コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

杉浦日向子 『4時のオヤツ』

4時のオヤツ (新潮文庫)4時のオヤツ (新潮文庫)
(2006/06)
杉浦 日向子

商品詳細を見る


四時って、半端だ。午前にせよ、午後にせよ。
深夜でも、明け方でもない。昼間でも、夜でもない。
夜明け前、そして、黄昏れ時。そんな、半端な時間に、ふと、口寂しくなる。


読みかけの本をナオさんちに忘れてきてしまい、
手持ち無沙汰なのでバイトの帰り、大雨の中、古本屋で購入。

4時のオヤツ、というなんだかそれだけでおもしろそうな、
こってりふんわりしたおかしみたっぷりのタイトル。
そんでこんな美味しそうなカバー写真なんて撮られた日には、こりゃあ少々金欠気味でも、買わずにゃいられませんでしょう!(あんただけだ)
 
たい焼き、豆かん、クリームパン。 
シベリア、せんべい、桜もち。
まんじゅう、サバラン、草餅に、ザッハトルテに佃もち。

33のオヤツをはさんだショートストーリー33編と、
33のオヤツをはさんだ写真を納めた、すごく美味しく、可愛らしい一冊。
こんな本が手元に一冊あると、なんかすごく安心できそうな気がする。

もうひとつ見所は、そんなオヤツ片手に、片隅に、語り合うひとたちのショートストーリー。
親子だったり、恋人だったり、友だちだったり、お客だったり。
いろんな間柄のひとたちの間に、ちょこんといるオヤツたち。
そんな中で一番好きなのは、逃げ出した飼い犬を探す父娘のお話でした。(『清正の酒饅頭』)
泣きそうな小さな娘と、なだめながら父親が包んでもらう、屋台の酒饅頭。
小さな娘の大きな心配と、やさしくのんびりなだめすかせる父親の会話。 

「あの、お饅頭二人前お願いします。それからすいません、この辺で迷い犬、見かけませんでしたか。(略)」
「クミコ、拾ってきたんです。育てたのはお母さんだけど。名前はチャボです。噛みません」
「あと、お土産に十個包んで下さい」
「チャボ、あんこ好きだったね。あんまんとかさあ。ばかだねえ、いれば分けてあげるのに。どこいるんだろ。家出なんかして。家、嫌いになっちゃったのかなあ。ゆうべ、お母さんのエナメルの靴、ぐちゃぐちゃにして、叱られたからかなあ」
「そうじゃないよ。ガールフレンドのとこだよ。おなかすかして、じき帰ってくるよ」


こんな感じでふらっと出てくる会話にオヤツのあんばいが、もうたまらなく、いい。
なんか夕焼け小焼けが似合いそうな、とっぷり暮れた昭和の空気。
(物心つくころには平成だったけれど、この空気感はどうしても「昭和!」としか思えない。不思議)

それでいて、ゆるやかばかりでもない。
だって33ものだれかの日常だから、どきりとするような言葉も、ぞくりとする瞬間もある。

「希望なんかアテになんないよ。希望って、所詮、マレなるノゾミじゃない。めったにないノゾミなんか。宝くじじゃあるまいし、そんなモンに、いちいち一度きりの人生、賭けてらんないよ」
「でも、それが大人になる事だったら悲しすぎる」
 (『仙台・賣茶翁のみち乃くせんべい』)

「なにもそんなに力まなくても。ねえ、お代わり貰えるかな。なんにもせ、末世の東京で、こうして、ひなたくさい土の実りを味わえるなんて、ずいぶんそうとう、しあわせってもんじゃないのかな」
「むりにしあわせと思い込むこたないよ」
「しあわせと思おうよ。で、とりあえず酔おう」
 (『小布施堂の栗鹿ノ子』)

著者の杉浦さんは、46歳で下咽頭がんで逝去してしまったそう。
「最後まで前向きで明るく、人生を愉しむ姿勢は変わらなかった」とも。

こんなひとになれるものか、となんだか読後、つくづく思った。

杉浦日向子 『4時のオヤツ』 新潮文庫
スポンサーサイト
コンテントヘッダー

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

フリーエリア
フリーエリア
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。