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川上弘美 『ニシノユキヒコの恋と冒険』

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)
(2006/07)
川上 弘美

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「どうして僕はきちんとひとを愛せないんだろう」
そういうたちだからよ、とわたしは言おうとして、やめた。ユキヒコが、かわいそうになったからだ。
(「おやすみ」より)

ニシノユキヒコ。
姿見もよく、セックスもよく、性格はおだやかでやさしく、けれどかなりの女たらし。
けれど例外なく、最後には必ず女のほうから去られてゆく。
どうして去るのか去られるのか。
ニシノユキヒコ、ユキヒコ、幸彦、西野君、ニシノ、西野くん。
彼とかつて関った十人の女たちが思い返す、そのしょうもなく、そして切ない生き様。
最後まで愛し愛されることを捜し求めた男の人生を綴る、連作短編集。

うわ・・・こいつどうしょうもねえなあ・・・・・・。
というのが一番最初に思った感想。

そこそこに容姿端麗で、絶妙な美辞麗句にも長けている。
なにしろ主婦暦三十年のササキサユリをもってして、
「女自身も知らない女の望みを、いつの間にか女の奥からすくいあげ、かなえてやる男」とまで
言わしめたほどなのだ。こんな男、そうそういるもんじゃないどころか、もしかしたら本当はどこにもいないのかもしれない。
けれどどうしても、どうしようもなく、本当には愛すことは出来ない存在。

関わりを持った十人の女たちが語る、ニシノにまつわる十の恋と、そして別れの物語。
古くは中学生時代、果ては五十代までのニシノと、
七つの少女から結婚して三十年以上の(本文中の意味で)妙齢の女性の関わりの記憶。

いつでもだれでも変わりない。
いつもいつも好きになったようなのに、最後の最後に好きになれない。
愛せるようで愛していない。愛せないようで愛しそうになる(けれどけっきょく愛せない)。
あっさり、やがてきっぱり、女たちはニシノから離れていく。
取り残された(という完璧な顔をしているだろう)ニシノは、どうしてボクは愛せないのだろう、どうしてこんなことになってしまったのだろうと、子どもみたくどうしてどうしてを連発しながら、たたずむばかり。

しんみりしてるけど、もの哀しいけど、明るくておだやかで、ほっとさせるようなとこもある。
パフェを「パフェー」と語尾を伸ばして発音したり(「パフェー」)、風邪をひいた彼女に絞ってやろうと、ぶどうを買いに行ったり(「ぶどう」)、土管の中で寝転んだり(「水銀温度計」)。
けれどやっぱりいつも立ち返ってしまうのは、ニシノのいない、いなくなったとき。

それにしても、十もの物語を読み終えてもこの男の正体というか、根っこがわからない。
たしかに目の前にいるのに、触れているのに、けしてここにいると認識できないような感じ。

ニシノユキヒコ、ユキヒコ、幸彦、西野君、ニシノ、西野くん。
たくさんある呼び名と同様、その心根だってほんとうのところちっとも見えてこない。

どんなに目を凝らしても凝らしても、ここにもどこにもいないようでいて、そのくせそんなことはない、ボクはここにちゃんといるんだ!!と叫びまわってるような男。強いて言えば、こんな感じかも。
そういえば、物語の中でニシノと女の子の、こんな会話がある。

「だって僕はつくりものだから、いつかマナミのことが好きじゃなくなる」
「そうなの」
「そう、つくりものは、結局ほんものの人間とまじりあえないんだ」
(「おやすみ」より)

つくりものじゃないくせに、ほんものの人間のくせに。
何を言ってるんだろ、この男。

でも不思議とイライラしない。
別に同情したりもしないけれど、突き放す気にもならない。

これってむちゃくちゃズルい。ズルいんだけど、憎めない。
いったいなんだったんだろう、ニシノとは。
何を求めて、何を知って、何を手に入れたんだろう?

読後はそんな考えてもせんないことにばかり気をとられてしまって、しばらくぼんやりしたまま。
心地よかったような、つらく苦しかったような、泣きたいような。
そんな白昼夢でも見たような、不思議で不穏で、おだやかな気分。

余談だけど、こんなやつ、周りにいたらどうなるんだろう。
関るのか、関らないのか。
たぶん多かれ少なかれ関ってしまう気がするけれど、でも絶対に愛されることはないだろうなと
やっぱりそんな気しかしない。

川上弘美さんの不思議本たちの中でも、これだけは最後まで、掴めなかった物語。
不快じゃなくて、むしろおだやかで切なくて好きなのだけど、どうしても読むたんび、
どうしようもないような不穏が、あとからあとからあふれてきて、なんだかすこし、困ってしまう。

川上弘美 「ニシノユキヒコの恋と冒険」 新潮文庫
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川上弘美は「センセイの鞄」だけしか読んだことないのですが、いつも気になっている人です。実際センセイの鞄も面白かったし。
それに単行本を見ると、この人の本って目をひくんですよね。
装丁に気を使う作家さんは好きです^^
や、みんな気を使っているのだろうけども、まあたまたま趣味が合ったというのかなv-63
ではでは^^

kyokyomさんへ

川上さんの本、装丁がなんていうか好きになってしまうんですよね。これ何?って思うんだけど、意味もわからないままなんとなく好きになってしまいます(^^)
あ、でも古道具中野商店の装丁が一番好きです、ほのぼのしてて。(←オイ!)

それにしてもセンセイの鞄、あれは本当に素敵な物語でしたね。
ツキコさんとセンセイの会話もだけど、あの距離感、とてもとても好きです。
大人、というのとはちがうけど、ゆったりしてて落ち着ける雰囲気。
川上さんの本は時間をじっくりかけて読むと、もう最高です(^^)
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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