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高楼方子 『十一月の扉』

十一月の扉 (新潮文庫)十一月の扉 (新潮文庫)
(2006/10)
高楼 方子

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(じゅういちがつそう・・・・・・?)
字余りのような、変な名前だと思った。それなのに爽子は、その名が、たちまち、すてきに思えた。
白いその家は、十一月の冷気の中で静かな息をしているように見えたし、十一月になったばかりの日に、ここをめざしてやってきた自分とも、何かつながりがあるように思えた。
 (1章より)

中学二年の十一月。
親の都合で突然の転校が決まった爽子は、偶然見つけた不思議な赤レンガの家「十一月荘」に強く惹かれ、ひとり下宿することになる。
元英語教師で、管理人の閑(のどか)さんはじめ、建築家の苑子(そのこ)さん、主婦の馥子(ふくこ)さんと、娘のるみちゃん。
やすらかに流れる暮らしの中で、やがて爽子は自分だけの物語を、一冊のノートに綴り始める。
それはここ、十一月荘での生活を真似た、「ドードー森の物語」。
十一月荘のように安らかな物語を綴りながら、すこやかに暮らす毎日。
けれど閑さんのもとへ時折英語を習いに来る中学三年の耿介(こうすけ)のことが、爽子はだんだん気になりだして・・・。

赤レンガの家、しかも「十一月荘」なんてヘンテコな名前のついた家の中で、4人の女性と過ごす数週間。純粋に小説、というより童話風な物語という感じ。

一見いけすかない耿介との関係だとか、離れて暮らして気づく母親への反感だとか。
それなりの不穏な感情を抱えながらも、毎日を楽しんで暮らし、いとおしんで綴る。

魅力的な4人の女性たちとの暮らしは、そのまま動物のぬいぐるみたち(十一月荘の住人ひとりひとりに、動物のぬいぐるみを重ねている)に託され、爽子の描く「ドードー森の物語」の中で活き活きとかがやく。

400ページちょっとと長めで、物語の外から見れば、とりたてて大きな出来事があるわけでもない。
だから退屈だって思いそうなんだけど、不思議とすんなり読み終えてしまい、そして今回再読。

「甘ったるい。現実的でない」なんて声もあって、たしかにそんな気もするのだけれど、私はけっこう気に入ってる。
私の好きな「暮らし、生活」というテーマが大きいというのもあるんだろうけど・・・と考えながら読んでると、ああこれだ!という文章を見つけた。
長いけれど、載せてみる。

―――十一月荘は、爽子にとって、双眼鏡の中にふっと立ちあらわれたという始まりからして、どこか非現実的な空間だった。住人たちも、全体に生活感がなく、さらりとしていた。
けれどその人たちが、爽子の目にとまった瞬間に忽然と湧いて出たわけではない以上、それぞれの背景にいろんなことを抱えていて当然なのだった。
それを知ったことで、がっかりすることがあるかというと、一つもなかった。
ここの人たちは、本当にみな気持ちがいい。みな、好きなように、でもお互いに少しばかり気をつかいながら、一日ずつを丁寧に生きているのではないだろうか、そんな気がした。
 (14章より)

ひととひとの関係って簡単にねじれて、壊れて、ときになくなってしまったりもする。

著者の高楼さんの書いた十一月荘の物語からは、きっとそのことを知りながら、だから丁寧に、懸命に生きているひとたちの姿が見えてくる。

物語自体は現実味に欠けるかもしれないけれど、爽子に限らずだれしも不安はある。(だからといって、けして一緒くたにできるものではないけれど)

(だいじょうぶ。きっとうまくやっていける)

本編中。
そこにいるみんなの手で丁寧につくられてゆく暮らしの中で、爽子はまだ見ぬ未来に、だんだんと希望を見出していく。
それは十一月荘最後の日も変わらず、そしてそれからもなくなりはしない・・・。

こころの中に、すうっと寄り添う物語。
爽子の愛した毎日を、現実と空想、ダブルの世界で感じ取れる。

十一月にはいいことがある、なんて思って、続く毎日を暮らしてゆける。
爽子じゃないけど、知らずそんな気になる。

ただ表紙と挿絵だけは、たしかに単行本のままにしてほしかったなと、それだけ不満に思う。

高楼方子 『十一月の扉』 新潮文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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