうして、そうそう上手くもいかないんですよね。(もちろんその逆、上手くいく場合もある)

「放浪息子はどこまでも」。
どこまで行ってどうなるのか、とてもとても楽しみです。

志村貴子 『放浪息子(1)』 BEAM COMIX
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川上弘美 『椰子・椰子』

椰子・椰子 (新潮文庫)椰子・椰子 (新潮文庫)
(2001/04)
川上 弘美山口 マオ

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一月一日 曇
もぐらと一緒に写真をとる。もぐらの全身を見るのは初めてである。あんがい大きい。写真をとるために直立してもらう。小学校六年生くらいの背丈で、顔もどことなく人間じみている。


妊娠中のもぐらと写真を撮ったり、雨乞いをしたり、近所の縄文人街を散歩したり、子どもをたたんで押入れにしまったり、冬眠用品を買いにいったり。
ヘンテコな日常を送るとある女性の日記。春夏秋冬。

川上弘美さんらしい、なんともいえずとぼけまくった内容がぎっしり満載な本。
冷静に考えればありとあらゆるところにつっこみどころ満載なのだけど、そのうち気づかなくなる。
気づかないうちに、椰子・椰子の世界に完全にとりこまれてしまってる。
好きな人は、ぜったいにはまります。そして抜け出せなくなります。おかしくて不気味で、やっぱり可笑しい椰子・椰子ワンダーランドから。

「中くらいの災難」にみまわれて、両耳と舌と両足親指と乳房が二倍になる話も好きだけど、1番はまってしまったのは、二月七日の「たくわん売り」の話。(「よくお顔におうつりですよ」と上手におだてられて、はなだ色と藍色のたくわんを買ってしまう話)

川上さんの日常ってほんとにこんな感じじゃないんですか、って聞いてみたくなりました。

かと思ったらさすがにそんなことはなくて、半分は夢日記なんだとか。(←巻末。山口マオさんとの対談より)

あー夢日記。なるほどね。
って、それでも十分すごすぎるんですけど・・・。

川上弘美 『椰子・椰子』 新潮文庫
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金原ひとみ 『AMEBIC』

AMEBIC (集英社文庫 か 44-3) (集英社文庫 か 44-3)AMEBIC (集英社文庫 か 44-3) (集英社文庫 か 44-3)
(2008/01/18)
金原 ひとみ

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一体どうしたらいい。一体どうしたら。何をしたらいい何をすればいい。ああ私は何を求めているのか。何を。何を。

『蛇にピアス』以来、久しぶりの金原ひとみさん作品。

おそらく摂食障害である女性作家の「わたし」。
錯乱したときにパソコンに書き残されている文章=錯文。
関係を持った編集者と、その婚約者。
現実と錯文が、やがて歪んで見えなくなる。

後で眺める錯文には大量の叫びが埋もれていて、「わたし」ですらも解析不可能。
けれどどこかで、「わたし」と錯文はシンクロしているのかもしれない。

「錯文」、「分裂」、「アミ-ビック」・・・。

こんちくしょう誰か助けてくれればいいのに誰かが私を多すれに来てくれるばいいのに誰かが。(「錯文」より抜粋)

「孤独と分裂の果てに待つもの」。

わかるようでわからない。わからないようでいて、わかりうる。
それともいっそ、わかりたいと思ってるの?

読後、だれ知らずそんな問いかけが浮かんできました。

自分でもどう感じたかはっきりとはわからないけれど、この本はけして嫌いではないです。

※AMEBIC[Acrobatic Me-ism Eating away the Brain、it causes Imagination Catastrophe.]「曲芸的自己中心主義が脳を浸食する事による想像力の崩壊」。(出版社 / 著者からの内容紹介より)

金原ひとみ 『AMEBIC』 集英社文庫
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中村航 『100回泣くこと』

100回泣くこと (小学館文庫 な 6-1)100回泣くこと (小学館文庫 な 6-1)
(2007/11/06)
中村 航

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初の中村航作品。

失うことなんて、今ここにある光に比べたらちっぽけなものと、僕は言う。
迷わずに、怯まずに、まっすぐにそう言う。
だけど本当なんだろうか?本当に本当に本当に、そうなんだろうか?


愛犬ブックの奇跡的な回復、ほこりをかぶったバイクだって走り出して、彼女との結婚練習も始まり、やがてプロポーズへ。
幸せはどこまでも続くんだって、本当にそう思ってた。

私は、今日みたいな明日が明日も続くってことを疑わないでいるけれど。

時間がたてば、みんないなくなる。

知っているのに、知らないふり。

それはそうだ、だってそんなこと、見たくない。

なぜ人は生まれて、死んでしまうのですか?

読後、まるで小さな子どもみたいな問いが生まれて、しばらく離れなくなりました。

中村航さんの作品は、この本だけ読んでも好きになれるかどうかはわかりません。

いろいろ、読んでみたいです。

中村航 『100回泣くこと』 小学館文庫
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小林光恵 『限りなくキョウダイに近いフウフ 』

(幻冬舎文庫 こ 5-12)限りなくキョウダイに近いフウフ (幻冬舎文庫 こ 5-12)
(2008/02)
小林 光恵

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「よくよく考えてみた結果なんだけどね、やっぱりそれがいい気がするんだ」
「ん?なんの話?」
「涼とわたしがね、キョウダイになるってこと」


結婚生活12年目、セックスレスの夫婦、涼と真樹。
波乱の戦国時代を経て、夫婦を超えた「すごくいい関係」になれたと感じるふたり。
それなら戸籍もいっそキョウダイにして、自分たちの実態に合わせようと思いつく。
けれど周囲からは大反対、それどころか猛反発を受け、キョウダイ化計画は難航。
それでもふたりはキョウダイ化の準備を着々と進めてゆく。
けれど途中から、真樹のこころはだんだんと複雑になっていき・・・。

(以下、少々ネタばれ気味。でもまあ、あらかた想像はつくでしょうけど)

最初はね、応援してたんです、このふたりのこと。
それもありだよ、ぜんぜんいいんじゃない、って。

だから「愛し合ってるのにセックスレスだなんて異常だ」、とか言うふたりの友人に、ふたりの次くらいに、もんのすげームカついて。

静かに幸せに暮らすふたりのもとに押しかけて抗議する友人軍団にも「なんだこいつら、ただの八つ当たりじゃんか」って、はっきりいって心底辟易して。

でもですね、物語後半。
キョウダイ化計画に至るまでのいろいろなふたりのこころが垣間見えてきて、だんだんと息苦しいような気持ちになってきて。

真樹がキョウダイ化計画を進めようとした理由。
そして、知ることのなかった涼の気持ち。

「ガンバレわたし」でなく、ふたりがお互いのこころを知りあっていれば、どんな結末になったんでしょうか。

読後、久々にいろいろ考えさせられた本。

けっきょく私には、いくら考えてもこのふたりが幸せな「キョウダイ」になっている姿なんて、欠片も想像できませんでした。

小林光恵 『限りなくキョウダイに近いフウフ』 幻冬舎文庫
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みさき速 『殺戮姫』

殺戮姫 (少年チャンピオン・コミックス)殺戮姫 (少年チャンピオン・コミックス)
(2008/01/08)
みさき 速

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「信じてみませんか。わるいことをすれば天罰が下る」

『アクメツ』なんかにも似た、前から時折見かける『私刑』系のマンガ。(デスノートも「私刑」というテーマは似ているけれど、これらとは違うもの)

人間の悪意を感じ取ったとき、大量殺人鬼へと変貌する森川ルウ。
対して、それを抑えることのできる主人公・王子。

正直言って、なにをどう考えたらいいのかわからなくなる。

捕まらない、または捕まっても法の下では裁かれない、人間であるのかも怪しいような、残虐な犯罪者たち。

「たとえ犯罪者でも、やっぱり殺してはいけない」なんて、私はけして断言できない。

けれど答えなんて、自分の中だけであってもそう簡単に出てこない。

自らの快楽のためだけに人を殺し、けれど真実とはかけ離れた罪状で軽い罰を受け短期間で出所。また殺人を繰り返そうとする男の出てくる話。
男を殺そうとする被害者の夫に、王子がかけた言葉。

「あなたがここであの男を殺してしまったら、もう二度と笑って奥さんを思い出す事はできなくなる」

人が人を殺すって、いったい何なんでしょう。

ちなみに物語は1巻完結で、ルウが何者なのか、という最大の謎については最後までほとんど触れられていません。

尻切れとんぼな感じがどうしても残りますが、それでも一読の価値はあると思います。
(作品中での残酷描写は、わりと控えめな方です)

みさき速 『殺戮姫』 少年チャンピオンコミックス
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久世番子 大崎梢 『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ(1)』(1~続刊)

配達あかずきん (WINGS COMICS 成風堂書店事件メモ 1)配達あかずきん (WINGS COMICS 成風堂書店事件メモ 1)
(2008/02)
久世 番子、大崎 梢 他

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久々の大ヒット作!!
こんなおもしろいマンガがあったんだ!!って感激しました。
その名も、

久世番子・画 大崎梢・原作 配達あかずきん 成風堂書店事件メモ(1) WINGS COMIKS

本屋の謎は本屋さんが解かなきゃ!
しっかり者の書店員・杏子さんと
勘の良い学生バイト・多絵ちゃんが、
成風堂で起こる謎を解き明かす!!(裏表紙より)


全体的にほのぼの、けれど時折はらはらスリリング。
加納朋子さん作品が好きなひと、そうでなくても本好きなひとなら確実にはまります。
絵の方も、とってもきれいですし。

病気で入院してたひとが、入院中の自分に本を選んでくれたひとを探す話が1番好きです。
「宙の旅」なんか、実際に読んでみたくなりました。
加納朋子さんの「てるてるあした」を読んだときもそうだったけど、
「本って良いな」って、こころの底から思った。

じつはこの本、とあるひとからの紹介本なのです。
この場を借りてあらためて。

こんな素敵な本に会わせてくれて、本当にありがとうございました!
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絲山秋子 『イッツ・オンリー・トーク』

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)
(2006/05)
絲山 秋子

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1日ぶり。みなさまどうもです、月見です。

昨日は朝1番午後半ばまでバイトした後、1日くさくさしてました。よーするにひとりで凹んでたんです。
1日凹んでたら、なんかバカらしくなって止めました。
自分イジメより、まず打開策を探しなさい、というわけで。

そんな月見さん、くさくさした気分をまだまだ引きずりながら、未読本の山から朝からテキト-に1冊本を取りだし読み出し、すんげーはまってしまいました。

絲山秋子 『イッツ・オンリー・トーク』 文春文庫

絲山さんの作品は、前に「袋小路の男」というのを読んで「あーこのひとの本好きかもだなー」とか思ってたんですが。

今回はものすげーはまってしまいました。すげー、なんだこの本?!
まずはあらすじをご紹介。 2作品収録の短編集です。

イッツ・オンリー・トーク・・・
橘優子は蒲田に住んでる元記者の売れない画家で、おまけに躁鬱で、ついでに引越しの朝にみっともない男にふられた。
そんな彼女の周りの男たち、ED(勃起障害)の議員、痴漢、自殺未遂のヒモいとこ、鬱病のやくざ、気味の悪いバッハ、そして自殺した女友達。
全てはイッツ・オンリー・トーク。ムダ話。

第七障害・・・
「早坂順子は馬を殺したことをいつまでも苦にしていた」
競技中の第七障害で、人馬転の末に1頭の馬が安楽死させられた。
早坂順子は自責の念から逃れられないでいた。
馬からも、男からも、群馬からも逃げてしまった。
わたしはいったいどこにいくのだろう・・・。

まずオンリートークから。

最初読み始めたとき、「やばい、あんまり好きじゃないかも」と思って、止めようかと思った。

今思えば、こんな文章にはじめて触れて、動揺してたんだろううなと。
それくらい、びっくりした。
どこまでもけだるそうなくせに、なんでこんなにキリッとして格好良いんだろう。
橘優子も、絲山秋子さんの書く文章も。
ていうかなぜこんなに「痴漢」(という、この話に出てくる男)が魅力的なんだ?!
そう思ってしまう自分が理解できない。
けどまずい、男女問わず、この男にゃマジではまりそうだ。

解説でも触れられてたけど、一番好きな文章を抜粋。↓

「私が自分の醜さを恥じる必要はなかった。彼を愛する必要もなかった。なぜなら彼は恋人ではなく痴漢なのだから」

この文章を見てちょっとでも気になったひとは、迷わず読むべし。

次、第七障害。

こちらはオンリートークに比べれば控えめな話。けど、けっこう好きな話でもある。
特にこんな一文。

「なにもかも中途半端にしてしまった。納得することさえも否定した。逃げれば逃げるほど、自分が許せなくなった」

なんていうか。間接的にたたきのめされた気分。

どーすればいい?は、そろそろどうしていこうか。に変えるべきだよな、こんなうじうじザコ虫な私でも。
なんてなことを考えて。

疲れてたまにはだらだら愚痴垂れ流すのも大事。

ついでに垂れ流したものを後で眺めて、ムダ話さって笑い飛ばすのもいい。というより、すんげー憧れる。

それはたぶん、そこから逃げなければだれにでもできること。
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小川洋子 『薬指の標本』

薬指の標本 (新潮文庫)薬指の標本 (新潮文庫)
(1997/12)
小川 洋子

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今回は今までとはまた、少しちがった作品をご紹介。
というより、昨日再読した本の紹介です。

小川洋子 薬指の標本 新潮文庫

2作品収録の短編集。

薬指の標本・・・
勤めていた工場で薬指の先を切断されたわたしは、標本技術士・弟子丸氏の標本室で働き始める。
標本室を訪れるひとはみな、それぞれの思い出の品を標本にして封じ込めてもらう。
ある日わたしは、弟子丸氏から1足の黒い革靴をプレゼントされた。
「これからは毎日その靴をはいてほしい」という弟子丸氏。
その靴はわたしの足にあまりにぴったりで、けれど次第に、靴はわたしの足を侵し始めて・・・。

六角形の部屋・・・
「どうして自分が彼女の存在に気づいてしまったのか、今思い返してみても不思議でしかたない」
スポーツクラブの片隅にひっそりと腰掛けたミドリさんは、ある夜中に林の中へと消えて行った。
後をつけたわたしが辿り着いたのは、カタリコベヤと呼ばれる、六角形の部屋。
そこは訪れた人々が、自分の語りたい事をだれにも聞かれずに望むまま、語るための場所だった。

小川洋子さんの作品は「博士の愛した数式」を含めて何冊も読んでいるのですが。

この作品が一番好き、というより虜になりました。

小川洋子さんの世界の、真骨頂。

どこまでも静かで、どこかで奇妙で、やがて物語の主人公のように、二度と抜け出せなくなる。

表題作、「薬指の標本」が、フランスで映画化されたという話を聞きました。
ぜひ、この世界を映象で見てみたいです。

以下、追記。(4月1日)

>拍手をくださった方
本当にありがとうございます!
今更ですが、すごく励みになりました。(^^)v
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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