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中島京子 『ココ・マッカリーナの机』

ココ・マッカリーナの机 (集英社文庫)ココ・マッカリーナの机 (集英社文庫)
(2006/04)
中島 京子

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正直な話、行く先なんてどこでもよかった。
要するに私は、人生を変えたかったのだ。
(「はじめに」より)

雑誌編集者を途中退職し、32歳で渡米した、ミス・キョウコ。
お互いの国の文化を紹介する教師交換プログラムの教育実習生。
アメリカは、ワシントン州、ブレマートンの、ピース・ルテラン・スクール。
ニンジャ、折り紙、俳句、やきそば、ヒロシマ。
下は3歳、上は14歳までのコドモたち150人と過ごした時間が、ミス・キョウコの中の何かを変えてゆき・・・・・・・。

注目作家・中島京子の「作家以前の日々」。

前に読んだ小説「さようなら、コタツ」もそうだったけれど、中島さんの本は本当に隅から隅まで味わいがあって、なんだかとても好きになってしまう。

ティーン向け雑誌の編集者をしていたけれど、とある占い師さんの言葉に後押しされて退職を決意。
(←こう書くとドラマみたいだけど、ホントの話)

うーん、私にはできねーな、って思う。正直。

けれど中島さんは本当に渡米し、ココ・マッカリーナ(三歳児クラスの舌足らずな発音「ミス・キョウコ → ミス・ココ」と、四歳児クラスの不明瞭な発音「ミス・マカジナ → マッカジーナ → マッカリーナ」の混じってできたニックネーム)として、150人のコドモたちに日本の文化を伝える役割を担うことになる。

がちがちの英語で「ペリー提督と日本のサムライ」のエピソードを紹介し、一茶の俳句や、折り紙で折る手裏剣、ときにはみんなでやきそばをつくって食べたりして、「ココ・マッカリーナ」先生はだんだんとスクールに溶け込んでゆく。

そんな「あの頃」が、中島さんの丁寧で、あたたかな愛おしさと、親しみたっぷりのユーモアの詰まった文章から伝わってきて、やっぱりここでも極上の時間。

今してること、それは「これだ!」と思って始めたり、懸命に求めたりしているもの。
それでも自信がなかったり、本心でもないのに放り出したくなったときには、この本を思い出すんだろうなって予感がする。
 
読んで人生変わるようなことはないだろーけど、私的にはすごく読み心地のよい本。
すっきりしていて、さくさくとおかしくて、それでもところどころが上手くいかないときもあって、けれどもそこから生まれてくることは大きくてやさしくて、けれどそれを押し付けず、のんびりゆっくり味わえる。

「元気になれる」とは少しちがうけど、なんか力をくれそうな本。

オススメです。

中島京子 『ココ・マッカリーナの机』 集英社文庫
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よしながふみ 『愛がなくても喰ってゆけます。』

愛がなくても喰ってゆけます。愛がなくても喰ってゆけます。
(2005/04/16)
よしなが ふみ

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自分がウマイと思ったものを
人もウマイと言ってくれる時
Yながの至福の時である。
 (menu♯2より)

BL漫画家、31歳のYながFみと、同居人にしてダメアシスタントのS原コンビが中心になってお届けする、抱腹絶倒、東京グルメ料理集。

先輩と遊びに行った本屋で見つけてしまい、買おうかどうかさんざん迷ったあげく「まーよしながさんのマンガなら、そうそう間違いはあるまい」とけっきょく購入。

結果。
やっぱりよしながさんのマンガ(食べ物系に限り)、ものすげー好きです、私。

イタリアン絶品パスタにぐつぐつ煮込んだ韓国料理、飲茶をはさんでチョコレートショップのチョコレートパフェ&ホットチョコ!(←私的に1番食べたかったもの)
まんなかがへそになったもちもちベーグルに、シャクリと美味しいみそダレ生春巻き!

とにかく一品一品の料理が、ものすごく美味しそう!
マンガなのになんでこんなに食欲がわくんだろって不思議なくらい、とにかく美味そう。
食べ物のここぞ!って特徴をぐっとつかんで、ホントに美味しいんだよこれ!!って笑う、Yながさんの意気込みが伝わってくる。

あたし 仕事する時と寝てる時以外はほぼ四六時中食い物の事を考えて生きてんのね
てゆーか 仕事によっては仕事してる時も食い物のことを考えてんのね

あたしがこんだけ食い物に人生捧げてきたんだから
食い物の方だってあたしに少しは何かを返してくれたっていいと思うの


アシスタントのひとに、「どうしたらそんなに美味しい店を見つけられるの?」と聞かれて言った答えがこれ。・・・・・・なんつーか、・・・究極だな、って思った。

普通に食べたらふたりで六千円の店で、ふたりで一万三千円食べてしまったり(Yながさんの連れのひともまた、すごいひとだったりする)、自分のオススメの店を「変な味」と言った恋人と破局したり。
「まちがいなく食い物に関しては異常者」なYながさんだけど、本音を言えばそのくらいの意気込み持ってるひとじゃないと、読んでるこっちは楽しくなれない。

でもまー、なんか食べ物にたいして淡白なひとって、私も仲良くなれる気がしないんだけど。

ところでこの本の見所はもちろん「美味しい食べ物」のひと言につきるんだけど、
もうひとつ、Yながさんと愉快な仲間たちの爆笑食い倒れ(?)ライフも必見。

完全同居人にして毒舌ダメアシスタントのS原さんはじめ、マダムだらけのフランス料理屋でひとりでふらっとランチを食べるF山さん(←男性)に、バイセクシャルだったけどより風当たりの強いほうに宗旨を統一しようとゲイになったA籐さん、いつもアンニュイ、食べても食べても太らない(羨ましい)O田N子さん等々、Yながさんの周りは超個性派メンバーがどっさり。

これでおもしろくないわけがない!(力説)

有名どころの「きのう何食べた?」が気に入ってるひと、ちょっとでも気になってる人なら絶対オススメ!ギャグ要素が多いぶん、むしろ私はこっちのほうが好きです。

ちなみに冒頭に引用した「自分がウマイって思ったものを人もウマイと言ってくれる時~」って文章。
これってそのまんま本にも言えることで、私はホントにそんな理由でこーやってちまちまブログ更新なんかをやってるんだけど。

そんな感じでだれかひとりにでも楽しんでもらえたら、それこそ至福だな、なんて思ってる私。・・・なんてね。

よしながふみ 『愛がなくても喰ってゆけます。』 太田出版
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草野たき 『ハーフ』

ハーフ (ピュアフル文庫 く 1-1)ハーフ (ピュアフル文庫 く 1-1)
(2008/03/10)
草野 たき

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ぼくの母親の名前は、ヨウコという。
ぼくは小さいときから、ヨウコが母親だと教えられてきた。
ヨウコは、茶色い毛並みのきれいな、犬だった。


ありえねーよ!なんて斜に構えて読んでたら、いつのまにか涙目状態。
こんな物語久しぶり。不思議でやさしい、家族のお話。

父さんは四十六歳の、典型的なサラリーマン。
対するヨウコは、どこから見ても、茶色い毛並みの雑種のメス犬。
父さんが川原のダンボールに捨てられていたヨウコをナンパし、ヨウコも父さんを好きになってふたりは結婚。そして生まれたのが、ぼくだというのだ。

もちろん、ぼくはそれが普通のことじゃないってことにとっくに気づいている。
けれどじつは、この暮らしもぼくはけっこう好きだったりする。

父さんは父親としても主夫としてもパーフェクトだし、ヨウコは父さんもぼくも大好きでいてくれる。
朝は出勤前に父さんがヨウコを散歩に連れて行き、夕方はぼくがヨウコを散歩に連れて行く。
そしてヨウコと散歩に来た川原で、ぼくはホントのお母さんを内心こっそり探している。
会いたい人にはいつも会えなくて、会いたくないやつにばかりあってしまうのだけど。

平凡で、けれど不思議で穏やかな毎日。
もっとシアワセな暮らしがあってもかまわないし、期待もしているけれど、ぼくはこのくらしをとても気に入っている。
けれどそんな中、大事件が起こった。
ある朝、突然ヨウコがいなくなってしまったのだ!

読み始めは少しとまどっていたけど、そのうち慣れてきて、「あーこんな家族もあっていいかもねー」なんて、ほんわかしながら読んだ。
なんたって「父さんとぼくを心配した」おばさんのお小言訪問を除けば、それはそれは暖かい毎日。
父さんとぼくとヨウコ。
みんなみんなお互いが大好きで、父さんはヨウコを愛していて、そんな3にん家族で毎日暮らす。
からかわれることもあるけれど、それは小さくて、ちょっと不思議なシアワセ。

けれどそんな中、ある日突然ヨウコがいなくなってしまう。
すっかり弱々しくなった父さん。
そんな父さんに苛立ち、鋭い本音をぶつけてしまうぼくなのだけれど、そんなことをしてももちろんヨウコは戻ってこない。
そんな中、ぼくはひとつの決心をする。

いったい、家族って、なんだろう。 (金原瑞人・解説より)

ありえない、じつはとんでもなくきつい内容の物語なのだけれど、そこから考えさせられることはとてもとても多く大きく。

きれいできびしく、とびきりやさしい、とある3人家族の物語。
人を選びそうな本だけど、どうかいろんなひとに読んでほしいなと思う。

こんな素敵な家族、そんなにいやしないよって、
私はそう思うから。

草野たき 『ハーフ』 ピュアフル文庫
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中島京子 『さようなら、コタツ』

さようなら、コタツ (集英社文庫 (な41-2))さようなら、コタツ (集英社文庫 (な41-2))
(2007/10)
中島 京子

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この短編集には、老人が暮らす部屋も、子どものいる家も、独身女性のマンションも、結婚間近の男が住むアパートも出てくる。
部屋の数だけ人生はある。(部屋のない人の人生というのもあるけれども)
だからこの短編集の裏タイトルは

へやのなか

である。
 (「へやのなか(短いまえがき)」より)

初めて読んだ中島京子さん作品。
「卓越したユーモアで描く傑作短編集」というのが売り文句なのだけれど、まさに傑作!
7つのちょっとおかしな部屋物語。まとめて楽しめて、読んでる間、ずっとすんごくいい時間だった。

ハッピー・アニバーサリー・・・
由香里と園子は、ふたりで手がけた仕事の一年目、アニバーサリーの夜を楽しくすごすはずだった。
けれど部屋に帰れば、母に鍵を持たされた、由香里の六十八歳の父、松田清造が、好物・大須磨の幕の内弁当片手にすっかりできあがっていて・・・・・・。
記念すべきアニバーサリーの夜を、なぜだか六十八歳の父親を間にすごすことになった、ヘンテコな夜の小話。

せっかくのふたりの記念日に乱入してきた、娘想いの父親。
迷惑だけど憎めない父・松田清造に、その松田清造の買ってきた、べつにどうってことない幕の内とか。なさけないような小品がかもす空気が、じんわりとおかしい。
なんだかなーとは思いながら、ほんとにおかしくて、ついつい笑ってしまった。ものすごく好きな空気。

さようなら、コタツ・・・
さようなら、コタツ。
十五年間使っていたコタツを捨てた、梨崎由起子。
あれがあった十五年間、部屋では何も起こらなかった。
けれど今日はちがう。なぜなら、今夜は十五年ぶりに、この部屋に男(恋人未満)が来るのだ!

ヤバイ。この話、私ものすごく好きだ。
甲斐甲斐しいというか変なところで必死というか、とにかく由起子はやってくる男(恋人未満)のために数々の料理を手作りし、はてや新品のベッドまで用意して待っているのに、肝心の男が来ない!
約束の時間はすぎている。暖めたラザニアだって冷めはじめている。
さあこれで、はたして男(恋人未満)はやってくるのか!?

けっきょくどーなるんだろ、って思ってたら、可もなく不可もなくの落ち着き方でなんかほっとした。
この落ち着き方。可もなくなんて書いたけど、読み返すとじつはすんごく絶妙。すげえな。

インタビュー・・・
高台にあるその家の持ち主は高岡恭平というイラストレーター。
そこを訪れたのは(たぶん中年の)カメラマンと、若い女の記者。
気乗りのしない高岡は好きにしてくれとふたりを放任するけれど、記者さんはそうもいかない。
次から次に矢継ぎ早に質問を重ね、仕方なく高岡はひとつひとつに答える。
けれどそのひとつひとつが、密かに高岡の痛みにも似た、とある記憶を思い出させてゆき・・・・・・。

矢継ぎ早インタビューからじわじわと浮かび上がる、ビターテイストの物語。
雰囲気察したら、早めにさっさと退くのが無難。
あんまりうるさいと、これはさすがにキツイかも。

陶器の靴の片割れ・・・
今日もまた夢を見て、夢の中には順子も、カラスのブルートもいた。
もうあれから何年もたっていて、彼女の後に付き合った女性も三人いて、三人目とはもうすぐ結婚までするというのに。

そうこうするうちに婚約者が出かけていって、そのときなぜだか順子さんから連絡が入る。
おまけに彼女が部屋に来るのだけれど、だからって別にどーということもなく。
ゆるゆる流れる、ほんのりした苦みの時間。
たとえばたとえば、なんてことばっかり。わかんないけど、そんなものなのかも。

ダイエット・クイーン・・・
取り残し決定の安アパートの鍋島郁美の部屋。
今日そこには同居人の泰司と隣人の母子と大勢のパキスタン人が詰め込まれてて、部屋からは強烈なカレーの匂いがただよっている。
不思議なご近所食事会。
話は長くなるけれど、説明しよう。どうしてこんなことになったのか。そしてなぜ、この食事会が不思議なのか。
笑えるんだけど、これって意外とシビアな話かもしんない。
ダイエットクイーンを目指す隣の女の子の、その理由。
シビアなんだろーけど、やっぱりヘンテコでおかしい。おかしいけどシビア。
最後まで、どっちつかずの不思議ワールド。

八十畳・・・
時刻は十一時少し過ぎ。部屋の中では大きな腹に巨大な図体をした男たちが、それぞれの場所で寝転がっている。
「戻らないっすね」「すかしたね」「あいつ何日いた?」「三日っす」
相撲部屋から抜け出した十五歳を待ちながら、五人の力士は思い思いに思い始める。
自分のこと、今までのこと、これからのこと。
あの小さな男の子は、どこにいったんだろう?

いなくなった弟子(候補)に思いを馳せながら、八十畳の部屋でつらつら思うそれぞれの時間。
元引きこもり力士、彼女つきのメガネ力士、名もない故郷の外人力士。
淡々として飄々として、つかめないけれどしんみり浸かってしまいたくなる時間があって、なんともいえない心地になる。
何よりも、ここにきて相撲部屋っていうセンスが、抜群に好きだったりする。

私は彼らのやさしい声を聞く・・・
十条のおじさんは、ときどき露子を死んだ大叔母の名前で呼ぶ。
それが記憶の混乱のせいなのか、はたまた単に若くして亡くなった大叔母の名前が呼びたいだけなのか、露子にも、妹・佳子にもぜんぜんわからない。
そういえば、むかしからおじさんはだれかと会話していることがあった。
あれはもしかして、死んだ大叔母、玉枝さんとの会話だったのか。

見様によっては気味の悪い話かもしんないけれど、ここにあるのはふんわりした肌ざわりをした、穏やかでやさしい時間。

「おじさんは惚けてないけど、きっとあたしたちには見えない誰かと話をしてるんだよね」
と、こともなげなセリフが最高に気に入ってしまった。

どっからかやさしい声が聞こえてきそうな、そんな話。

「部屋の数だけ人生はある」。
へやのなか。
7つの部屋に人一人の生きる時間がじんわり横たわっていて、一個一個の物語から、読んでるとじっくりそれを教えてくれる。
なんともいえない、落ち着くような、うれしいような、ほっとするような感覚。
・・・・・・こんな読後感、初めてかもしんない。

ちょっとクセになりそうな、不思議でおかしなクセ物本。オススメです。

中島京子 『さようなら、コタツ』 集英社文庫
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村山早紀 『コンビニたそがれ堂』

コンビニたそがれ堂―街かどの魔法の時間 (ポプラの木かげ)コンビニたそがれ堂―街かどの魔法の時間 (ポプラの木かげ)
(2006/09)
村山 早紀名倉 靖博

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(画像は単行本。読んだのはピュアフル文庫版です)

そのコンビニには
この世で売っている すべてのものが
並んでいて
そうして
この世には売っていないはずのものまでが
なんでもそろっている というのです
 (本文より)

ほんとに素朴なやさしさのつまった一冊。
さらさら読めるのに、読後はしっかりあたたかな気分に。

風早の街。駅前商店街のはずれ。赤い鳥居。
夕暮れ時に人知れず現れる、稲穂のマークの不思議なコンビニ。
名前は"たそがれ堂”。
探し物が必ず見つかる不思議なコンビニ。
そこには銀色の髪で金色の目をしたお兄さんがいて、楽しそうにおでんの鍋をかきまぜている。
そこを訪れたひとたちと、探し物とのやさしい再会を描く、5つの物語。

コンビニたそがれ堂・・・
おでこにケンカの傷跡の残る、硬派でかっこいい小学五年生の雄太は、じつは猫好きでこころ優しい小学五年生。
けれど捨てネコを通じて出会った子の想いを、硬派でいたかった雄太は受けとれず、あの日相手を傷つけてしまったまま。

(おれ、あんないい子を傷つけて、泣かしちまったんだよな・・・・・・)

「自分を殴りつけてやりたい」雄太が出くわしたのは、見知らぬマークの、見知らぬコンビニ。
"たそがれ堂”。
雄太の探し物は、もうけして戻らないはずのものだったのだけれど・・・・・・。

幼い自分がしてしまったことに気づくときには、もう取り返しがつかない。
そんなときはくやしい気持ちでいっぱいになるけれど、そんな気持ちも受け取ってくれる。
思い出はやっぱり、大事な宝物にしていたいと思う。

手をつないで・・・
それは十一月の、ある寒い日のこと。
えりかは夕暮れの街をひとり、涙をためて歩いていました。

おばあちゃんに可愛がってもらえなかったママは、ときどき心がぐるぐるして、それからいつも「ごめんなさい」って謝ってる。
わかっているから、何も言わない。けれどママはある日突然、えりかの大事なリカちゃん人形を捨ててしまい・・・・・・。

この結末、まるで甘い夢物語だっていえるかもしれない。
けれどこんなハッピーエンドだって、ぜったいあっていい。
ふたりいっしょに、ずっと手をつないで、そしてしあわせになれたらいい。

桜の声・・・
「ああ、なあんか、疲れちゃったなあ」
ラジオ局のアナウンサー、桜子。
ラジオで自分の番組を持てて、夢は叶ったはずなのに。
このままでいいんだろうか。そんな思いから抜けられない。
ふと思い出した田舎の桜。
スタジオから見える、公園の桜。
桜の木がまねいた、不思議な不思議なキセキの物語。

本編中の中でも、すごくファンタジー的な物語。
名前もないようなひとりの声が、名前も知らないだれかのこころに届く。
それはときに時を超え、行きつまった今に、キセキを起こす。
一生のうち一度でも、こんな体験が出来たらぜったいシアワセだろーなって、心底思った。

あんず・・・
風早の街の商店街を、一匹の猫が歩いていました。
猫の名前はあんずと言い、あんずは重い病気で、もう自分が長く生きられないと知っていました。
だから最後に、自分を助けてくれた大好きなお兄さんに、人間になってお礼を言いたい。
たとえそれが、自分の命を縮めることになるとしても。

家へと帰るあんずを、たそがれ堂のお兄さんはやさしく送り出す。
とっても小さないとしさと、とっても大きな切なさのつまった物語。

文句なしに、一番のオススメ。この話を読むために、この1冊を買ってもいいくらい。

あるテレビの物語・・・
決してお金持ちではないけれど、みんながみんなを大事に思う、小さくても、しあわせな家族。
七年前に女の子が生まれたときから、テレビはずっと家族。
みんなこのテレビが大好きで、テレビもみんなが大好きでした。

けれどテレビは、もう何も映せなくなりました。もう、お別れの時間。
「もう一度テレビさんに会いたいの」
たそがれ堂を訪れた女の子は、お兄さんにそうお願いして・・・・・・。

今までいろんな物を使って生きてきて、たくさんの物を捨ててきた。
お別れでなく、ただ捨ててしまった。
こんなふうに、物にこころがあったならなんて想像無意味かもしんないけれど、
でもありがとうの気持ちくらい覚えていたい。
それはたぶん、とっても無意味で難しいこと。
けれどずっと、大切にできる気持ちだと思う。

正直、あんまし期待はしてなかった。
よくあるやさしく泣かせ系の語だって思ってた。
けれどこんな素朴でおだやかでやさしくて、じんわり愛しいいい話。

そういう意味で、加納朋子さんの本の読後感に近いかも。
大人のほうが泣いちゃうかも知れない(瀧晴巴・解説より)、5つの素敵な物語。

私はけっきょく、いつのまにか泣きました。4話目の、「あんず」。
とはいえ、どれもほんとに素敵な物語なので、よければぜひ一度、読んでみてください。

村山早紀 『コンビニたそがれ堂』 ピュアフル文庫
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オノ・ナツメ 『TESORO~テゾーロ オノ・ナツメ初期短編集』

オノ・ナツメ短編集TESORO~テゾーロ (IKKI COMICS) (IKKI COMICS) (IKKI COMICS)オノ・ナツメ短編集TESORO~テゾーロ (IKKI COMICS) (IKKI COMICS) (IKKI COMICS)
(2008/05/30)
オノ ナツメ

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あたたかくなるよ
おいで
中で一緒に飲もう

(『FRATELLI DI SANDRO ~サンドロのきょうだい~』より)

『NOT SIMPLE』、『ディスパラ』以来、なんだか久々のオノ・ナツメさん作品。
好きすぎて困るくらい好きなマンガ家さんってのが何人かいて、オノ・ナツメさんはまちがいなくその中のひとり。(あとはとりのなん子さんとか、志村貴子さんとか)
今日たまたま本屋で見つけて、あまりの嬉しさに叫びだしそうになりながらも給料日前の私の財布に現金はなく、走って銀行に駆け込み、わざわざ貯金をおろして購入。
・・・・・・って、んなこたあどーでもいいか。

親子、恋人、仲間、夫婦。
オノ・ナツメが10年間で描きためた、『愛しい14編の“たからもの”』。
どれもこれもまさに極上の短編なのだけれど、今回はそのなかから特に好きな4編を紹介。

お弁当にまつわる3つの短編 2/3・・・
日替わり弁当、父さん弁当、愛妻弁当。
お弁当にまつわる3つの物語の2つ目は、父さんとケンジのふたり暮らしのお家にて。

なんでもケンジの好きな顔のお弁当をつくってくれるお父さん。
保育園のお花見散歩の日、ケンジがお父さんにお願いしたのは、いなくなってしまったママの顔のお弁当。
でもお花見散歩当日、保育園からお父さんに電話がかかってきて・・・・・・。

おそらくは永遠にいなくなってしまったママのことへの、ケンジの恋しい気持ち。
そんなケンジもママも大好きな、やさしいお父さんの何気ない言葉とか。
たった12ページの物語なのに、このやさしさはなんだろ。

電車の中なのにぼろぼろに泣けてきそうになって、ものすごく困った。

イーヴァの記憶・・・
両親の記憶がないイーヴァは、だからいつも両親の記憶を自作して語る。
彼女の親は40年前に死んだ女優だったり、見たこともない作家の父親だったりする。
ある日、広場で演説する野党の首相候補に向かってイーヴァは『お父さん』と叫んだ。
それは真実ではない。
そう知っている、イーヴァの周囲の人たちがとった行動は・・・・・・。

真実とか嘘とか、現実とか過去とか、そんなことはどうでもいい。
イーヴァはほしかったたったひとつの言葉を、やっと手に入れた。
だからもうこれ以上、何を求めようというんだろ。
だったらそれで十分。
前を向いて歩けるにも、それで十分なんだ、きっと。

senza titolo #2・・・
哲学書がすべての教授と、それを見つめる本屋さんの店員さん。
だけどある日、教授は哲学書のコーナーを素通りして・・・・・・。

すこやかというか粋というか、読んでてすごくすっきりする恋物語。
こーいう「うれしい」の感覚って、私はめちゃくちゃ好きだなー。

FRATELLI DI SANDAO ~サンドロのきょうだい~・・・
「モニカって素敵な女性よ ―――男ともめてるとき以外は」

美人で、けれど男運のわるいモニカが実家に帰るのは、決まって男とトラブルがあったときのこと。
けれどせっかく帰った家にいる兄弟はそんな彼女に何の気も払わずに、素通りしてゆく。
けっきょく、ひとりでシーツにくるまって泣くモニカのところへ現れたのは・・・・・・。

この空気。ちょっと『ディスパラ』を思い出した。
オノさんの描く人と人との関りとか距離感って、信じられないくらい絶妙で、あたたか。
14編中、そんなオノさんワールドがごくシンプルに、けれど一番ひろがっているお話。

どれもこれもとってもシンプルな物語。(5話目の、『イーヴァの記憶』は少しちがうけれど)
そんなシンプルなストーリーを、シンプルで軽快で、けれど見えないくらい奥深いような独特の線で描き出す、オノ・ナツメさんの世界観。
ひとつひとつ、ひとりひとり、一瞬一瞬が丁寧で心地よくて切なくて、なんだかもうどうしようもないくらい好きになってしまった。

ちなみに表題の『Tesoro(テゾーロ)』とは、イタリア語で

・宝,宝物
・大切な物(人)
などの意     (表紙背面より)

だそうです。
オノ・ナツメさんの贈る極上のTesoro(テゾーロ)、ブレイクタイムにちょっと受け取ってみませんか。

オノ・ナツメ 『TESORO~テゾーロ オノ・ナツメ初期短編集』 小学館 IKKI COMICS
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平松洋子 『平松洋子の台所』

平松洋子の台所平松洋子の台所
(2001/07)
平松 洋子日置 武晴

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(画像は単行本。実際に読んだのは文庫版です)

「電子レンジ、捨てるよっ」
十年も前のある日のことだ。私は、眉根を寄せて強面をつくり、けれども内心どきどきしているのを押し隠しながら家族の前でこう言い放った。
決めたんだからね、有無は言わせないからね。「家じゅうで最も許容範囲が狭い」この私が宣言するのだから、もはや誰にも止められやしないよ。反対しても無駄というものだよ―――そういう気分をこの短いセリフの中にぎっしりこめたつもりである。
 (「慣らし期間 『鉄瓶』」より)

煎餅入れのガラス瓶に野菜を活け、床には野菜の転がった江戸時代の煮しめ皿。
白い湯アカで覆われた錆び知らずの鉄瓶に、勢いよく米を流せば乾いた音をたてる、ブリキの米びつ。
こころ豊かに暮らすことに、一切の妥協なし。
「暮らしの達人」が贈る、珠玉のエッセイ集。

「ひと目見て、あ、これだ、と思った」

帯に書かれたこのひと言は、そっくりそのまま私の気持ち。
そう、まさに「ひと目見て」、「あ、これだ」と思ってしまって、買い物リスト(給料日の次の日あたりに作る、購入本リスト)にはない本なのについつい衝動買いしてしまったのは先月のこと。

「電子レンジ、捨てるよっ」
って、こんなこと突然言われたら、なにも平松さんのご家族でなくても非難や皮肉のひとつやふたつくらいぶつけたくなるというもの。
でもそこはそれ、達人、平松洋子さんの策には抜かりなし。

一ヶ月、二ヶ月経つと、ぶうぶう言ってたご家族も降参、というか慣れてしまって、小鍋や蒸篭をフル活用。それを見て、ふふふと小躍りする平松さん。
読んで「へー、そんなもんなのかなー」ってほうと思ったけど、案外そんなもんかもしんない。
けれど読んでると、素朴なこんな疑問がわいてきた。

「なんで、そこまでするんだろ」。

平松さん本人も言っているとおり、電子レンジ一台あるほうが、生活するためには何倍も便利なはずなのに。
料理ならともかく、なんで手間隙かけてこんなに道具にこだわるんだろ?

ふと思った素朴な疑問。
けれどずっと読んでると、なんとなく平松さんの返事みたいなものが見えてくるような気がする。
たとえば。

新しい米袋を買い、袋の口を開けて米袋を抱え、米を勢いよくざあーっと米びつに流し入れるときがむしょうに好きだ。ブリキに当たって米が乾いた音をたてる、その音を聞くのも好きだ。この二十五年間、何百回となく繰り返してきた些細な家事だが、しかし、そのたびに自分の暮らしの梁の一部を確かめるような、そんな気分を味わう。 (「知足 ブリキの米びつ」より)

そんな要素を満たしていれば、磁器でも陶器でも漆器でもなんでも―――ところがそんな茶碗においそれと出逢えるはずもなく、それならば、とあえて間に合わせのものでごまかし続けてきたのだった。
だって、ごはんを盛るのだ。生活の基本。生きる糧の受け皿。家族の健康の根っこ。すべての基本を託すごはん茶碗をないがしろにできるはずがない。
 (「わたしのごはん茶碗 根来塗の碗」より)

読んで思わず、ほうとため息が出た。
こんなにも、ひとひとりの想いをこめた暮らし。
ここまで思って道具を使ったことがないのでわからないけれど、暮らしを支えるのは、やっぱりそのひとの想いと、想いのこもった道具なんだろうなって、思った。

とにかく素敵すぎる一冊。
せっかく文庫本になったんだから、みなさん読まなきゃ大損ですよ。

平松洋子 『平松洋子の台所』 新潮文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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