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村山由佳 『すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(下)』

すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(講談社文庫)
(2004/04)
村山 由佳

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とにかく東京から離れたい。兄貴と由美子の気配を感じないで済むところならどこでもいい。そういう状態にあった僕には、タカハシの誘いが一筋の光明のように思えたのだ。
暗闇の中で緑色に光る<非常口>の案内板みたいに。


なんか読書自体が久しぶりで、だからこんな好きな本を読んだのも久しぶりで
ああ、やっぱ本読んでないと調子出らんのが自分なんだなーと、読書熱を再確認。
とまあ、どーでもいいけどお久しぶりです。辞めてはいません、ツキミです。

なんだかいろいろ忙しく、いろいろ小さなごたごたに見舞われしばらく本から遠ざかっていました。
それでもこれは!、と思って読んでみれば、なかなか素敵な物語でした。

恋人、由美子を実の兄貴に奪われ、傷心からいつまでも回復できないでいる、主人公の祐介。
見かねた大学の友人、タカハシの誘いで、大学の冬休みを、信州は菅平の宿“かむなび”で働くことに。
無農薬農業に熱く、おっかないけど一本筋の通った“かむなび”園主、神山十兵衛。
園主の姪で、やんちゃ息子健太とつきぬけてるキャラが際立つ、けれどじつはワケありらしい瞳子さんに、
面倒見の良いコックさん源さんに、花屋を夢見る女性、美里ちゃんに花綾ちゃん。
最初はつんけんと、特にいたずらキャラの瞳子さんにはこころを閉ざし気味だった祐介も、
園主のもとで、みんなといっしょに宿の仕事をこなすなか、徐々に抱えた傷を思い出すことも少なくなってくる。けれど突然園主がロバや馬を飼い出したり、不登校の少女を預かることになったり、そのお母さんが乗り込んできたり、一方で、仲間からさりげない好意を向けられたりと、事態は思うようにはいかなくて・・・・・・。

主人公の年齢が私とものすごく近いのと、何より村山さん作品の魅力で、上下巻およそ600ページをあっというまに読了。
あっと驚くような劇的な出来事はないけれど、毎日の仕事や生活の中で生まれる出来事や気持ちのひとつひとつを、丁寧に書きあげてる。
っていうのがど素人の私でも感じられるくらい、どこまでも普通のことを、どこまでも丁寧に掬い上げてくれている。

それと、登場人物たちの、ひとりひとりの気持ちも、すんごく丁寧に拾いあげるところ。

恋人と兄貴の手ひどい裏切りに苦しみながら、その気持ちを汲んでやることもできずいつまでもじくじくと痛んでばかりいる、そしてそんな自分に愛想がつきそうな祐介の気持ち。
女性の村山さんが書いているのに、まったく不自然がなくて、むしろものすごく自然で不思議。
それだけでなく、かつての大きな傷を抱えたままで豪快に笑う瞳子さん、花屋を目指しながらも迷い悩む美里ちゃん、花綾ちゃんや、学校に行きたくてもいけないでいる桜子ちゃん、そして今でも許せない兄貴と由美子の気持ち・・・・・・。

だれひとりの気持ちとして、手を抜いたり、粗末に扱われたりはしない。ほとんど同一線。
登場人物は少なくないはずなのに、これはすごいなあ、って思った。

だからよけいに物語が、この森の中の宿で繰り広げられる普通の日々や、
それに伴ういろんな気持ちや想いの果てが、いつか読んでる私にもすごく身近で、愛おしいものになってた。

――雲の形が、また少し変わったようだ。

とても不思議なタイトルを持つこの物語の終盤は、徐々に変わるようで変わらない。
『すべての雲は銀の・・・』
この言葉の意味は意外にそっけなくてうすっぺらだけど、そんな能天気さだってきっと必要なもの。
元気になれる時間は、いつでもどこかに転がってると信じていたい。
失恋したての大学生や、夢を追いながらも迷ってるひとなんかには特にオススメ。

祐介のかなりの女々しさがちょっと鼻につくけれど、だからってけしてわるいやつじゃない。
だからちょっとだけ、たまにはこんな長めの物語に付き合ってみてはどうでしょうか。

村山由佳 『すべての雲は銀の… Silver Lining〈上〉(下)』 講談社文庫
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No title

 どうも、初めまして。PHOOと言います
 この本は今年の5月くらいに読んだのですが、仰るとおり、主人公を取り巻く人々を「主人公の傍に居るだけのキャラではなく、彼らも彼らなりの悩みや人生を持っている人々として、丁寧に書き上げる」ことで、優しいだけじゃなくてちょっとほろ苦い、けど素敵な世界を作り上げていると思います。そこについてはまあ大好きなんですが…

 どうしても、彼女が許せないんですよね。僕の恋愛観にどうしても合わなくて。僕もまだ今年二十歳になるばかりの大学生なのですが、同年代の人たちがどんな気持ちで、何を求めて恋愛をしているのかわからないんです。
 普通初めから別れることを考えて恋愛はしませんよね、まあそういう輩もいるんでしょうけど。でも、高校や大学入りたての頃から付き合って、独り立ちするまで続いて結婚してゴールイン、なんて難しいじゃないですか。彼らはそれをどう考えてるんでしょうか。
 もし、結婚だとか、そういうことを少しでも目指す(相手がそれに足る人間か見極めたり、自分を高めたりする)気持ちがあって付き合っていたのなら、正直あんな理由だけで、しかも主人公との関係も曖昧にしたまま兄と付き合うなんてことはすべきじゃないと思うんですよね。それになんか理由自体もしょうもない気がしますし。お互いの理解を深めるために、もっと努力があって良いと思います。
 作品中では主人公が女々しいことだけが前面に押し出されていましたが、正直僕は主人公が哀れでなりません。無論色々と人間的に足りない子供な部分がありますし、振られること自体はべつに良いんですけど。男に求めるものの割りに、女の方に、自分の努力や誠意が足りないというか、行動が軽すぎるというか。本当に付き合う気があるなら、「あなたの気持ちがわかんないからもっとはっきりしろ」と言うくらいのことはすべきじゃないのか。ただ兄の方が優れているから、乗り換える。恋人同士足りないところを指摘しあって高めあう、ってことをしない。それで元彼には別れを告げるという最低限の道理も通さない。作者の恋愛観って、ちょっと女性本位なんじゃないかな、って、そう思ったことだけが残念な点でした。
 まあ、彼女のほうが単なる刹那的な関係と思ってたなら、見解の相違ってやつなんでしょうけど…とりあえず冒頭で「彼女が一番つらいんだ」なんて言ったタカハシはちゃんちゃらおかしいですね

PHOOさんへ

こちらこそ初めまして。月見です。
閲覧、コメント、どうもありがとうございます!

正直なところ、祐介のほうにばかり目が行ってたので、由美子のほうまで気が回らなかったのですが。

関係を曖昧にしたまま~、ってのは、私もナシだと思います。
私なら、他に好きなひとができたって本心言ってほしいところです。
傷はそちらのほうが、隠されたほうが深いでしょうし、そこは由美子に非があると思います。
一番辛い人間が由美子だって言うタカハシの台詞にも、たしかに違和感というか、ちがうだろ、それ。と思います。

ただ、どうしても許せない、とまではいかなくても、どうにもこうにも、この人のこの部分は、後先どうしても寛容になれないな、と気づいてしまって、それがずっと目に付く。
かといって何も言わずに(祐介から見れば)突然いなくなる、「別れを告げるという最低限の道理も通さない」のはたしかに最悪です。

けど、どうしてもそのひとにとって「この人のこういうとこ、どうしてもダメだな・・・」ってところは、なかなか口には出せないものだと思います。
自分の気持ちを、「こうしてほしい、こうなってほしい」を伝えて、それが相手の負荷になることがこわいとか、あるいはそう告げて、逆に相手を嫌いになるのでは?とか、そんな気持ち。
祐介になら「もっとはっきりして」と言って祐介がそれを負担に思ったり、「あんなこと言われちまった、どうすればいいんだ!?」みたいに思ったり、そうして、自分がもっとそんな相手を認められないと思ってしまったり。どちらにしろ、ありえると思います。認められないけれど、口にもできない。ジレンマ。(もちろん、それを口にすることがお互いを高めあうきっかけになる可能性だって、同じくらいあるのですが)
行動は軽くみえても、中身は重いものだったのかもしれません。(もちろん、由美子が刹那的な価値観を持っていたっていうのもありえます。けれど私は、たぶんそれはちがうんじゃないかと思います。根拠はなく、ただそういう感じがするというだけですが)
タカハシの言ってた台詞も、もしかしたらこういう意味合いだったのかもしれません。だとしても、一番傷ついたのが由美子だと言い切るのは、それはちがうだろ、って思うんですけど。

出会えてそのままゴールできたらって、付き合い始めなんかはたぶんたいていのひとがそう思ってるんじゃないかな、って思います。
でも、それはほんのレアケース。

それを考えてればこわくて恋愛なんてできない!ってなるよりは、もちろんおそれずに恋愛してるほうがいいと思います。
おそれながら、でも進まないと出会うこともできないから、みんな案外こわごわ恋愛してるのかもしれないな、なんて思いました。
いつかは切れるものと、割り切るのもひとつ手だとは思いますけど。(ただ、それは私には好きになれない感覚です。別にきれいごとを言いたいわけでなく)

ほんのりした空気が大好きで、この本読んでるときもそこにばかり目が向いていたから、由美子や祐介の気持ちや行動なんかを、じっくり考えてみる、って読み方もあるんだ!って気づきました。PHOOさんのコメント読んで、いろいろ考えながらレス書いてると。

まとまらない内容を返してしまいますけど、ひとまずお返しします。
よかったら、また遊びにきてください。
では、コメントありがとうございました!(^^)

No title

 返信ありがとうございます。僕のコメントは正直物語の根幹には関わらない部分ですし、たまたま主人公に共感しちゃっただけなので、そういう読み方もある~云々って言ってくださって、ちょっと恥ずかしかったり。
 最近恋愛ちょっと精神的にまいってまして…そのときにこの本のことを思い出しちゃったせいで、コメントが乱暴な終わり方だったところをお詫びしようと思いまして。1読者として、ここの感想は参考にさせて頂いてますし、こちらこそ読み方を教えていただいている気分です。

 返信は不要です、今度こそ失礼します

No title

わざわざ返信ありがとうございます。
これもまあ何かの縁(?)ですので、よければこれからも見にきてやってくださいw それでは、失礼します(^^)
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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