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梨屋アリエ 『でりばりぃAge 』

でりばりぃAge (講談社文庫)でりばりぃAge (講談社文庫)
(2006/04/14)
梨屋 アリエ

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息がしたい。わたしは全開の窓にかけよった。

帆だ!白い帆をはためかせた船が見える・・・・・・。

窓枠をぐっとつかんだ。
そのときチャイムが鳴らなかったら、わたしは衝動的に飛び降りていたかもしれない。
四階の窓から、隣の民家の庭に。


14歳、中学2年の夏休み。
夏期講習の空き時間、こらえきれない不快感から窓をのぞきこんだ真名子の目は、
教室の隣の家、そこの庭にある木と木の間に干された、真っ白なシーツに釘付けになる。
それは「遠目に見ているのに大きくどうどうとしていて、一隻の帆船の帆のよう」で、
真名子はそれをとっさに「溺れているわたしを助けにきた船」だと感じる。

そしてある雨降りの日。
雷鳴の中、ほったらかしに干されたままのシーツを見るにたえられず、
とうとう真名子は教室を飛び出して、隣の庭へ。
そこにはなんだかボーッとしたような「ローニンセイ」がいて、どうやらおじいさんとふたりで暮らしているよう。
その日をきっかけに真名子は夏期講習の代わりに、その庭を訪れるようになるのだけれど・・・・・・。

隠れた名作、というか単純にお気に入りの本。
そーいえば大学1年のとき、初めての語学の講義前にこの本を買いに、
少ない空き時間に4駅離れた本屋まで行き、結果大遅刻したという変な思い出があるけれど
まあ、それはそれとして。(←もう完全お馬鹿ですね、はい)

とある有名高校の夏期講習に参加していた、中学2年の真名子。
校舎の隣の庭に住む得体の知れない、けれど善良そうなローニンセイ。
真名子は「息抜き」として、ひと夏をこの庭で過ごすことになるのだけれど、
不安や焦りや、いらだち。
そんなものがいつでもどこでも見え隠れする。
うわべだけの友だち3人。
目的の見えない夏期講習、勉強。
教育マニアの母親。頼りない父親。かわいくていい子な、小学1年の弟。
いろんなものが絡んでまわって、とうとう頭の中がいたくなる感覚。

突然、頭のなかが真っ白になった。
一生懸命勉強したって、しなくたって、行き着くところは同じなの?
だれかと結婚をして、子どもを産んで、育てて・・・・・・その先になにがある?
(p44)

これからのことを考えるとじっとしていられない。見えない将来のことを考えると吐き気がする。
今日が終わらないと未来はやってこない。未来のために今日を使う―――この夏、わたしがここでつぶして搾ってどろどろのジュースにしたものが、はたして未来の栄養になるのだろうか。                     ストップ。なにも考えないほうが利口だ。思考の蛇口をキュッと締めよう。
でも、あとからあとからじわじわもれだしてしまうものは、防ぎようがない。
(p71)

教育マニアの真名子の母親に言わせれば、「思春期」、なんて何も片付けられないひと言で、いとも簡単に片付けられるこの感覚。
私にはまだ記憶があるし、いまでもときどき、ずんっ、と現れる感覚。
それは主に「未来」とか、「将来」とかに向いてて、中学生でもないのに、
ときどき焦ったり不安になったり、いらだってしまいそうになったりもする。

対するローニンセイも、どうやら単なる楽天家、というわけではなさそうで。
勉強しているのかと思えば、おじいさんの日記を毎日食い入るように読んでいたり、
真名子が好きだという庭を「嫌いだ」と言い捨てたり。
その理由はだんだんとわかるのだけれど、そのとき真名子はどうするか。

物語の終盤。
不思議な、けれど貴重なひと夏を過ごした真名子とローニンセイは、
それぞれのスタート地点に立つことになる。
その直前、真名子は友人にこんな相談をする。

「たとえば、トモダチがつらい思いをしているようなとき、なにかをしてあげたいよね。だけどわたしにはそれを助けてあげることはできない。たぶんその人はひとりになって考えたいときだし、そっとしてあげるのがいちばん相手のためになるとわたしもわかってる。でも、なにかしてあげたい。そんなとき、どうしたらいい?」

不意打ちのように問われて、物語の中の友人だけでなく、読んでる私まで考えてしまった。
(考えたけど、私の答えも、真名子の友人のひとりのそれに、近い)

あの八月の風をはらんだかろやかな洗濯物に、いますぐつつまれたら・・・・・・。

そう思って最初庭を見下ろしてた真名子のこころは、不思議なひと夏で、ずいぶんと変わってく。
(そのへん、なんか山崎マキコさんの「さよなら、スナフキン」を思い出した)

たぶん読んでて一番気に入るのは中高生なのだと思うけど、14歳の真名子の感覚、
けっきょくだれが読んでも共感してしまうんじゃないだろーか、と思う。多かれ、少なかれ。

どうせなら、夏が終わってしまうそのまえに。
一度、真名子と白い帆に飛び込んでみたらどうでしょう。
きっと、かなり素敵な夏の物語に、出会えると思います。

梨屋アリエ 『でりばりぃAge 』 講談社文庫
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でりばりぃAge 梨屋アリエ

14歳になる夏休みわたしは一つの庭に出会った。 そしてわたしは女の子から女性へ変わりつつあった…。 微妙な心の揺れと成長をさわやかに...
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No title

同じような感覚がなんとなくわかるような気がして、
おもしろかったです。
トラックバックさせていただきました。
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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