コンテントヘッダー

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
コンテントヘッダー

ヤマシタトモコ 『ドントクライ、ガール』

ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)ドントクライ、ガール (ゼロコミックス)
(2010/07/09)
ヤマシタ トモコ

商品詳細を見る


ライフ・ゴーズ・オン。がんばります。

表題作、ドントクライ、ガールと読み切り、「3322」収録。
なんていうか、こんなに不意打ちでツボに入った体験は初めてです・・・。
なんだこの落差。。大馬鹿&シリアスの超二刀流。
勤務の前日に読み始めたのが運のつき。あまりにツボって読み返しすぎて、大幅に睡眠時間削られました。(4時起きなのに)

ドントクライ、ガール・・・
おバカな両親のせいで、その親の知人宅に居候するはめになった女子高生、たえ子。
居候を快諾し、出迎えてくれたのはイケメンで気のいい、だけど裸族の男・舛田。
舛田のハイパー天然裸族スタイル生活を前に、たえ子の17年間かけてつくりあげた価値観は玉砕しまくり。
それでも猛然と舛田スタイルにツッコミを入れまくるたえ子だったが、舛田の友人らしい友人・一見まともなパティシエの陣内(ただし、台詞にやたらモザイクがかかる)も参戦し、事態はますます混迷を極め・・・・・・。

究極のイケメン変態2人にキレのいいツッコミをぶちまけては玉砕する(2人ともものともしないため)たえ子を遠巻きに応援したくなること必至の超おバカ話。シリアスな話でもあるはずなんだけど、なんせ常に裸族の舛田がいるもんだから、どこがどうシリアスなのかわかんないという。。

おまえは本当に服を着ろ(中略) あとそっちのおまえは(中略) 何かの比喩表現のつもりか
あと本当に服を着ろ!!
ケンカのときはこっちこそ言いすぎてすいませんでした
今後ともよろしくですこん畜生!!


せめてパンツをはけ・・・


変態バカ2名に囲まれてとうとうプッツンしたたえ子の長い長いツッコミ爆弾も爆笑ものでしたが、さらにツッコミのしすぎで燃え尽き、オーバーヒートしたたえ子を涙ながらに抱きしめるために、脂汗流して服を着る舛田がもーツボでした。

涙ってどういうときに流れるものだっけ?
まあいいか。

がんばります。


終盤の(たぶん後ろに虚無が見える)たえ子の独白。
泣くに泣けないこの状況。あーもうがんばってください・・・(遠い目)としか言えない、これ。。
たえ子姐さん、お疲れ様です。

3322・・・

学校に行きたくないと言ったら、父親が困った顔で、「知り合いのところで暮らして」みることを提案してきた。
さぞやいやな熟女が出てくることだろうとうんざりしてた哉子(かなこ)の前に現れたのは、
「山中に隠居」している2人の若い女性、ドッグブリーダーの瑤子。会社を辞めて、瑤子をあてにして来た千代子。
「仲良いんだね」ふとそう言った哉子に千代子は言う。

・・・でも瑤子は人間よりも動物のほうが好きなんだから
・・・・・・ね


とっさに感じた感情にうまく名前をつけられない哉子。
そしてある出来事を境に、千代子は、そして瑤子も、哉子から離れていく。

どうして

どうして大人は秘密ばっかり


傷つけまいと秘密をつくるほど言葉がわからなくなり、いつか口にできない感じられない言葉は、絶えずこの身を蝕むように押さえつける。そんな中“秘密”に触れた哉子が、親元に戻る日がやってきた・・・。

残酷だなあと思った。けれどラスト、哉子はやっと自分の気持ちの名前を手に入れる。
気持ちを知ることは、秘密を知ることは、たぶんきっと、自分を知ること。

・・・それにしても、こんな毛色の正反対の2作を並べるってすごい度胸?だなーと思ったけど、ありだよなとも思います。

かたや変態2名、かたや触れられない奔放さ、厳しさをもつそれぞれの大人。
自分のペースでひたすらつきすすみ、自分の判断だけで隠し、ときに自分を傷つけて、そのうえそれ以上に他人を傷つけて見失ったりするけれど、ここにいる大人は、目の前で傷つくものを見捨てることはしないし、できない。

・・・やさしいのだろう、たぶん。

言い切れないけど、最後は、そんな気がしました。

特に舛田は、服さえ着れば・・・・・・。
(そんな舛田相手に、「イニシアチブとったどー」と内心つぶやけるまでになったたえ子姐さん、さすがでした。グッジョブすぎて、めちゃ笑いました)

ヤマシタトモコ 『ドントクライ、ガール』 リブレ出版 ゼロコミックス
コンテントヘッダー

永嶋恵美 『転落』

転落 (講談社文庫)転落 (講談社文庫)
(2009/04/15)
永嶋 恵美

商品詳細を見る


正気ならばわかるはずだ。私に匿われるということが最終的に何を意味するか。

あえなく逃亡者、そしてホームレスになってしまい飢えた「僕」は、小学生の麻由から弁当を渡される。真意をはかりかねたまま「僕」は麻由から食料を受け取るものの、麻由はその交換条件として、自分の忌み嫌う同級生たちへの狡猾な「犯行」の実行を課すようになる。
ある理由から、食料のため、そしてそれ以上に麻由のために犯行に加担する「僕」。
しかし次第に麻由はこの「犯行」に飽きはじめ、「僕」を疎んじるようになり、とうとう「僕」を用無しとみなし、ある行動に出る。
結果居場所を完全になくした「僕」は、当人すらも「僕」を殺さないわけにはいかないであろう、ある人物のもとに身を寄せることにしたのだが・・・。

「逃亡者」であり、ホームレスである「僕」が、小学生の麻由に「れーちゃん」と呼ばれ、半ば残飯をちらつかされて使役され、犯行を重ねる導入部まではすらすら、そして先行きの見えない話に引き込まれて読めました。

そのうえで、匿われた「僕」の視点から匿う「私」に焦点は移るのですが、ここからがちょっと・・・。
内容、ちょっと続けます。

私も同罪だ、と思う。

なぜ「私」が「僕」を匿うのか?「私」の罪とは何か?「私」はいつまで「僕」を匿えるのか?
さまざまな疑問を抱えたまま、物語りは絶えず進行し、やがて酸欠のように行き詰っていく。

人間一人を隠匿するのがこれほどの困難を伴うものだったとは。死体を隠すよりは臭気がないだけ楽だろうと思っていたが、とんでもない計算違いだ。
しかし、もう引き返せないところまで来てしまった。


引き返せないままに続く息の詰まる「私」と「僕」の生活は、徐々に転落の一途をたどる。
転落してゆく先に「私」が見た、見せかけの善意に彩られた、嫉妬、悪意、打算、執念、保身、偽り。
止められない「転落」の行く末に、「私」がとった手段は・・・。

徐々に明らかになるのですが、大きなテーマがいくつかあり、そのどれもが、現実の人間の、まさに善意や正義にひた隠しにされた暗部に虐げられ、声すらもあげられない人々の「転落」を象徴するものであるように思いました。そういう意味で、度肝を抜かれる、というより、薄気味悪さと、それがいつ自分に降りかかるかというそら寒さを感じさせ、自分がそれらにあまりに無防備だということを思い知らされる心地でした。

ただ、物語としてやや消化不良だったり、意図がなかなか見えにくいようなところがいくつかあって、それこそ無防備に引き込まれて叩きのめされながら読めるのだけれど、読み終わると物語、ストーリー全体としての印象はぼやけていて(特にラストシーン。「殺人鬼フジコの衝動」を読んだときもなんとなく似たような心持がしましたが、それはこちらの読解力の問題もあるという感じでした)、味わった感覚だけが生々しく残っているばかり、という感じ。

「そうだわ。いい考えがある」

反面、この一言をかわしきる「正気」が、はたして自分にどれほどあるのだろうというこころもとなさを、いつもより多く味わう羽目になったことだけ確実でした。

永嶋恵美 『転落』 講談社文庫
コンテントヘッダー

益田ミリ 『泣き虫チエ子さん(1)』(~続刊)

泣き虫チエ子さん 1 (愛蔵版コミックス)泣き虫チエ子さん 1 (愛蔵版コミックス)
(2011/12/20)
益田 ミリ

商品詳細を見る


「サクちゃんにとって幸せってなんだと思う?」
「キミがいて仕事があること」


最近マイブームな益田ミリさん本。
特にエッセイなんかは独特すぎて、その独特が好きなんですが、だれにでもすすめられるわけでもなく、正直わりと狭い範囲のひとにしかおすすめできないかもしれません。
その点、この漫画はすごくいい。これはぜひ読んで!と、押しつけて帰りたくなるくらいには(コラ)。

もうすぐ結婚11年の、泣き虫チエ子さんとおとぼけサクちゃん。
サクちゃんは家でくつの修理屋さんを、チエ子さんは会社で秘書をして働いている。
とても仲良しのふたりはたまにケンカもするけれど、お互いがいてくれることをとても大事にして暮らしている。
そんな毎日を、ご賞味あれ。

結婚生活もベテランなふたり。
ふたりで暮らしてきた11年に近い年月を経てきずかれた、ふたり用の過ごし方。これがすごくほんのりといい感じです。

たとえば、2人で行くスーパーで、カゴを押しながら「あっ 小松菜が安い」とか「油あげと炒めようよ」とか、「油あげ見に行く?」「うん」といった暮らし感満点の会話が好きです。
そしてチエ子さんは、この時間がとても好きなのだとか。それは、

チエ子さんは
サクちゃんがカートを押す
その後ろ姿が好きでした

カートのカゴの中には
ふたりの生活が入っています

大切なものを運んでいるって思うと
幸せな気持ちになるのでした


これ、すごくよくわかる気がします。
なんとなし、相方と会うと必ず途中でスーパー行ってしまうんですよね。なんかぽそぽそと心地いいから。

そういやむかしっからスーパー好きで、バイト先も小さいスーパーなのですが、始めたてのころ、カゴの中を流れる商品から、その家の生活って見えてくる気がして、すごく楽しかったのを覚えてます(5年たった今ではレジはスピード命&早打ちで非常勤のストレス解消、になってますが)。
そーいう感覚、相方といっしょにいるときに感じるのってのもまたいいもんじゃないですか。なんて。話逸れてんよツキミさん。

ただ、チエ子さんは泣き虫なんです。
どう泣き虫かというと、サクちゃんがいて幸せだから泣き虫なんです。

テレビをみて泣いて、本を読んで泣いて、サクちゃんがいないとだれが後ろのボタンをとめてくれるのかと思って泣いて、サクちゃんがひとりで老後をすごすことになったらご飯はどうするのかと泣いて、
ボロボロのサクちゃんの歯ブラシを見て、虫歯になって苦しむサクちゃんを想像して泣いて・・・。

泣きすぎだろっ!!とツッコミいれたくなりましたが、チエ子さんがこんなに泣くようになったのにも、それとなく理由というか、きっかけみたいなもの(かもしれないもの)もあったりして。

大人になったチエ子さんは
泣き虫になりました。

本を読んでシクシク泣いたって
テレビを見てうるっときて泣いたって

サクちゃんが当たり前みたいにしていてくれるからなのかもしれません


泣けない涙を流していたチエ子さんが泣き虫チエ子さんになれた。
サクちゃんの存在が、あーいいなあ・・・と思ってみたり。
(自分も不安定で、そういやうちの相方はそんときもいつもどーりだなー・・・なんて、思い返してみたり)

冒頭の2人の会話の続き。
サクちゃんの「幸せ」を聞いたチエ子さんの返答は、「へー」。
「へーってなんだよ」とサクちゃん。アハハハと笑うチエ子さん。

チエ子さんは胸がいっぱいになって
何も言えなかったのです

サクちゃんは幸せって何かを即答した

即答したのです

そしてその答えには美しさが宿っていました


ベタベタした装飾なんてない、ただありのままにかかれたこの場面が一番好きです。
心多くて泣き虫になりがちのチエ子さんと、そんなチエ子さんに「またか」となりつつ、いとしいサクちゃん。
下手な言葉も飾り付けも、もうなにもいらないでしょう。
それに、ただ、あったかいなあと思っただけなのに、このじんわり染みるあたたかさはいったいなんなのでしょう。

下手したら、こっちまでちがう泣き虫になりそうでした。
お気に入りをとおりこして、いっそ宝物にできそうなくらい好きな本でした。

益田ミリ 『泣き虫チエ子さん(1)』 集英社 愛蔵版コミックス
コンテントヘッダー

本上まなみ 『ほんじょの鉛筆日和。』

ほんじょの鉛筆日和。 (新潮文庫 (ほ-14-2))ほんじょの鉛筆日和。 (新潮文庫 (ほ-14-2))
(2006/06)
本上 まなみ

商品詳細を見る


朝目が覚めて、原稿用紙がぎっしり埋まっていたらどんなにいいかなあと思うけど、いつもまっ白のまんまです。やれやれ。
でも書いたものが「へもっ!」「おもしろっ!」って褒められるのはもう、ものすごく好きだから、また、机に向かうのだ。
 (スキスキ原稿用紙より)

鉛筆、ちゃぶ台、原稿用紙、骨抜き、トリガラ、サバ、寄生虫、巣鴨、てぬぐい、茶わん蒸し etc・・・。
女優、本上まなみさんが「へもい」もの(ちょっとダサい、イケてない、たよりない雰囲気をかもしだしている、でも愛らしくにくめない様子、という意味の言葉。例えば、「ジーンズ柄の紙袋」「舌をしまいわすれているネコ」等)をはじめ、身の回りのものごと、できごと、自分のこと、それぞれのことを、原稿用紙に鉛筆でこりこり書き溜めたエッセイ集。

さっそく脱線しますが。
仕事やバイトのせいもありますが、大勢のひとの声を一度に聞くとつかれるので、人の多いところには出かけないし、飲み会も基本パス(3人以上は無理。。全員参加のだけ行きます・・・)。食べ物系の番組でもないとあんまりテレビもみない(おためしかっ!と黄金伝説とバレーくらい。男子今日どうなるのやらイラン戦・・・)小津。だからテレビに映るひとも知らないひとが多いし、AKBのメンバーもほぼ知りません。。そんな小津が唯一好きな女性芸能人のひとりが、たまにバラエティとかで見かける本上まなみさん。(あとのひとりは鳥居みゆき。男性だと佐々木蔵之介くらい。素朴なのと、エキセントリック、両方好きです)

・・・で。その本上まなみさんを知るきっかけになったのがこの1冊。
大学のときになんとなしに買って、なんとなくまだ持ってて、たまにぱらぱらめくってます。

トリガラの相手したこと、ありますか?

という一言ではじまる「トリガラと戦う」。
トリガラの細かいぶぶんをゆるめの文章で、けれどしっかり描写して、おいしいスープにしていただいたり。

一匹200円で手に入れたサバをさばいていたら、赤い内臓に見慣れない模様を発見したり。

さあ、ここからあなたは、心して読まなければいけません。

と、ご丁寧な前置きがあるはずで、ここから続くはサバの内臓に棲みついた大量の寄生虫、アニサキス!
「<目黒寄生虫館>が大好きで、『おはよう寄生虫さん』という本も持っている」さすがの本上さんも、どしぇー!と大慌てで退散、居間に避難。されどその後「何もなかったかのように」テレビを見て、ミカンの皮をむいて食べ、20分後に台所へ。最後はこんがりサバを焼くと、いう不思議な根性が、おもいっきりツボにはまったり。

おかんに買ってもらった「へもい」ちゃぶ台や、使わなくなったけど捨てられない財布のこと、ぐだぐだの私服でスーパーに買い物に行ったらオシャレな有名人のひとに会って動揺したこと、等。
並べてみてもなんのへんてつもないこもごも。
それらをほんとうに大事にみているのが、伝わることの、ほっこりしたここちよさ。

その一方、「お味噌汁のシジミを全く食べない人」に出会うとさみしくなったり、「アスパラの穂先ばかり食べてる人」がいたら目に涙をためて抗議したり、「鍋物で、エノキや春菊をいつまでも煮ている人」、たいていお話に夢中なので、「君、現実を見たまえ」と忠告したくなったり、エビを尻尾の中まで食べないひとを、「そういう人とはあんまり仲良くなれそうにない」と書いてみたり。
ほんわかした視線は、こんなしっかりした心根あってこそ、という一面もかいまみれたり。
(たしかに食べ物に集中しないひとはあんまし好きになれないというのもわかる。けど、エビの尻尾??それはどーだろか、さんまの黒いとこを残すのはどーなんだろ、とか少し思ったり)

とはいえ、ときどき「?」を浮かべながらもさくさく読める。その理由はたぶん、

だけどこの『食材図鑑』は違うの。ニホンカボチャは≪薄味の煮汁でじっくり煮るとおいしい≫って、そりゃおいしいだろうね!っていちいち返事したくなるんだもん。 (魅惑の図鑑より)

とでもいうような、思わずこころのなかで「そうそう!」とか、「そーなの??」とか、甘くもなく辛くもなく、気軽くぼーっとこたえてしまう気落ちになることなのだと思います。

私は本を読むのが大好きです。本屋に行くのも楽しいけれど、もっと楽しいのは気に入ったものを買った後の帰り道。そわそわわくわく、幸せの重みに我慢できず、途中何度も袋から出して広げたくなる。車とか電車とか喫茶店とかで落ち着きたくなるんだよね。どうしても寄り道してしまうのであります。 

喫茶店にはひとりで入れませんが(←こわがり)、仕事のついで、いつもいかないようなところの本屋に行ったときは、帰りわざーと各駅停車に乗ってかえったりしてしまう(座席なかったら降りて快速待ってます。意味なし・・・)小津は、ここぞとばかりうなづいてみたり。そんなひとときが、小さくてもわりと愉しいのでした。

本上まなみ 『ほんじょの鉛筆日和。』 新潮文庫
コンテントヘッダー

風野潮 『森へようこそ』

森へようこそ (ピュアフル文庫)森へようこそ (ピュアフル文庫)
(2006/11)
風野 潮

商品詳細を見る


黙って聞いてるうちに、開いた口がふさがらなくなってきた。
うそ、植物に話しかけろってマジで言ってんの、この子?


何の相談もなしに半ば突然海外勤務を選んだ母と別れ、両親の離婚後、一度もあっていなかった樹木医の父と、双子の弟・瑞穂と暮らすことになった美森。
大阪郊外の「紅葉谷」と呼ばれる森の洋館での暮らしに都会育ちの美森はなじめず、おまけに色白でひ弱という自分と正反対、まるで女の子のような弟、瑞穂がどうにも気に入らない。
おまけに瑞穂は、「植物の声が聞こえる」という不思議な少年で、学校での「いじめ」を機に不登校になり、今は家で数多くの植物の声を聴き、弱った植物の世話をしている。
そんな瑞穂に美森は「バッカじゃないの」くってかかるものの、植物をまっすぐに愛し、植物の痛みをときに自らも味わうなど、植物と否応なく全身で生きる宿命をもった瑞穂の姿をそばでみるうちに・・・・・・。

涼やかな表紙に魅かれてブックオフで買い。
草木のみどりをじっと眺めてるとなんとなく目がすっきりするんですが、まさにそんな爽やかなすっきりさをもたらしてくれた、児童文学!ピュアフル!いいなあとあらためて思いました。
さて本編。

「植物の声が聞こえる」
そんな弟や、樹木医という父親、自分の意見も聞かず自分を置いて海外へ飛んだ母。そんなすべてを同一に並べ、どうしても頑なになる美森。
けれどその美森、転校先の学校で登校初日、瑞穂を「めちゃくちゃいじめて泣かした」こわもて男子・葉山を思わず一発KOしてしまったり、どんなに気に入らなくても弟を想う気持ちを持った女の子。
しかもその葉山も、ただ瑞穂をおもしろがっていじめたわけでもない。

「小川が悪いんとちゃう、おれが悪かったんや。おれが芦原のこといじめたって言うたから、こいつ、カッとしてつい手ぇ出してしもたんや。女にブッ飛ばされたのは悔しいけど、殴られても仕方ないと思う。おれかて、妹をいじめた奴が目の前におったら、速攻ブッ飛ばすと思うから」

これがきっかけとなりちょっとした友情?(というより戦友意識)が生まれる美森と葉山。
いっぽうの瑞穂も、学校には行けないものの、家で毎日たくさんの植物を、父親にも劣らない植物への真摯な思いをもって治療し、学校の傷ついた植物に対する治療法も提案する仕事ぶり。

最近では、まるでひとりごと言ってひとり笑いしてるような瑞穂と木の会話にも、気持ち悪がらずにつきあえるようになった、瑞穂が木から聞いたとおりに手当てして、たちまち具合が良くなるところを何度も見たからだろう。

よかったじゃんか、とこちらが思うも束の間。
けれどその一方、瑞穂の力には、それがために瑞穂本人を苦しめる性質ももつ。
美森も読み手もその苦しさ、瑞穂が抱えるもうひとつの苦しさを、まだ知らなかった。

そんな中、ある事件が起き、瑞穂は「声を聴く」力のために、苦しみまわることに。さらに、その事件を機に葉山の学校での立場が暗転し、学校にいる美森には、瑞穂をほんとうに追い込んだ「みんな」、そして物事を丸く収めることばかりに心を砕く「やさしい先生」の姿が見えてくる。

「あんたって、ほんとサイテー!」

激怒する美森。その一方で。

「でも、今サイテーなんやったら、これ以上サイテーになられへんから、ええんちゃうかなぁ」

と瑞穂。自分を守ってくれる姉、認めてくれる友達、そして将来父のような樹木医になるために、乗り越えた試練。ひ弱におどおどしていた瑞穂が、いつのまにか「どんだけポジティブ押し付けのこんこんちきでも言わないぞ!?」とつっこみたくなるような、おとぼけフォロー(でもおどおどした瑞穂にはけしてできないおとぼけフォロー)ができるようになってたり。

ラストは、すべて円満というわけでもなく、でもそこかしこで成長した、あるいは成長途中の、そしてけっきょく何も変わらないままの子どもたち、大人たち、そして美森、瑞穂を、森が丸ごとつつむような、深くやさしい余韻を残して終わる一冊。

すべての木を助けてやれることもできないし、すべてのひとが良くも悪くもならないけれど、
美森、瑞穂でいえば森の中、自分を見守ってくれるなにかの存在を感じながらなら、
そんななかでも少しくらい歩けることもあるよねきっとと、そんな想いで本を閉じました。

風野潮 『森へようこそ』 ピュアフル文庫
プロフィール

小津りゆ

Author:小津りゆ
3年ぶりぐらいですが、ログイン。夢だった資格をとってそれなりの仕事始まったはいいものの、現実にどっしん追突し、車体ボロボロ、エンジンぷすんぷすん状態です(なにそれ)。仕事の本ばっかりで、めっきり小説を読む時間が減。もしかしたら引っ越しして続編するかもです。

※since 2008.2.17

※オリジナル物語サイト、始めました。『ことあら』(リンク欄からどうぞ)

最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

フリーエリア
フリーエリア
ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。