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永嶋恵美 『転落』

転落 (講談社文庫)転落 (講談社文庫)
(2009/04/15)
永嶋 恵美

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正気ならばわかるはずだ。私に匿われるということが最終的に何を意味するか。

あえなく逃亡者、そしてホームレスになってしまい飢えた「僕」は、小学生の麻由から弁当を渡される。真意をはかりかねたまま「僕」は麻由から食料を受け取るものの、麻由はその交換条件として、自分の忌み嫌う同級生たちへの狡猾な「犯行」の実行を課すようになる。
ある理由から、食料のため、そしてそれ以上に麻由のために犯行に加担する「僕」。
しかし次第に麻由はこの「犯行」に飽きはじめ、「僕」を疎んじるようになり、とうとう「僕」を用無しとみなし、ある行動に出る。
結果居場所を完全になくした「僕」は、当人すらも「僕」を殺さないわけにはいかないであろう、ある人物のもとに身を寄せることにしたのだが・・・。

「逃亡者」であり、ホームレスである「僕」が、小学生の麻由に「れーちゃん」と呼ばれ、半ば残飯をちらつかされて使役され、犯行を重ねる導入部まではすらすら、そして先行きの見えない話に引き込まれて読めました。

そのうえで、匿われた「僕」の視点から匿う「私」に焦点は移るのですが、ここからがちょっと・・・。
内容、ちょっと続けます。

私も同罪だ、と思う。

なぜ「私」が「僕」を匿うのか?「私」の罪とは何か?「私」はいつまで「僕」を匿えるのか?
さまざまな疑問を抱えたまま、物語りは絶えず進行し、やがて酸欠のように行き詰っていく。

人間一人を隠匿するのがこれほどの困難を伴うものだったとは。死体を隠すよりは臭気がないだけ楽だろうと思っていたが、とんでもない計算違いだ。
しかし、もう引き返せないところまで来てしまった。


引き返せないままに続く息の詰まる「私」と「僕」の生活は、徐々に転落の一途をたどる。
転落してゆく先に「私」が見た、見せかけの善意に彩られた、嫉妬、悪意、打算、執念、保身、偽り。
止められない「転落」の行く末に、「私」がとった手段は・・・。

徐々に明らかになるのですが、大きなテーマがいくつかあり、そのどれもが、現実の人間の、まさに善意や正義にひた隠しにされた暗部に虐げられ、声すらもあげられない人々の「転落」を象徴するものであるように思いました。そういう意味で、度肝を抜かれる、というより、薄気味悪さと、それがいつ自分に降りかかるかというそら寒さを感じさせ、自分がそれらにあまりに無防備だということを思い知らされる心地でした。

ただ、物語としてやや消化不良だったり、意図がなかなか見えにくいようなところがいくつかあって、それこそ無防備に引き込まれて叩きのめされながら読めるのだけれど、読み終わると物語、ストーリー全体としての印象はぼやけていて(特にラストシーン。「殺人鬼フジコの衝動」を読んだときもなんとなく似たような心持がしましたが、それはこちらの読解力の問題もあるという感じでした)、味わった感覚だけが生々しく残っているばかり、という感じ。

「そうだわ。いい考えがある」

反面、この一言をかわしきる「正気」が、はたして自分にどれほどあるのだろうというこころもとなさを、いつもより多く味わう羽目になったことだけ確実でした。

永嶋恵美 『転落』 講談社文庫
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小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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