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山崎マキコ 『ためらいもイエス』

ためらいもイエス (文春文庫 や 40-1)ためらいもイエス (文春文庫 や 40-1)
(2007/12/06)
山崎 マキコ

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昨日までは徹底無視の気持ちで固まっていた。けれど今日は揺れている。ウナギのおかげで揺れている。わたしの人生、このまんまでいいんだろうか。

(体力をつけんといかん!ウナギでカツ!)と一ヶ月うな重ばかり食べてバリバリ仕事をし、あげく(当然ながら)栄養失調でぶっ倒れ、運ばれた病院で母親に押しつけられた見合いを思い出す三田村奈津美。

そんな奈津美はもうすぐ29歳。そしてバージン。男性とは仕事上のビジネスライクな付き合いしかせず、深い付き合いは後輩のスポーツ系女子、青ちゃんとだけ。
奈津美はそんな日常を、ひどく気に入っていたはずだったのだけれど。

そんな奈津美と、とある3人の男性の距離が、なぜだか急に縮まってしまう。

半ばやけで出席した見合いの席に現れた、意味深で謎めいていて、けれど顔はギンポ(天ぷらだねによくつかわれる魚)によく似たギンポ君(本名は神保)。
いつも黙々とした、どこか影のあるキレ者社員、中野さん。
そしてとにかく元気で、子供のように健やかで元気なスポーツマン、桑田さん。

はたして奈津美は、棒に振った思春期を取りもどせるのか!?

山崎マキコさんの作品はこれで3冊目。
前作「マリモ」や「スナフキン」は、「たはは」と腹を抱えて笑えるおかしな軽さと、「私はどこに行けばいぃ?何をすればいい?」という、(たぶんたいていのひとが抱えてる)祈りにも似た問いかけがまざっておりなされた、本当に素敵な物語。
『ためらいもイエス』はどちらかといえばラブコメの要素がやや強めの物語ですが、今回もそれはやっぱり物語に息づいている。
それはつまり、これ以上にないくらいのおかしさと切なさが、いっしょに詰まっているということ。

元気な後輩、青ちゃんとのやりとりなんか、毎度サイコ―に笑えるし、青ちゃんの奈津美を想う気持ちは本物で(ときどき多少強引だけど)、そんなところも読んでてうれしくなる。その一方。

支配欲の強く自分はすべて正しいと信じて疑わない母親に、傷つけられた奈津美自身、そして姉、妹の、胸が苦しくなるような今だとか。
思いもかけずに、心から楽しんでいたつもりでじつは他人を傷つけていた自分に気づく瞬間とか。
いっそ自分のシアワセは叶わずともあなたには幸せになってほしいと願う。けれどその願いすら届かないと思い知らされる瞬間とか。

奈津美のことなのに、こっちまで胸が痛くなる。

「わたしはね、そのときに何かわかりかけた気がした。でもそれがなんなのか、まだ把握できずにいる」
するとギンポ君は、かるく微笑んだ。
「姫はね、本当の悲しみを知らない」
「悲しみ? 知ってるよ。子どものころから、うんざりするくらい」
「うん、でもね、本当の悲しみは、まだ知らない」


悲しみというもの自体ひどく個人的なもので、そのうえ「本当の悲しみ」なんて、こんなふうに部分的な文章だけ抜き出してもそんなのは伝えきれるものでないと思うのですが、あえて引用。

少なくとも奈津美にとっての「本当の悲しみ」は訪れて。
それでも前を向いて歩いてゆく力を、この物語は貸してくれると思う。
ラストに待つ、これ以上にないハッピーエンドで。
(あとは物語のところどころでギンポ君が奈津美にくれる、難解だけれど心のこもった言葉の数々を、読後何度も思い返して噛みしめたり)

ホントにおかしくて切なくて、こんな言葉じゃ言えないくらい、私にとって素敵な本。

すごくオススメです!

山崎マキコ 『ためらいもイエス』 文春文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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