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マンガと小説と、天野月子さまとCoccoさまの楽曲を何より好む大学生。その日の気分に合わせた本を紹介してます。拍手、コメント、リンク大歓迎。飛びあがって喜びます。

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豊島ミホ 『底辺女子高生』
底辺女子高生 (幻冬舎文庫)底辺女子高生 (幻冬舎文庫)
(2006/08)
豊島 ミホ

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むやみに「もっともっと」と思ってばかりいたことを、遠いものだと思う時はいつか来る。それは確信だった。

作家の豊島ミホさんが、ホロ苦にして「底辺」だった高校時代をつづったエッセイ集。
ところどころに自筆のイラスト(これがすげー上手い)つき。

そのころ豊島さん作品を2,3冊読んですっかりにわかファンになっていた私は、「あんなに素敵な物語を書くひとなのだから、きっと高校時代もすごいエピソード満載だったんだろーな」って勝手に思いながら読み始めたのですが。

正直言って、ものすごく地味。豊島さんの高校時代=『檸檬のころ』、って言ってもいいくらい。(すんげー乱暴な説明ですが)

たしかに秋田から1200km離れた大阪までの家出、それからのおよそ2週間の家出旅行だとか、寮内恋愛厳禁!という掟の徹底のあまり、異性を見たら虫と思え!状態にまでなっている下宿生活とか、私には経験のない、けっこう破天荒なエピソードだって並んでいるのですが。

けれど基本は「出し物は缶つみ。盛り下がりまくりの学際」だとか「教室のみんなから底辺扱いされた学校生活」だとか、「ゲーム三昧の夏休み」といったエピソードの数々で、なんていうか取り立てて特別目立つような出来事なんて起こりはしない。
強いて言えば、教室内で一番下に見られる「底辺」の立場と、「保健室登校の常連さんたちと過ごす毎日」とか「最低45回くらいとった赤点」とか、ラストの「みんなから遅れた、1人だけの卒業式」くらい。だからといって、けして退屈はしないけれど。

普段豊島さんの書く物語は、「何でもない毎日の愛おしさ」みたいなものがたくさんつまってる気がするけれど、このエッセイを読んで思い出すのは、「特別でも何でもない私の、どーしょーもないみっともなさ」とでもいうか。そんな自分へ未来の豊島さんが放つ、冷静な洞察&ツッコミがテンポよく繰り出され、その辺りはむしろけっこう笑えるくらい。
むかしの自分を思い出しながら、「ほっぺのあたりが痒くなる」って書いてる豊島さんの姿が目に浮かぶようで、なんだかこっちまで「くくく」って笑ってしまう。
(「保健室登校」のくだりも、似たようなことしてた私はちょっと懐かしかったし。まー私のは保健室でなく完全に「空き部屋登校」で、最初の高校はすったもんだの末、けっきょく辞めてしまったんですが)

けれど、こんな気持ちは何も豊島さんに限ったことではなく。
たぶんほとんどのひとが多かれ少なかれ、似たような思いを抱えてるんじゃないかなって、思う。

だからひとつひとつの何でもないようなエピソードとか、あとがきの豊島さんのこんな言葉だって、けして特別でなく、むしろすごく身近で親しみたっぷりの言葉になる。

読み返すと、こんなにたくさんのひとがやさしくかまってくれたんだなあとびっくりするけれど、当時の私はその幸福がわからないくらい自分にいっぱいいっぱいだった。もちろん、そういう足元の幸せに気付いてくださいなんてメッセージを送りたいわけじゃなくて、私が言いたいのは、こんなに目の前が見えないくらいあっぷあっぷしていても、いつかはどうにかなるってことです。

でも、ここでいくら調子のいいことを書いたって、五年後の私はやっぱり自分の高校時代をよく思っていないかもしれません。状況が悪くなれば、「全然大丈夫じゃねーよ!」と思うこともあるでしょう。それでも、こういう安定した時期に、自分がみじめでしょうがなかった高校時代をまとめられたことは幸福だと思います。



「普通を輝かす達人」(『檸檬のころ』 解説より)、豊島ミホさんの原点は、ここに書かれた地味で、おまけに底辺な高校生活だったのかも。
なんて考えながら読むと、すごく不思議な気持ちがします。

もちろんそんなことは考えずに、1冊のエッセイ集としてもとってもおもしろく読めますので、豊島さん作品未読の方にも、オススメです。

豊島ミホ 『底辺女子高生』 幻冬舎文庫

豊島ミホ | 15:38:48 | Trackback(0) | Comments(0)