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奥田英朗 『空中ブランコ』

空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)
(2008/01/10)
奥田 英朗

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ひとつ深呼吸し、ドアをノックした。すると中から「いらっしゃーい」という場違いに明るい声が聞こえた。そこには白衣を着た太った男がいて、一人がけのソファに胡座をかいていた。(「空中サーカス」)

とんでも名医?それともただの変態ヤブ医者? 超ヘンテコ精神科医、伊良部一郎シリーズ第2段にして、第131回直木賞受賞作。5話収録。

伊良部節炸裂! 今回もさんざん笑わせていただきました。(^^)v
まずは手短に、各話のあらすじ紹介。

空中ブランコ・・・
「まだまだ自分は演劇部のエースだ。 この座を人に譲ることはできない」。
けれど突然成功できなくなってしまった、サーカスの空中ブランコ乗り、公平。
これは自分のせいじゃない、周囲のせいか、完全な嫌がらせだと公平は警戒するが・・・。

ハリネズミ・・・
紀尾井一家の若頭、猪野誠司は先端恐怖症。
公園のイラン人を買収してまで強引に注射を打つ伊良部の荒治療(趣味?)の効果か徐々に先端への恐怖が和らいでいく。そんな中、猪野、伊良部に最大の危機が!

義父のヅラ・・・
「実は最近、自分が何か派手なことを仕出かしてしまうんじゃないかと、ひやひやしているわけよ」
大学講師の野村達郎の悩み。それは、「どう見てもヅラとわかる義父(学部長)のヅラを皆の前ではいでみたい」という、バカバカしいけど強迫的な衝動。
藁にもすがる思いで相談に訪れたかつての学友(?)伊良部からの提案は、どれもこれも究極的に最低なものばかり、だったけれど・・・。

ホットコーナー・・・
突如送球のコントロールが利かなくなってしまった板東新一。このままでは開幕、エースの座、ともに絶望的。だめもとで伊良部のもとを訪れた板東。けれど治療してもらえるかと思えばキャッチボールの講師を頼まれるわ、あげくどう見てもおもしろがっているだけの伊良部のせいで、症状は次々と悪化していく一方。
けれどその瞬間は、ある日突然にやってきて・・・。

女流作家・・・
「まったく調子が狂う。こんな人間、初めてだ」
売れっ子女流作家の牛山(星山)は、ある症状に悩まされていた。
小説を書いていると過去にどこかで使用した設定になってないかと不安でたまらなくなる。何度確認しても気が済まない、あげく嘔吐してしまう。
相談先の伊良部は治療どころか「ぼくも本を出す(もちろん印税目当て)」と抜かす始末でまったくたよりにならない。そんな売れっ子作家の牛山が知った、創作者の残酷な現実。
おなじみ、くわえたばこの美人(変人?)看護婦、マユミさんの最後の言葉に、私は牛山さんでも何でもないのに感激してしまう始末。これって最高のラストだって思った。

人の話も聞かず、治療そっちのけで(そもそも治療する気がない?)、いつのまにか空中サーカスデビューしたり極道界に乗り込んだりと、伊良部先生の相変わらずなめちゃくちゃぶりが炸裂。
バカバカしくておもしろい。けれどどっかでめちゃくちゃ切なくなったりもするから不思議。

けっきょく伊良部先生はヤブ(しかもマザコン、注射フェチの3重苦)なのかとんでもない天才(?)名医なのか、今回もさっぱりわからないまま。

けどたまには伊良部総合病院の地下室で注射打たれるのも良いかもしんない。
なんて思った。

奥田英朗 『空中ブランコ』 文春文庫
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空中ブランコ 奥田英朗

伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、 尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。 ...
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小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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