「なんだっていいじゃん仮の名前なんだから。じゃあもうジョナさんにしたら?ジョナが名前。さんは敬称」
「ジョナ・・・・・・」
「ファミレス思い浮かべるからいけないのよ。かもめのジョナサン思い浮かべればかっこいいじゃん」(「命名、ジョナさん(仮)」より)
来年に受験なるものを控えた高校二年の女子、チャコ。
一番の友人のトキコは、チャコよりも頭がいいのに早々に受験戦争からの離脱を宣言し、
なんだか支えを失ったような気持ちでそれを受け入れるチャコ。
そんな中、半年前に亡くなった(そして家ではもう禁忌とされている)おじいちゃんの愛犬ギバちゃんを
これまたおじいちゃんの好きだったゲートボールを見に連れていってやる日曜日。
「そんなにつまんないなら帰っちゃえばいいのに」
後ろからきれいな声がして、それがジョナさん(仮。おそらくは大学生。後にトキコが命名)との出会い。
ジョナさんを想う気持ちが元気をくれるけど、毎日の出来事はそれだけで元気でいられるほど
簡単なものではぜんぜんなくて・・・・・・。
やってきました2009年、記念すべき(?)読了本一冊目!
あの「
佐藤さん」の片川さんの、今度は高校在学中の作品だとか。
にしても、あいかわらずなんて素敵な物語を書くひとなんだこのひと・・・・・・!
大学入試だとか、将来だとかいうものが、そろそろ目の前をちらつきだして焦る主人公・チャコ。
その友人、性格はひどいけれど正義感が強く、頭もよくて顔はかわいいトキコ。
でこぼこコンビっぽいふたりの女子の、進んでいく日常を書いた物語。
チャコの本当の初恋の物語、だけあって、チャコのジョナさんへの想いが
傍から見ててくすぐったいくらい身にしみて、それをクールにいなすトキコとのやり取りも
読んでてすっごくおかしかった。(けれどあまりに的を射てるトキコのせりふに、チャコでなくてもグサリとくることもあったりする。私の、少ない体験からしても)
もうひとつ。
一見軽やかな恋愛話に見えて、じつはそちこちに深刻で重たいテーマが据えてあるのは、
前作、「佐藤さん」と変わらず。
母子家庭のトキコの事情とか取り巻く周囲の反応とか、チャコの家の、禁忌となってるおじいちゃんのこととか、トキコが機嫌が悪くなってる理由とか、自分の前にあるものに向き合うこととか。
(「ジョナさん」と名前のつく初恋の物語ではあるけれど、読んでると視線はどうしてもこちらに行ってしまいがちになる。もちろん、そこにもジョナさんはかかわってくるのだけれど)
1章目の「命名、ジョナさん(仮)」から始まり、最後の6章「幸せになりなさい」までつづくこの物語は、
そんないろんな感情とか関係性とか出来事とか想いとかを、まるごと抱えて向き合ってる、
読んでるとそんな気が、すごくした。
あきらめることは簡単で、でもそんなきれいごとを言ってしまうのもけっこう意外と簡単で。
けれど実際そんなふうに思ってても、お互いに全編通してかかわりあって、そんで成長してくチャコ(と、もしかしたらトキコも)の姿はやっぱりとってもまぶしいやって思う。
「あんた、すごい不器用だから。いろんなことをひとつひとつ片付けるのにすごい時間がかかって、はたで見てるこっちが歯がゆくなるくらい一生懸命だから。そんなふうに世渡り下手な人間が幸せになったら、たぶん救われる人がたくさんいると思うから」親友という言葉は本編中には出てきてないけど、このふたり、
たぶん一生友達でいられるんじゃないだろうか。
相変わらず憎まれ口をたたきあいながら、けれど相手の幸せを、強く願いながら。
何気に憎まれ口をたたくのが好きな私はこんな関係がものすごく好きなのだけど、
けっこうオブラートとかなんとかにくるんだり見ないふりしたりで
チャコじゃないけど見落としたものもけっこうあるかもしんない。
見えないつもりから正面からかかわることへ舵を切ったチャコもトキコも、
読後の私にとってすんごく素敵でまぶしくて、まるで自分の仲間のように思える大切な存在。
片川さんの次回作は、大学生になった片川さんが書く、大学生主人公の物語。
今日はバイトの残業が長引いて、おかげで本屋が閉まってて注文できなかったけど、
明日早速行って注文予定。今からものすごく、もう楽しみでたまらない。
片川優子 『ジョナさん』 講談社(単行本)