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森絵都 『つきのふね』

つきのふね (角川文庫)つきのふね (角川文庫)
(2005/11/25)
森 絵都

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花や木に憧れるのは、人間がいやになったからじゃない。
あたしは、あたし自身がいやになったんだ。


中学生のさくらは、植物や花が羨ましくてしかたない。
所属してた万引きグループとの確執や、同じグループにいた親友莉利(りり)へ、けしてわざとではないけれど、犯してしまった裏切り。
莉利はさくらを見ようともせず、近くにいるのはそんな離れてしまったふたりを心配して、下手な世話を焼き、あげくふたりを尾行までして原因を探ろうとする変わり者男子、勝田くんだけ。
そんなふうにしてつかれきってしまうさくらには、唯一の拠りどころがあった。
とある事件をきっかけに知り合った、こころの病気をもつ、けれどこころやさしい青年、智さん。
智さんは部屋でいつも「人類を救う宇宙船の設計図」を書いていて、さくらが来ればおいしいミルクコーヒーを淹れてくれる・・・。

けれどそんな智さんも、やがて静かに精神を病んでいき、親友莉利には薬物や、売春斡旋の疑惑が。さくらと勝田くんはなんとか事態を収容しようとするけれど、そんな中、近所では連続放火事件が発生。
うずまくあらゆる疑惑を抱えながら、それでも懸命に走るさくらたち。
そしてその結末は・・・・・・。

じつは再読なのだけど、なんていうか、あまりにむきだしの迫力があるもんだから、
終盤はもう読むのが止まらなかった。

大事で大好きで、失いたくない親友だった莉利は、かつての自分の裏切り行為のせいで遠くにいってしまったまま、近くにいても、もう目を合わせることもできない。

幼馴染ではある勝田くんはとにかく探りたがりやで、尾行や聞き込みまでして情報を仕入れようとするし、ときに土足でさくらの気持ちに踏み込むようなことまでしてしまう。

他人のSOSに敏感で、かつてそんなさくらを救ってくれた。けれど自分のSOSには気づかない智さんは、だんだん、そしてどんどんさくらたちの想いの届かない場所に行ってしまう。

いろんなものが壊れてゆく、それか遠くに行ってしまう。
染み入る、侵食するようなこわさ。さくらでなくても、ほんとうにこわい。

とりかえしのつかないことっていうのはたしかにあって、
それは特別でなく、いろんなとこに転がっている。
たぶん大きな、真っ赤な口を開けて。

なにかが壊れてしまうことだって、そうなのかもしれない。
けれどこの物語には、こんな言葉が備わってる。

人より壊れやすいこころに生まれついた人間は、
それでも生きていくだけの強さも同時にもっているもんなんだよ


もちろん小説は現実じゃないけれど、
こんな言葉くらい、本気で信じてみていいと思う。

そんでもって「尊いもの」を、いっこずつ見つけて、大事に大事に、持ち続けたらいい。
そうやって、生きていければいい。

正直ちょっとドラマチックすぎるようなところもあるけれど。
けれどそんな想いがとどまりきれずに、どんとあふれたような一冊。
だからそのぶん、じつは必殺の物語かもしんない。

現実じゃ、もちろんないけれど。
でもそれはけして嘘なんかじゃないから。

たまにはこころして、
こんなあふれる勢いの中に、飛び込んでみたいって思う。

壊れやすいけれど、それだけの強さをもつ物語。
今まで読んだ森さんの作品の中で、一番好きです。

森絵都 『つきのふね』 角川文庫
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桜庭一樹 『少女には向かない職業』

少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)少女には向かない職業 (創元推理文庫 M さ 5-1)
(2007/12)
桜庭 一樹

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中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。

今日2冊目の更新は、久々の桜庭さん本。
この最初のひと言が気になって、文庫化を片隅で待ってた本。

物語は、一見どこにでもいる平凡な中学生、大西葵が、同級生の宮乃下静香と共謀し、
殺人行為を行う一年間を描いたもの。
大西葵は、「アルコール中毒のどうしようもないクソ親父」(「血のつながりはなし。ここ、重要」)をある夏の日、とうとう殺害してしまう。

義父の倒れたまま、廊下に座り込んだままの葵に、宮乃下静香はそっとつぶやく。

「ねぇ、こんどは葵が協力してね。あたしに」
「えっ?」
戸惑って聞き返すと、静香は真面目な口調でつぶやいた。
「あたしにも、殺したい人がいるの。こんどは葵が、あたしに協力する番だからね」


未成年がどうしようもない義理の親を殺害してしまう、
と聞いてすぐ思い浮かんだのが、貴志祐介の『青の炎』。
比べるわけでなく、『青の炎』のラノベ版、といったところ。

だからといって、けして劣ってるとか、そんなことはなく。
13歳の少女が人を殺してしまった後の時間や感情が、
ほんとうに克明に綴られていて、今実際の会話を聞かされているような気すらする。

少女の魂は殺人には向かない。
誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。


だれであろうと、そう気づいたところで取り返しなんかつきっこないし、つかない。
それは絵空事でなく、そんな静かな地獄が日常を少しずつ狂わせる。
そうして狂った日常は、そのまま戻ることなく狂い続けていくばかり。

用意するものはバトルアックスと殺意です、と静香は言った。

第二の殺人計画が、そうして実行される。
断る、絶つ手段はあったかもしれない。
けれどそのとき、自分がそうできたかどうかというのは、本当のところ人それぞれかもしれない。

「ふたりの少女の壮絶な《闘い》の記録」は、ぼろぼろになって両手を差し出す葵の姿で終わる。
人殺しの罪はぜったいに、逃げられないもの。

せめてそうでないと、嘘っぱちだと思う。

桜庭一樹 『少女には向かない職業』 創元推理文庫
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杉浦日向子 『4時のオヤツ』

4時のオヤツ (新潮文庫)4時のオヤツ (新潮文庫)
(2006/06)
杉浦 日向子

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四時って、半端だ。午前にせよ、午後にせよ。
深夜でも、明け方でもない。昼間でも、夜でもない。
夜明け前、そして、黄昏れ時。そんな、半端な時間に、ふと、口寂しくなる。


読みかけの本をナオさんちに忘れてきてしまい、
手持ち無沙汰なのでバイトの帰り、大雨の中、古本屋で購入。

4時のオヤツ、というなんだかそれだけでおもしろそうな、
こってりふんわりしたおかしみたっぷりのタイトル。
そんでこんな美味しそうなカバー写真なんて撮られた日には、こりゃあ少々金欠気味でも、買わずにゃいられませんでしょう!(あんただけだ)
 
たい焼き、豆かん、クリームパン。 
シベリア、せんべい、桜もち。
まんじゅう、サバラン、草餅に、ザッハトルテに佃もち。

33のオヤツをはさんだショートストーリー33編と、
33のオヤツをはさんだ写真を納めた、すごく美味しく、可愛らしい一冊。
こんな本が手元に一冊あると、なんかすごく安心できそうな気がする。

もうひとつ見所は、そんなオヤツ片手に、片隅に、語り合うひとたちのショートストーリー。
親子だったり、恋人だったり、友だちだったり、お客だったり。
いろんな間柄のひとたちの間に、ちょこんといるオヤツたち。
そんな中で一番好きなのは、逃げ出した飼い犬を探す父娘のお話でした。(『清正の酒饅頭』)
泣きそうな小さな娘と、なだめながら父親が包んでもらう、屋台の酒饅頭。
小さな娘の大きな心配と、やさしくのんびりなだめすかせる父親の会話。 

「あの、お饅頭二人前お願いします。それからすいません、この辺で迷い犬、見かけませんでしたか。(略)」
「クミコ、拾ってきたんです。育てたのはお母さんだけど。名前はチャボです。噛みません」
「あと、お土産に十個包んで下さい」
「チャボ、あんこ好きだったね。あんまんとかさあ。ばかだねえ、いれば分けてあげるのに。どこいるんだろ。家出なんかして。家、嫌いになっちゃったのかなあ。ゆうべ、お母さんのエナメルの靴、ぐちゃぐちゃにして、叱られたからかなあ」
「そうじゃないよ。ガールフレンドのとこだよ。おなかすかして、じき帰ってくるよ」


こんな感じでふらっと出てくる会話にオヤツのあんばいが、もうたまらなく、いい。
なんか夕焼け小焼けが似合いそうな、とっぷり暮れた昭和の空気。
(物心つくころには平成だったけれど、この空気感はどうしても「昭和!」としか思えない。不思議)

それでいて、ゆるやかばかりでもない。
だって33ものだれかの日常だから、どきりとするような言葉も、ぞくりとする瞬間もある。

「希望なんかアテになんないよ。希望って、所詮、マレなるノゾミじゃない。めったにないノゾミなんか。宝くじじゃあるまいし、そんなモンに、いちいち一度きりの人生、賭けてらんないよ」
「でも、それが大人になる事だったら悲しすぎる」
 (『仙台・賣茶翁のみち乃くせんべい』)

「なにもそんなに力まなくても。ねえ、お代わり貰えるかな。なんにもせ、末世の東京で、こうして、ひなたくさい土の実りを味わえるなんて、ずいぶんそうとう、しあわせってもんじゃないのかな」
「むりにしあわせと思い込むこたないよ」
「しあわせと思おうよ。で、とりあえず酔おう」
 (『小布施堂の栗鹿ノ子』)

著者の杉浦さんは、46歳で下咽頭がんで逝去してしまったそう。
「最後まで前向きで明るく、人生を愉しむ姿勢は変わらなかった」とも。

こんなひとになれるものか、となんだか読後、つくづく思った。

杉浦日向子 『4時のオヤツ』 新潮文庫
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村山由佳 『すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(下)』

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)
(2004/04)
村山 由佳

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とにかく東京から離れたい。兄貴と由美子の気配を感じないで済むところならどこでもいい。そういう状態にあった僕には、タカハシの誘いが一筋の光明のように思えたのだ。
暗闇の中で緑色に光る<非常口>の案内板みたいに。


なんか読書自体が久しぶりで、だからこんな好きな本を読んだのも久しぶりで
ああ、やっぱ本読んでないと調子出らんのが自分なんだなーと、読書熱を再確認。
とまあ、どーでもいいけどお久しぶりです。辞めてはいません、ツキミです。

なんだかいろいろ忙しく、いろいろ小さなごたごたに見舞われしばらく本から遠ざかっていました。
それでもこれは!、と思って読んでみれば、なかなか素敵な物語でした。

恋人、由美子を実の兄貴に奪われ、傷心からいつまでも回復できないでいる、主人公の祐介。
見かねた大学の友人、タカハシの誘いで、大学の冬休みを、信州は菅平の宿“かむなび”で働くことに。
無農薬農業に熱く、おっかないけど一本筋の通った“かむなび”園主、神山十兵衛。
園主の姪で、やんちゃ息子健太とつきぬけてるキャラが際立つ、けれどじつはワケありらしい瞳子さんに、
面倒見の良いコックさん源さんに、花屋を夢見る女性、美里ちゃんに花綾ちゃん。
最初はつんけんと、特にいたずらキャラの瞳子さんにはこころを閉ざし気味だった祐介も、
園主のもとで、みんなといっしょに宿の仕事をこなすなか、徐々に抱えた傷を思い出すことも少なくなってくる。けれど突然園主がロバや馬を飼い出したり、不登校の少女を預かることになったり、そのお母さんが乗り込んできたり、一方で、仲間からさりげない好意を向けられたりと、事態は思うようにはいかなくて・・・・・・。

主人公の年齢が私とものすごく近いのと、何より村山さん作品の魅力で、上下巻およそ600ページをあっというまに読了。
あっと驚くような劇的な出来事はないけれど、毎日の仕事や生活の中で生まれる出来事や気持ちのひとつひとつを、丁寧に書きあげてる。
っていうのがど素人の私でも感じられるくらい、どこまでも普通のことを、どこまでも丁寧に掬い上げてくれている。

それと、登場人物たちの、ひとりひとりの気持ちも、すんごく丁寧に拾いあげるところ。

恋人と兄貴の手ひどい裏切りに苦しみながら、その気持ちを汲んでやることもできずいつまでもじくじくと痛んでばかりいる、そしてそんな自分に愛想がつきそうな祐介の気持ち。
女性の村山さんが書いているのに、まったく不自然がなくて、むしろものすごく自然で不思議。
それだけでなく、かつての大きな傷を抱えたままで豪快に笑う瞳子さん、花屋を目指しながらも迷い悩む美里ちゃん、花綾ちゃんや、学校に行きたくてもいけないでいる桜子ちゃん、そして今でも許せない兄貴と由美子の気持ち・・・・・・。

だれひとりの気持ちとして、手を抜いたり、粗末に扱われたりはしない。ほとんど同一線。
登場人物は少なくないはずなのに、これはすごいなあ、って思った。

だからよけいに物語が、この森の中の宿で繰り広げられる普通の日々や、
それに伴ういろんな気持ちや想いの果てが、いつか読んでる私にもすごく身近で、愛おしいものになってた。

――雲の形が、また少し変わったようだ。

とても不思議なタイトルを持つこの物語の終盤は、徐々に変わるようで変わらない。
『すべての雲は銀の・・・』
この言葉の意味は意外にそっけなくてうすっぺらだけど、そんな能天気さだってきっと必要なもの。
元気になれる時間は、いつでもどこかに転がってると信じていたい。
失恋したての大学生や、夢を追いながらも迷ってるひとなんかには特にオススメ。

祐介のかなりの女々しさがちょっと鼻につくけれど、だからってけしてわるいやつじゃない。
だからちょっとだけ、たまにはこんな長めの物語に付き合ってみてはどうでしょうか。

村山由佳 『すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(下)』 講談社文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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