投稿日:2008-05-03 Sat
![]() | ともだち刑 (講談社文庫 あ 95-2) (2008/04/15) 雨宮 処凛 商品詳細を見る |
笑われる私はいつもぽかんとした顔をして、次の瞬間、必死で笑顔を作る。だけどその笑顔は、あなたの「笑ってんじゃねぇよ!」という言葉で凍りつく。どんな顔をすればいいのかわからなくて、私は顔の筋肉の震えを必死で堪える。必死で笑うことよりも、笑うことすらできないことの方がよっぽど辛いということを、私は初めて知った。
「今日のテーマは『暖かい』と『冷たい』です」
美大予備校で「お手本」を模写せずに「本当の絵」を描いた私。
けれど講師は酷評することもなく私の絵を無視してのけ、そんな私の耳に響くのは聞こえないはずの笑い声。そして私は思い返す。
中学のバレー部に遅れて入部してきた、芸能人のような憧れの「あなた」。
その「あなた」から、そしてともだちだったみんなから、かつての私が受けた壮絶な痛みの記憶。
(以下、内容についての具体的な記述が入ります。ネタばれはありませんが、少しでも気持ちに影響を受けそうだと思ったなら、これから先を読むか一度考えてから読んでください)
雨宮さんの本は、自伝「生き地獄天国」と「すごい生き方」に続く3冊目。
物語を読むのは初めてだけど、やっぱり雨宮さんの本は死に物狂い。
こんな物語は、たぶん雨宮さんにしか書けないと思う。
バレーが下手な私と、ぐんぐん上達する「あなた」。
トスを外してばかりの私と組んだ「あなた」の顔から、徐々に笑顔が消えていく。
「集団競技の中である程度下手なやつがいじめられるのは仕方ない」と書いていた有名なマニュアル本があった。
仕方ないなんて言葉で済ましてもらいたくはないけれど、実際問題そういう状況ができあがってしまうのは必然なのかもしれない。
心の中で何かを言語化してしまいそうになるたびに、慌ててその言葉を打ち消した。違う違う違う、全然そういうんじゃなくて。あなたは私にバレーが上手くなって欲しいだけ。友達だから。仲間だから。それにきっと、あなたには私が想像もつかないような辛く苦しいことがあって、その気持ちを紛らわせるために私に甘えているだけ。私に心を許しているから。私にしか心を許せる人がいないから。そうして急いで心の中で歌を歌うのだ。
これがすべて、これが正しいなんて言うことはもちろんできない。
けれど現実に生まれる感情のひとつのかたちが、確実にここにある。
「人を選ぶ本」なのではなく、「人が選んで読む」本。
くどいけれど読んでるとものすごく憂鬱になるし、私も読んでてつまんねーことをいろいろ思い出してかなりブルーになってしまった。
ぼかした展開、うわべだけのハッピーエンドなんてごまかしは一切なしなので、調子の悪いときに読むのは絶対NG。というか厳禁。
けど余力のあるときになら、読んで本当ににじっくりと考えさせられる。
読めるひとになら、一人でも多くのひとに読んでほしい本。
雨宮処凛 『ともだち刑』 講談社文庫
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