2008-06-19
![]() | ハーフ (ピュアフル文庫 く 1-1) (2008/03/10) 草野 たき 商品詳細を見る |
ぼくの母親の名前は、ヨウコという。
ぼくは小さいときから、ヨウコが母親だと教えられてきた。
ヨウコは、茶色い毛並みのきれいな、犬だった。
ありえねーよ!なんて斜に構えて読んでたら、いつのまにか涙目状態。
こんな物語久しぶり。不思議でやさしい、家族のお話。
父さんは四十六歳の、典型的なサラリーマン。
対するヨウコは、どこから見ても、茶色い毛並みの雑種のメス犬。
父さんが川原のダンボールに捨てられていたヨウコをナンパし、ヨウコも父さんを好きになってふたりは結婚。そして生まれたのが、ぼくだというのだ。
もちろん、ぼくはそれが普通のことじゃないってことにとっくに気づいている。
けれどじつは、この暮らしもぼくはけっこう好きだったりする。
父さんは父親としても主夫としてもパーフェクトだし、ヨウコは父さんもぼくも大好きでいてくれる。
朝は出勤前に父さんがヨウコを散歩に連れて行き、夕方はぼくがヨウコを散歩に連れて行く。
そしてヨウコと散歩に来た川原で、ぼくはホントのお母さんを内心こっそり探している。
会いたい人にはいつも会えなくて、会いたくないやつにばかりあってしまうのだけど。
平凡で、けれど不思議で穏やかな毎日。
もっとシアワセな暮らしがあってもかまわないし、期待もしているけれど、ぼくはこのくらしをとても気に入っている。
けれどそんな中、大事件が起こった。
ある朝、突然ヨウコがいなくなってしまったのだ!
読み始めは少しとまどっていたけど、そのうち慣れてきて、「あーこんな家族もあっていいかもねー」なんて、ほんわかしながら読んだ。
なんたって「父さんとぼくを心配した」おばさんのお小言訪問を除けば、それはそれは暖かい毎日。
父さんとぼくとヨウコ。
みんなみんなお互いが大好きで、父さんはヨウコを愛していて、そんな3にん家族で毎日暮らす。
からかわれることもあるけれど、それは小さくて、ちょっと不思議なシアワセ。
けれどそんな中、ある日突然ヨウコがいなくなってしまう。
すっかり弱々しくなった父さん。
そんな父さんに苛立ち、鋭い本音をぶつけてしまうぼくなのだけれど、そんなことをしてももちろんヨウコは戻ってこない。
そんな中、ぼくはひとつの決心をする。
いったい、家族って、なんだろう。 (金原瑞人・解説より)
ありえない、じつはとんでもなくきつい内容の物語なのだけれど、そこから考えさせられることはとてもとても多く大きく。
きれいできびしく、とびきりやさしい、とある3人家族の物語。
人を選びそうな本だけど、どうかいろんなひとに読んでほしいなと思う。
こんな素敵な家族、そんなにいやしないよって、
私はそう思うから。
草野たき 『ハーフ』 ピュアフル文庫


