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Author:月見
マンガと小説と、天野月子さまとCoccoさまの楽曲を何より好む大学生。その日の気分に合わせた本を紹介してます。拍手、コメント、リンク大歓迎。飛びあがって喜びます。

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三浦しをん 『むかしのはなし』
むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)むかしのはなし (幻冬舎文庫 み 12-1)
(2008/02)
三浦 しをん

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画面に緊急速報のテロップが出ていて、「明日正午、日本政府から国民に向けて重大発表があるもよう。テレビ、ラジオをつけるようにしてください」と言った。(『入江は緑』)

今の日本で「昔話」が生まれるとしたら?
3ヵ月後に隕石が衝突するという状況に置かれたひとたちの日常生活。
7つの書き下ろし中・短編集。それぞれの(今の)物語が昔話とリンクしてるという、月並みだけど「すげーなこれ」って口に出さずにはいられない一作。

おおざっぱにあらすじを紹介すると、

「ラブレス」(かぐや姫)・・・
祖父、父と、27歳で死んだ。そして27歳の俺は今、やくざに追われて港で最後のメールを打っている。

「ロケットの思い出」(花咲か爺)・・・
空き巣の「俺」が刑事に語るむかしばなし。高校の同級生、犬山とのおかしな顛末。

ディスタンス(天女の羽衣)・・・
「パパの年の離れた弟」の鉄八とのことを、カウンセラーに話す「あたし」。
鉄八は「あたし」から離れていく。それでも・・・。

入り江は緑(浦島太郎)・・・
五年ぶりに島へ帰ってきた修ちゃんと、修ちゃんを連れて行くというカメちゃん。やがて「重大発表」を聞いた「ぼく」は、カメちゃんの言葉の意味を知る。

たどりつくまで(鉢かづき)・・・
タクシー運転手の「私」が、観葉植物に報告するためにつける日記。
「今夜は、少し変わったお客さんを乗せた」。

(猿婿入り)・・・
「どうして私、こんな男と結婚しちゃったんだろう」。
やさしいけど、なんて不気味な愛情。

懐かしき川べりの物語せよ(桃太郎)・・・
みんなに恐れられるモモちゃんと、友人有馬と宇田さんと「僕」。
「長生きしたいなぁ」って、ある日突然モモちゃんは言ったことがある。

リンクしてるって感覚だけ感じられれば、あとはそれ以上踏み込まず、そのまますんなり物語に入り込んだほうが、きっとおもしろく読める気がする。
むかし一度単行本で読んだとき、「今の話」と「昔話」のどこが具体的にリンクしてるのかいちいち確かめながら読んでたらまったく読めなかったので。

それにしても、エッセイと小説の、このギャップはなんだろう。こういうのを天才肌とかいうのか。うむむ、って偉そうな評論家みたいにうなりたくなるんだけど。(どちらともすごく素敵でおもしろいんですが)

「×ヶ月後(近い未来)に地球が終わる」という設定ってよく聞く気がするけれど、これはその中でも一癖ありそうな1冊。おすすめです。

三浦しをん 『むかしのはなし』 幻冬舎文庫

三浦しをん | 11:11:17 | Trackback(0) | Comments(0)
江國香織 『つめたいよるに』
つめたいよるに (新潮文庫)つめたいよるに (新潮文庫)
(1996/05)
江國 香織

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デュークが死んだ。
私のデュークが死んでしまった。
(『デューク』より)

飼い犬を失った女性が不思議な男の子と会う不思議な1日 『デューク』他、
デビュー作 『桃子』、はないちもんめ小さな童話賞大賞受賞作『草之丞の話』など、
初期の短編物語21作品を収録した短編集。

子供たちとか、恋人とか夫婦の話が多い。

たとえば、青屋根の窓の『鬼ばばあ』や、おかしくて少し不気味な『夜の子供たち』に、可愛く強かな『子供たちの晩餐』。

蠱惑的な幼女と修行僧の(一種猟奇的な)結末『桃子』、かつての家で口に入れる『さくらんぼパイ』、クリスマスのコンビニでの小さな物語『とくべつな早朝』。

守り続けてきた『草之丞の話』、遠いさよならを告げる『いつか、ずっと昔』、幸福なドアが閉まる『スイート・ラバーズ』や、素敵でおかしな奥さんの『朱塗りの三段重』。

江國香織というひとがひとり凝縮されてるような1冊。
読んでると、根拠もないのにそんなふうに感じる。
不思議でどこか曖昧で、いたずらっぽくて不気味で、時折孤独で温かく、けれど切なく愛おしいような。

そういいつつ、私がとくに大好きなのは『ねぎを刻む』と『コスモスの庭』と、それからもちろん『デューク』なんだけれど。

あと、『スイート・ラバーズ』は婚約者のいる友達に、ちょっと贈りたくなった。

最後に、解説よりこれは、と思った部分(というか最後の2文なのですが)を抜粋。

テーマなどという大仰なものはどうでもいい。江國さんは、ただ自分の好きな懐かしい風景を静かに描いていく。
だから「夏の少し前」の洋子の言葉が胸を打つのである。「私、ずっとながいこと、こんな光にあこがれていたような気がします」。


江國香織 『つめたいよるに』 新潮文庫


江國香織 | 10:39:13 | Trackback(0) | Comments(0)