投稿日:2008-05-01 Thu
![]() | 佐藤さん (講談社文庫 か 101-1) (2007/06) 片川 優子 商品詳細を見る |
「単刀直入に言うわ、佐伯君」
学校近くのマックで佐藤さんは言った。
「はい・・・・・・」
なぜだか佐藤さんから逆らえないような空気を感じて僕は思わずうなずいた。
「私に憑いてるモノ、見えるんでしょう?」
幽霊が見えてしまう気弱な高校生の「僕」と、幽霊に憑かれてしまいやすい同級生の「佐藤さん」。
当分関りたくない、できれば近づきたくもない。
そう思っていた「僕」だったけれど、思いもかけず佐藤さんのほうから声をかけられ、けっきょく佐藤さんの「除霊」を手伝うことに。
やさしく大人しいと思っていた佐藤さんが以外にしっかりしていて勝気な女の子だったことや、その佐藤さんとの距離が急に縮まったことに戸惑う「僕」。
さらにさらに、佐藤さんに憑依しているおしゃべり幽霊の安土良助さん、それに「僕」の友人の仕切り屋志村も加わって、幽霊中心の不思議でドタバタな毎日が始まる。
買ってからもう何回も読み返してる、すんごくお気に入りの物語。
幽霊を中心にして始まった、「僕」と佐藤さんの不思議な関係。
けれど中学生時代に傷ついた過去を持つ「僕」は、佐藤さんに対してもどこかで距離を置こうとしてしまう。
『佐伯といっしょにいると楽なんだよ。なんでもしてくれるから』
笑いながら言われたセリフ。曖昧に笑った自分。あんな思いをするぐらいなら。
自分の気持ちを素直に口に出して笑うこの少女を、傷つけるくらい、かまわない。
そのたんび、自己嫌悪に陥ってしまう「僕」。
中途半端に気弱で、中途半端にやさしいこころの持ち主なんだと思う。
自分を守ることでだれかを傷つけてしまうことがあると気付いた「僕」は、少しずつでも強くなろうと決意する。
もうひとつ。この物語は一見強くてしっかり者の佐藤さんと、気弱で自信のない「僕」の恋物語でもあるのだけれど。
とにかく「僕」の気弱さ加減に、あきれるのを通り越して笑ってしまう。
せっかく佐藤さんが「私が好きなのは佐伯くんだよ」って告げられても「佐藤さんが好きなのは僕自身じゃなくて、幽霊が見える僕なのではないか」とか何とか
「おい佐伯ぃ!!しっかりせーよ!!」って後ろから張り倒したくなるようにくよくよひとりで悩みこむ。
そのたび、安土さんやら志村やらにせっつかれて、「僕」は少しづつ佐藤さんへの気持ちに気付いていく。
そしてそんな気弱な「僕」は、佐藤さんの思いもかけない過去を知ることになる。
佐藤さんの思いもかけない過去を知って戸惑う「僕」。
戸惑いながらも何とか佐藤さんの力になりたいと思う「僕」に、おしゃべり幽霊の安土さんは言う。
《自分だってできてないのに、人になんか言えんのか?》
幽霊が見えるだけの、気弱な高校生でしかなかった「僕」が、佐藤さんのためにとった行動。
それはけして、だれにでもできることじゃない。
だれかを好きになり、そのだれかにこころから笑っていてほしいと願うこと。
ありきたりで単純で、けれどこれ以上にない素直で素敵な想いの強さを、思い知らされる。
スタバの前で転んで笑って、その側には大切なひとたちがいる。
だとしたら、それって最高のシアワセだなって心底思う。
ちなみに、この物語を書いたとき著者の片川優子さんは中学三年生だったとか。
そんな片川さんの2作目は、17歳のときに書かれた17歳の主人公の物語。
文庫化希望。そっちも今からすんごく楽しみです。
片川優子 『佐藤さん』 講談社文庫
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