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中島京子 『さようなら、コタツ』

さようなら、コタツ (集英社文庫 (な41-2))さようなら、コタツ (集英社文庫 (な41-2))
(2007/10)
中島 京子

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この短編集には、老人が暮らす部屋も、子どものいる家も、独身女性のマンションも、結婚間近の男が住むアパートも出てくる。
部屋の数だけ人生はある。(部屋のない人の人生というのもあるけれども)
だからこの短編集の裏タイトルは

へやのなか

である。
 (「へやのなか(短いまえがき)」より)

初めて読んだ中島京子さん作品。
「卓越したユーモアで描く傑作短編集」というのが売り文句なのだけれど、まさに傑作!
7つのちょっとおかしな部屋物語。まとめて楽しめて、読んでる間、ずっとすんごくいい時間だった。

ハッピー・アニバーサリー・・・
由香里と園子は、ふたりで手がけた仕事の一年目、アニバーサリーの夜を楽しくすごすはずだった。
けれど部屋に帰れば、母に鍵を持たされた、由香里の六十八歳の父、松田清造が、好物・大須磨の幕の内弁当片手にすっかりできあがっていて・・・・・・。
記念すべきアニバーサリーの夜を、なぜだか六十八歳の父親を間にすごすことになった、ヘンテコな夜の小話。

せっかくのふたりの記念日に乱入してきた、娘想いの父親。
迷惑だけど憎めない父・松田清造に、その松田清造の買ってきた、べつにどうってことない幕の内とか。なさけないような小品がかもす空気が、じんわりとおかしい。
なんだかなーとは思いながら、ほんとにおかしくて、ついつい笑ってしまった。ものすごく好きな空気。

さようなら、コタツ・・・
さようなら、コタツ。
十五年間使っていたコタツを捨てた、梨崎由起子。
あれがあった十五年間、部屋では何も起こらなかった。
けれど今日はちがう。なぜなら、今夜は十五年ぶりに、この部屋に男(恋人未満)が来るのだ!

ヤバイ。この話、私ものすごく好きだ。
甲斐甲斐しいというか変なところで必死というか、とにかく由起子はやってくる男(恋人未満)のために数々の料理を手作りし、はてや新品のベッドまで用意して待っているのに、肝心の男が来ない!
約束の時間はすぎている。暖めたラザニアだって冷めはじめている。
さあこれで、はたして男(恋人未満)はやってくるのか!?

けっきょくどーなるんだろ、って思ってたら、可もなく不可もなくの落ち着き方でなんかほっとした。
この落ち着き方。可もなくなんて書いたけど、読み返すとじつはすんごく絶妙。すげえな。

インタビュー・・・
高台にあるその家の持ち主は高岡恭平というイラストレーター。
そこを訪れたのは(たぶん中年の)カメラマンと、若い女の記者。
気乗りのしない高岡は好きにしてくれとふたりを放任するけれど、記者さんはそうもいかない。
次から次に矢継ぎ早に質問を重ね、仕方なく高岡はひとつひとつに答える。
けれどそのひとつひとつが、密かに高岡の痛みにも似た、とある記憶を思い出させてゆき・・・・・・。

矢継ぎ早インタビューからじわじわと浮かび上がる、ビターテイストの物語。
雰囲気察したら、早めにさっさと退くのが無難。
あんまりうるさいと、これはさすがにキツイかも。

陶器の靴の片割れ・・・
今日もまた夢を見て、夢の中には順子も、カラスのブルートもいた。
もうあれから何年もたっていて、彼女の後に付き合った女性も三人いて、三人目とはもうすぐ結婚までするというのに。

そうこうするうちに婚約者が出かけていって、そのときなぜだか順子さんから連絡が入る。
おまけに彼女が部屋に来るのだけれど、だからって別にどーということもなく。
ゆるゆる流れる、ほんのりした苦みの時間。
たとえばたとえば、なんてことばっかり。わかんないけど、そんなものなのかも。

ダイエット・クイーン・・・
取り残し決定の安アパートの鍋島郁美の部屋。
今日そこには同居人の泰司と隣人の母子と大勢のパキスタン人が詰め込まれてて、部屋からは強烈なカレーの匂いがただよっている。
不思議なご近所食事会。
話は長くなるけれど、説明しよう。どうしてこんなことになったのか。そしてなぜ、この食事会が不思議なのか。
笑えるんだけど、これって意外とシビアな話かもしんない。
ダイエットクイーンを目指す隣の女の子の、その理由。
シビアなんだろーけど、やっぱりヘンテコでおかしい。おかしいけどシビア。
最後まで、どっちつかずの不思議ワールド。

八十畳・・・
時刻は十一時少し過ぎ。部屋の中では大きな腹に巨大な図体をした男たちが、それぞれの場所で寝転がっている。
「戻らないっすね」「すかしたね」「あいつ何日いた?」「三日っす」
相撲部屋から抜け出した十五歳を待ちながら、五人の力士は思い思いに思い始める。
自分のこと、今までのこと、これからのこと。
あの小さな男の子は、どこにいったんだろう?

いなくなった弟子(候補)に思いを馳せながら、八十畳の部屋でつらつら思うそれぞれの時間。
元引きこもり力士、彼女つきのメガネ力士、名もない故郷の外人力士。
淡々として飄々として、つかめないけれどしんみり浸かってしまいたくなる時間があって、なんともいえない心地になる。
何よりも、ここにきて相撲部屋っていうセンスが、抜群に好きだったりする。

私は彼らのやさしい声を聞く・・・
十条のおじさんは、ときどき露子を死んだ大叔母の名前で呼ぶ。
それが記憶の混乱のせいなのか、はたまた単に若くして亡くなった大叔母の名前が呼びたいだけなのか、露子にも、妹・佳子にもぜんぜんわからない。
そういえば、むかしからおじさんはだれかと会話していることがあった。
あれはもしかして、死んだ大叔母、玉枝さんとの会話だったのか。

見様によっては気味の悪い話かもしんないけれど、ここにあるのはふんわりした肌ざわりをした、穏やかでやさしい時間。

「おじさんは惚けてないけど、きっとあたしたちには見えない誰かと話をしてるんだよね」
と、こともなげなセリフが最高に気に入ってしまった。

どっからかやさしい声が聞こえてきそうな、そんな話。

「部屋の数だけ人生はある」。
へやのなか。
7つの部屋に人一人の生きる時間がじんわり横たわっていて、一個一個の物語から、読んでるとじっくりそれを教えてくれる。
なんともいえない、落ち着くような、うれしいような、ほっとするような感覚。
・・・・・・こんな読後感、初めてかもしんない。

ちょっとクセになりそうな、不思議でおかしなクセ物本。オススメです。

中島京子 『さようなら、コタツ』 集英社文庫
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非公開コメント

こんにちは。
ふらりと来てみたら、なんだかステキな本が…
ちょいと私もこの不思議な部屋に立ち寄ってもいいですかね。
居心地が良さそうな雰囲気がするんです。

クリハラさんへ

クリハラさん、お久しぶりです!

ええもうこの部屋はどれもホント極上ですから、じゃんじゃん立ち寄ってみてください!
お察しのとおり、どれもホントに居心地いいですよ(^^)
「さようなら、コタツ」、「ダイエットクイーン」なんか、とくにオススメです。

ではでは、コメントありがとうございました!
またお立ち寄りくださいませ。
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

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