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朱川湊人  『都市伝説セピア』

都市伝説セピア (文春文庫)都市伝説セピア (文春文庫)
(2006/04)
朱川 湊人

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「だけど誰もが、ときどき無性に、おばさんの絵が見たくなる。見たくて見たくてたまらなくなる。だから誰もいない真夜中に、こっそり取り出して眺めるのさ」 (「死者恋」より)

正直、気になってはいたけれどあまり期待はせずに読み始めた本。
だけど読み始めたらとまらなかった。ほとんど一気読み。
人間はこんなにも不気味で怖くて。そして哀しい生き物。
5話収録。

アイスマン・・・
二十五年前の夏。精神の安定を欠いて田舎に預けられた「私」。見せ物小屋の前で出会った女の子は、「河童の氷漬け」を見せてくれるという。
案内された場所で「私」が見たのは、醜く太った大男と、数々の奇形写真。そして氷の中に横たわるのは、たしかに「河童」のようだった。
帰りがけ、「またおいで」と男は言った。やがて生まれたおぞましい疑念を振り払うため、「私」は再びその場所を訪れたのだけれど・・・・・・。

物語終盤と、さらにラストシーンで待ち受ける驚きと結末。不気味で、けれど奇妙なうつくしさを感じさせるこの結末が、はたしてハッピーエンドなのかどうか。

昨日公園・・・
それはもう遠い昔の、けれどけして忘れることなどできない記憶。
あのころ少年だった遠藤は、悪友マチを突然の事故で失った。そう、確かに一度、失ったはずだった。
ふたりで遊んだ公園から、繰り返される救いのない土曜日。
5度目の土曜日に、遠藤がくだした決断は・・・・・・。

救いようのない残酷な運命から、何をしてでもマチを救おうとする遠藤。けれどけして報われない。繰り返す土曜日は、まるで無限地獄のよう。「オレンジの種5つ」はすぐそばにあるのに、だれがどんなことをしても逃れられない。

フクロウ男・・・
仲間を探し、仲間以外に出会った人は殺す、戦慄の怪人「フクロウ男」。
送られてきた手紙は、架空の怪人に取り憑かれ、いつしか本物以上に「狂気の怪人フクロウ男」となった、ひとりの男からのものだった。

どこか遠くの物語のように語られる所業は、まさに狂気の沙汰。
架空の怪人を作り上げ、連続殺人にまで手を染めた「フクロウ男」が、「正義感の強い君」にすべてを記した手紙を送った理由。私にはけして笑うことなんてできない。

死者恋・・・
およそ40年前。ひとりの女子中学生の人生を変えた、激しい恋。
けれど少女が恋した相手はもうこの世にはいない。その男性、「朔田公彦」は1冊の本を残して自ら命を絶ったという。
あのひとのすべてを理解しようと絵を描き始めた少女は、やがて公彦に恋するもうひとりの少女、しのぶと出会う。けれどそれは、彼女の想像をはるかに超えた禍々しい愛情で・・・・・・。

これは愛情なんかじゃない。究極的にだれかを所有したいという、人間のおぞましい願望の塊。たぶんだれもわからない。わからないでいてほしい。
ほんとうに最後の最後まで、このおぞましい愛情から逃げられない。

月の石・・・
大勢の乗客をはき出し飲み込み、通勤電車は走り出す。藤田は窓の外を見ずにいられない。線路ぎりぎりに建つ煉瓦色のマンションの窓。
きっと今日もあいつがいる。会社を去った本村が、窓から今日もこちらを見つめている。
窓から見える人影は、いつしか孤独死した母親のそれになり、毎朝藤田を苦しめる。
意を決してそのマンションを訪れた藤田が知った真相は、常識では考えられないような奇怪なものだったのだけれど・・・・・・。

最後のテーマはどうやら「罪悪感」。(あくまで私見ですが)
「良心の呵責」なんて聞こえはいいけれど、藤田のようなひとは単に逃げられないんだと思う。
もちろん、だからこそ人間なんだけれど。

救いようのない物語たちの最後の最後で、ちょっと素敵な終わり方をする物語。

すごい作家さんだなって心底思う。
これってホラー小説かと思ってたけど、ちょっとちがう。
たぶんこれは人間の持ち合わせた、剥がせない裏面の物語。

私はこの本を進んで誰かに勧めるつもりはないし、それどころか読み返したくもない。けれど手放すことも、たぶんできそうにないなと思う。

朱川湊人  『都市伝説セピア 』 文春文庫
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プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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