コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

豊島ミホ 『陽の子雨の子』

陽の子雨の子 (幻冬舎文庫)陽の子雨の子 (幻冬舎文庫)
(2010/04)
豊島 ミホ

商品詳細を見る


「この人、あなたと同じくらいの年からウチに居るの」
起きてしまった事故についてたんたんと読み上げるアナウンサーのように、雪枝さんは言った。
「あたし、この人に飽きたの」「だから、この人のこと玩具にして、夕陽くんと遊ぼうかと思うんだけど、どう?」とも、すらすら言った。


雨の日や、そんなときに足元にうごめく灰色の点々が怖い。
そんな中学二年の夕陽が出会った24歳の雪枝。彼女の家には、4年前に彼女に拾われた十九歳の聡がいる。
雪枝に隷属する聡と対面し、その関係に疑問を抱くものの、なお雪枝に関わることを選んだ夕陽。
そして夕陽がいることで、今までの雪枝と聡の不可思議な関係が、少しずつ方向を変え始めるものの・・・。

摑まれたというかなんというか。
べつにザクザク読んだわけでなくスローペースで読みながらも、久々に本を一気読み。
こんなの豊島さんしか書かないよなーと思うと同時に、こんなの豊島さんしか書けないよなーという気がすごくすごくして、休筆が残念です。

中学生男子が知り合ったお姉さんはじつは19歳の元家出少年を住まわせている。

普通に考えればありえないような話で、ともすれば犯罪ものの雪枝の行為ですが、雪枝が飼っているのは聡だけでなく、雪枝自身のうすぼんやりしたつかみどころの無い絶望。
そんなことに気づかないようにしてでも関わることはできたし、実際15歳の聡はそうした。
そうして雪枝と聡の不可思議な関係は出来上がり、4年もの間その生活が続いたまま。
けれど4年後、雪枝に誘われ、関わりを選んだ夕陽には、それが見えてしまう。

「小さな子特有の淋しさ」。それは、「お遊戯室の端で壁にもたれて、みんながはしゃぎまわるのを黙って見ている子のような」、「かまって欲しいのに、かまってと言う相手も見つけられない。ただあきらめて立っているだけの・・・・・・」。

そして、その淋しさに隷属という形で甘んじている聡に夕陽が静かに放つ問い。
それに直面し、混乱するままに夕陽を攻める聡は、けれどある日雪枝の家から姿を消す・・・。
そして始まる、雪枝の語る雪枝の物語を(迷いながらでも)聴いた夕陽は・・・。そして聡は・・・。

自分を自分たらしめてくれるもの、それを求め続けること、利得があるようでいてしている依存に見ないふり、あまりにもちがう世界に踏み込むとまどい、関わっていいのかという迷い。

ある意味人の醜さが詰まってて、同時に人の折れなさがどこかにころんと転がったまま。

ひとつひとつ綺麗でないパーツがけれど重なり重なり、最後にはひとつの像を結びだす。
その像がどうみえるのか、それは読んでいるひとそれぞれなのでしょうね。(豊島さんのあとがきから察するに、そんなに評判は良くなかったようですが・・・)

大げさといえば大げさですが、少なくとも雪枝、聡、そして夕陽のこれからに続くこのひと時に立ち会えたという気がして、さわやかには程遠いですが、不恰好でもしっかりと力のこもった物語という感じです。

たとえ話ですが、沈んでるときにはお邪魔にならないけど劇薬にもなりえるような、豊島さんらしいというか、じつはむき出しの物語です。

豊島ミホ 『陽の子雨の子』 幻冬舎文庫
スポンサーサイト
コンテントヘッダー

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

フリーエリア
フリーエリア
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。