投稿日:2008-04-22 Tue
![]() | イニシエーション・ラブ (文春文庫 い 66-1) (2007/04) 乾 くるみ 商品詳細を見る |
望月がその晩、四人目として誰を呼ぶ予定だったのか知らないが、僕はそいつに一生分の感謝を捧げなければならないだろう。
そいつがドタキャンしてくれたおかげで、僕は彼女と出会えたのだから。
見ず知らずのだれかがドタキャンしてくれた合コンの席で、「僕」は彼女に出会った。
男の子みたいなショートカットに、いつもニコニコとしているような顔立ちは、ファニーフェイスとでも言うのか。美人ではないけれどとにかく愛嬌のある彼女、「成岡繭子」に、「僕」は初めて、一目惚れしてしまったのだ。
ところがおそろしく奥手の「僕」は、そんな彼女になかなか近づくことが出来ない。けれど待ち望んだ瞬間は、ある日唐突にやってきて・・・・・・。
ありふれた青春(恋愛)小説かと思えば、最後の2行でまったくちがう物語に変貌する、「必ず二回読みたくなる」極上のミステリー小説。
前後編にわかれているのだけれど、どちらも「僕」と「マユ」の恋物語。
知らないひと同士が知り合って好き合って、やがて幸せの絶頂を迎えたり、ときに不穏な気配をただよわせたり、決定的な出来事が起こったり。
それはたしかに「甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説」(裏表紙より)。
なんだけれど、ずっと読んでるとはっきり言って退屈だった。
本人たちにしてみれば大事なんだろーけれど、所詮は他人事。とりたてて見せ場となるような展開もなければ、特に何かを考えさせられる、というような場面もない。
恋人同士のふたりが、ときどき崩れそうになりながらも仲良く過ごすっていう、ありふれていて単調な物語が終盤まで延々と続く。(じっさいには終盤で、ふたりの間にある決定的な出来事が起こるのだけれど、それだって「型どおりの展開」の範囲内だと思う。)
ラスト2行ラスト2行って、今さら何を変貌させるっていうのさ?
あんまり単調なので、ついついそんな愚痴も言いたくなってくるけれど、それでも「普通の恋愛小説」とわりきって読んでしまえばそこそこおもしろいので、ちびちびと読み進める。
そんな中、ついに「ラストから2行」に到達。
一瞬、何がなんだかわかならかった。
混乱する頭でようやく気づいて、あまりの急展開(というか変貌)に「はあああ?!」とか何とか、夜中に叫んでしまった(気がする)。
あわてて始めからからパラパラ読み返してみれば、いたるところに(ときにはかなりあからさまなまでの)伏線が張り巡らされてたと気が付くんだけれど。
私は一度読み終わるまでぜんぜん気づかず、だから最後の2行でほとんどショック状態になっちまったというわけ。やばい、ちょっと悔しい・・・・・・。
でもわからなかったから、そのぶんよけいにこの物語を最後の最後に楽しめたと思う(負け惜しみかもしれないけど)。
絶対なんて言葉はないんだよ・・・・・・。
この言葉は本編中からの抜粋。
結末に直接関わるような言葉ではないのだけれど、でもあまりにも暗示的だと思って、読後読み返してちょっとぞっとした。
ただ、私は繭子のことをそんなに嫌いな女とは思えない。
本編中の繭子がすべて「僕」の視点から語られているせいなのかもしれないけれど、私が「僕」だったら、たぶんこの女を好きになったんだろうなと思う。
この本を「ミステリー小説」と読めるかはどうかは、ド素人の私にはてんでわからないけれど、これってかなりすごい小説だな、っていうのは読み終えたとき心底思った。
いろんなひとに読んでもらって、感想を聞いて回りたくなる本。
というわけで未読の方、ぜひご一読を。そしてついでに感想など聞かせてもらえれば、なんて思います。
乾くるみ 『イニシエーション・ラブ』 文春文庫
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