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井上荒野 『森のなかのママ』

森のなかのママ (集英社文庫 (い59-1))森のなかのママ (集英社文庫 (い59-1))
(2007/05)
井上 荒野

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偉大な画家の娘に生まれてしまったあたしの葛藤なんて、照次郎には金輪際わからないだろう。
パパの影響からできるかぎり逃れること。ママのような女にはならないこと。
それがあたしの人生の大命題ってことも。
 (「苦難の道」より)

有名な画家だった父。その死後五年。
大学生のいずみは、どこまでも奔放で、そのくせ飄々としてつかみどころがない不思議なママと、
森のなかの、美術館に改装した家に住んでいる。
そこを訪ねてくるのは少しのお客と、不思議なママにほれ込んだ4人の男たち。
実るあてなど欠片もないいずみの恋心を含んで、可笑しくもゆるゆると続くはずの日常は、
ある日突然テレビに現れた、パパの愛人によってちぐはぐに変化していく。
なにがなんでも否応なし。そんな人生と渡り合うため、ママがとった行動は―――。

不思議というか不穏というか、おだやかというか可笑しいというか。
とにかく妙な物語。なんだか終始とろんとした気分で読了。

物語のキーポイントとなるママは、60代にしてどうしてだかよくわからんけれど男にもてる。
離れに住む伏見さん、美術商の掛川さん、演出家のトリさん、カメラマンのジンちゃん。
その中で、いずみは渋い老人伏見さんに恋しているのだけれども、
肝心の伏見さんはもちろんママに夢中。いずみには見向きもしない。

おまけにママは、今は亡きパパの思い出の絵を次々と売り払い、
美術商の掛川さんとこっそり買い物に行っては、派手に散財して帰ってくる始末。
何度怒ってものらりくらりと逃げ切るママに、いずみの苦い思いは募るばかり。

物語はいずみの同級生で、これも飄々とした友人の照次郎たちをも従えて
おかしな可笑しな方向へと進んでゆく、のだけれど。

ママの、けしてだれにも明かさない部分がそのうち見え隠れしだし、
いずみのママに対するとげとげした気持ちは少しずつまるくなっていく。
(だからといって平穏無事、というわけではけしてなく。奔放というものは、
ほんとうに負おうとすると手に負えないものだと思う)

物語後半で、突然の愛人が登場したときのママの行動には正直度肝を抜かれたけれど
それもまた、「なにがあっても否応なしに続いていく人生と渡り合うため」なのだろう
(と推測するしかない。本人はどこまでも奔放で、つかみどころなどないのだし)。

けして無理をしない。けれど、何かを負って、
コントロール不能な人生と渡り合おうとする。
たとえ周囲から見て、意味不明でも、はたまた度肝を抜くような行動でも。

ふりまわされてたいずみの立場で、
そんなママを少しずつわかってきたような気になれたら、それでもう充分。
そこでもう充分、この物語は味わえてるはず。

これといって教訓めいたものはないけれど、
ひとつ、真似もできないのびやかな生き方を、見つけた気がする。

妙だけどさらりと後味が残る、超フシギ本。
ちぐはぐな感想文書きながら、おすすめ。

井上荒野 『森のなかのママ』 集英社文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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